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連載コラム

ようこそ!シアターの世界へ

第5回 歌舞伎

「らしさ」を追求した舞台芸能

歌舞伎の発祥は、江戸初期、出雲阿国(いずものおくに)による「かぶき踊り」だと言われています。派手な装いで街を闊歩した「かぶき者」の要素を取り入れた踊りが人気となりましたが、風紀が乱れるとして女性による上演が禁じられ、その後は現代にいたるまですべての役を男性が演じています。登場人物の特徴(年齢・職業・物語上の役割等)を衣装や小道具、動き等で強調し、「その役らしさ」を表現するのが歌舞伎の演出です。

歌舞伎座

歌舞伎座

「荒事(あらごと)」と「和事(わごと)」

歌舞伎では、顔に赤や青の線を描いて筋肉や血管を表す隈取(くまどり)が有名です。これは、「荒事」と呼ばれる豪快で荒々しい演技と共に生まれたもの。荒事では、ポーズを決めて静止する「見得(みえ)」や、手足を大きく動かして歩く「六方(ろっぽう)」等、独特の演出がなされます。一方、上方で誕生した「和事」は、哀れな境遇の主人公や、柔弱な色男の滑稽な様子を柔らかく表現するものです。

イラスト

進化する歌舞伎

長い歴史を持つ歌舞伎ですが、近代でも新たな作品が書かれています。明治時代以降、坪内逍遥(しょうよう)や谷崎潤一郎といった、歌舞伎専門でない作者が書いた演目を「新歌舞伎」と呼んでいます。近年は現代語のオリジナル脚本を採用した「スーパー歌舞伎」や、江戸時代の芝居小屋を再現した「平成中村座」のニューヨーク公演も成功。伝統にしばられず進化しています。

知ってる?鑑賞マナー

舞台を盛り上げる「大向こう」

役者が登場した時や重要なシーンで、客席から「成田屋!」 「音羽屋!」と威勢よく声をかける人がいます。これは「大向(おおむ)こう」と呼ばれる人たち。元々は芝居好きな商家の主人や旗本でしたが、現代では主に歌舞伎協会が認める会に所属する人が務めています。決まりはありませんが、女性が声をかけるのはご法度。男性の場合でも、物語や役者をよく理解し、タイミングを合わせる必要があります。初心者でも比較的声をかけやすいのは幕前、幕後のあいさつ「口上」のときです。好きな役者の屋号を呼んでみましょう。

参考:「歌舞伎を楽しむ本」(主婦と生活社)「歌舞伎にアクセス」(淡交社)