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連載コラム

ようこそ!シアターの世界へ

第6回 文楽

人形+浄瑠璃=文楽

文楽は、語り物音楽である「浄瑠璃」と人形遣いによる「人形」が出会って生まれた舞台芸術です。人形芝居は、平安時代から諸国を旅する傀儡師(くぐつまわし)によって演じられてきました。一方浄瑠璃の誕生は、室町時代中期だと考えられています。これらが江戸時代初期に結び付き、「人形浄瑠璃」として成立。主に大阪で発展し、植村文楽軒が開いた劇場「文楽座」から、「文楽」が人形浄瑠璃の代名詞となりました。

人形浄瑠璃文楽『祇園祭礼信仰記』(国立劇場蔵)

人形浄瑠璃文楽『祇園祭礼信仰記』
(国立劇場蔵)

三人で一体を操る人形遣い

文楽の人形は「三人遣い」。人形の「かしら」(頭の部分)と右手を操る主遣(おもづか)いに合わせて、左手を扱う左遣い、両足を担当する足遣いが動き、複雑な動作も滑らかにこなします。修業は大変厳しく、「足10年、左10年」と言われるほど。かしらはその人物の立場や性格に合わせて選ばれます。歩き方やしぐさひとつにも心がこめられ、その表情は人間さながら。熟練の人形遣いが操る人形は、時に人間よりも人間らしいと言われるほどです。

イラスト

代表的な人形の「かしら」

登場人物の「心」を語る浄瑠璃

物語は、舞台の向かって右手の「床(ゆか)」に座る太夫(たゆう)の語りと三味線の演奏によって展開します。太夫は老若男女の役を一人で演じ分け、人物の心情や情景も表現します。隣に座る三味線弾きは、低音の三味線で時に賑やかに、時に物悲しく、舞台に広がる情感を演出します。奥深い文楽の世界は、太夫、三味線、人形の「三業(さんぎょう)」が息をぴったりと合わせることで描き出されるのです。

知ってる?鑑賞マナー

「語り」が聞き取れなくても大丈夫?

浄瑠璃全盛の頃、竹本義太夫(ぎだゆう)が各流派の長所を取り入れて「義太夫節」を創作しました。これが人気となったことから、浄瑠璃は「義太夫」とも呼ばれます。独特の抑揚がついているため慣れないと聞き取りにくいこともありますが、東京で定期公演を行う国立劇場等では、プログラムを買うとついてくる床本(ゆかほん)集(台本)や、舞台の左右に表示される字幕があるので、語りを文字で追うことができます。史実を題材にしたものや人物関係が複雑な作品も多いので、鑑賞前に大筋の流れを掴んでおくとよいでしょう。

参考:「ニッポンの伝統芸能」(枻出版社)「桐竹勘十郎と文楽を観よう」(岩崎書店)