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人形遣い 桐竹 勘十郎(きりたけ かんじゅうろう)さん

人形遣いは役者であり、技術者

三人で操っているとは思えないくらい、滑らかで自然な動きをする文楽人形。その裏にはどんな苦労や思いがあるのでしょうか。文楽の世界に入って40年、人形遣いの桐竹勘十郎さんにお話を伺いました。

――三人で息を合わせるための稽古はどのようにされているのでしょうか。

三人での稽古というのはあんまりやらないんです。舞台で失敗を積み重ねて、体で覚えていく。失敗だけで本ができるくらいですよ(笑)入門当初は動かない足遣いから。これがしんどい。じっとしているつもりでも、どこか動いてるんですね、コソコソっと。主遣いの腰に足遣いの腕が当たっていますから、動くとすぐに分かる。すると「じっとしてろ」って怒られる。

足遣いの修行はしんどいばかりなんですが、直接人形の下半身を持っているので吸収できることも多い。主遣いの腰の動きで「あ、次はこれだな」というのも分かります。不思議なもので、足遣いをしっかり勉強しておくと、主遣いになったときに、稽古もしていないのになぜか動けるようになるんです。

――勘十郎さんにとって、人形はどんな存在なのでしょうか。

分身…というか「この役を僕がやるんだ」と、人形の中に自分を入れてもらう、そういうものです。役になりきって、自分の体で、顔で、役者さんみたいに表現しているつもりになる。といって、全部役になり切ってしまうのではなく、ちょっと冷めて、引いて見る部分も残しておかないと駄目なのかな、と。難しいのは、人形遣いはその役を演ずる役者であり、人形を操る技術者でもあるということ。技術が未熟だと、いくら気持ちがあっても伝えることができない。逆に、技術があっても気持ちが弱いとやはりその役にならない。技術者と役者が同じレベルでないと、なかなか人形は遣えないと思いますね。

――「三業」の中での人形遣いの役割についてはどのように感じていらっしゃいますか。

人形遣いの役割…難しいですね。浄瑠璃は人形がなくても立派な芸能、やはり肝心なのは義太夫節なんです。人形はどんな音にも合わせられます。僕もチェロや洋楽など、いろいろな音と合わせました。でも、やればやるほど「浄瑠璃はよくできている」と感じます。三人遣いの人形の魅力を100%、120%引き出してくれるのは義太夫節しかないですね。

「三業が一体になる日」というのは少ないです。そういうときは鳥肌が立ちます。欲も得もなくなるというか、ものすごく気持ちのいい瞬間。その瞬間を追い求めて、毎日汗をかいて、一所懸命やってるんでしょうね。

連載コラムにて「伝統芸能の今を知る 文楽」掲載中です。こちらも合わせてお楽しみください!

桐竹 勘十郎さん 写真

■プロフィール
昭和28年大阪市生まれ。1967年(昭和42年)に文楽協会人形部研究生となる。三世吉田簑助に師事。父は人間国宝の人形遣い・二世桐竹勘十郎。2003年(平成15年)に、三世桐竹勘十郎を襲名。師匠から学んだ女形に加え、父から学んだ立役(男役)もこなす。国内外の公演で重要な役割を担い、古典だけでなく、新作にも取り組んでいる。

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