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歌舞伎役者 七代目 中村 芝雀(なかむら しばじゃく)さん

大衆の中から生まれた「歌舞伎」を楽しんでいただきたい

今年10月、歌舞伎・文楽をはじめ、昭和の演劇界に大きな足跡を残した劇作家・北條秀司(ほうじょうひでじ)作の歌舞伎『大老』が国立劇場にて上演されます。井伊直弼(いいなおすけ)の正室・昌子の方を演じられる中村芝雀さんにお話を伺いました。

――38年ぶりの上演とお聞きしましたが。

昭和45年に国立劇場で上演された『大老』は5時間におよぶ史劇でした。作・演出をされた北條秀司先生は非常に厳しい舞台稽古をされたそうで、井伊直弼を演じた私の伯父・松本白鸚(まつもとはくおう)が、駕籠(かご)に乗ったまま2時間も待たされ、怒ってしまったなんてエピソードも残っているんですよ。

北條先生はまた、井伊直弼が暗殺される直前の出来事を描いた『井伊大老』を書かれています。私も4年前、歌舞伎座で『井伊大老』の昌子の方を演じさせていただきました。

『井伊大老』は、いわば名場面を取りあげた二幕ものですが、今回の『大老』は全体を通しての通し狂言。幕府・朝廷・勤王の志士とさまざまな人物が登場するなか、主な女性は二人しか出てきません。この二人が井伊直弼という人間の内面に深くかかわってくるのですが、どんな舞台ができあがるのか、演じる私も楽しみにしております。

――芝雀さんご自身について教えてください。

生まれたときから歌舞伎の世界におり、父・中村雀右衛門(なかむらじゃくえもん)は女形でございましたので、私の中では「歌舞伎役者になる=女形」というところがありました。6歳で初舞台を踏み、音や芝居の間(ま)などは舞台に立ちながら、自然に身についてきたところがありますね。若い時はお姫様役を得意としていたのですが、近年、町娘や世話物の女房役など、さまざまな役ができるようになってまいりました。

最大の師匠は父、そして先人の女形の方々でしょうか。今年88歳になる父・雀右衛門が初めて女形を志したとき、七世松本幸四郎に「女形がものになるのは60歳過ぎ」と言われたそうです。お姫様役でも町娘でも、舞台に出たときに何もしなくてもその役に見えるのが女形としての究極の表現なんですね。そこにたどりつくまで、技術なり風情なり、一つ一つを積み重ねていく必要があると思っています。

――歌舞伎のみかたについて教えてください。

歌舞伎は大衆の中から生まれた演劇です。登場人物の喜怒哀楽を肌で感じ取って、楽しんでいただきたいですね。気分が乗ってきたら途中で掛け声をかけてもいいし、拍手をしてもいい。舞台の役者とお客様がキャッチボールをするように、芝居をつくりあげていけたら最高ですね。

今回の『大老』は昭和の時代に書かれた作品なので、台詞(せりふ)も現代の言葉に近く、初めてご覧になる方にもわかりやすいと思います。

中村 芝雀さん 写真

■プロフィール
歌舞伎役者(屋号京屋)。昭和30年生まれ。四代目中村雀右衛門(人間国宝)の次男。昭和36年大谷広松を名乗り初舞台。昭和39年七代目中村芝雀を襲名。平成19年11月歌舞伎座における「傾城反魂香―吃又―(けいせいはんごんこう・どもまた)」でのおとく役が評価され、平成20年3月松尾芸能賞優秀賞、6月日本芸術院賞を受賞。

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