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ふれあいコラム
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2009年11月号 能を通して伝えたい伝統的な日本人の心/能楽師 山井 綱雄(やまい・つなお)さん

港区内でも、能の公演や教室、ワークショップを数多く開催。能の魅力を幅広く伝えている能楽師の山井綱雄さんにお話を伺いました。

――ギターやお芝居など他ジャンルとのコラボレーションが新鮮ですね。

もともと望んでコラボレーションをはじめたわけではないんです。僕の本分は能楽師。金春流の伝統を正しく受け継ぎ、それを次の世代に正しく伝承していく。長いチェーンの輪のひとつかもしれないですが、今、伝承している僕が、一生かけて能というものを極めたい。これは、小学校6年生のとき、祖父梅村平史朗の七回忌追善能で能楽師になろうと決めたときからずっと変わらず抱いている想いです。

ただ、世の中の大多数の方にとって、能は完全に「よそごと」なわけです。今でも忘れませんが、あるポスターに、能を観たことがある人の割合について書かれていまして。(内閣府の調査による)2.5%。ポスターの前で立ち尽くしてしまいましたね。

能という文化のために何かをしなければいけないという漠然とした思いを抱き始めたとき、ある方に「能の世界も、誰かが扉を開けないといけないんじゃないかなと思います。山井さん、私はそれをやるのはあなただと思いますよ」と言われました。そのときは「何でこんなことを言うんだろう」と思ったのですが(笑)。

そんなときに、ギタリストの方とコラボレーションするTV番組のオファーがきました。本当に悩みに悩みましたが、「世間の方が、少しでも能に興味を持つきっかけになれば」と思い、袋だたきにされるのを覚悟で引き受けたんです。これが意外に好評で。また、コラボレーションを通して手段の違う表現者と感覚を共有したことで、自分が当たり前にやってきた能楽が、立体的、多角的に見えました。広い視野を持ったうえで舞う、というのは一人の表現者として純粋に楽しいですね。

――はじめてでも能を楽しむには?

能は、敷居が高くて非常にとっつきにくいイメージがあると思います。様式美ですから、やはりある程度の予備知識が必要なんですね。事前にインターネットや本で、能のわかりやすい説明や、鑑賞する演目のあらすじにざっと目を通しておくだけでもかなり違うと思いますよ。また、初心者向けの講座などに参加していただけると、能がずっと身近なものになるかと。わかりやすい公演から入るというのも大事なポイントですね。

あとは、頭を真っ白にして能独特の時間空間にどっぷりと浸っていただく。心地よくて夢うつつになってもかまいません(笑)。

――Kissポート読者のみなさんにメッセージを。

今の日本は、物の豊かさに心の豊かさがどこかついていってない。そのアンバランスさを埋めていくというニーズが能にはあると思っています。能の鑑賞は、観ていただく方の人生観や歩みにリンクしてきます。たとえば、自分が親になったときに「この母親の気持ちはよくわかるな」というような。そうして能を通し、自分に向き合うと同時に、能が伝える伝統的な日本人の心というものを再認識していただきたいですね。

山井 綱雄さん 写真
■プロフィール
シテ方金春(こんぱる)流能楽師。故梅村平史朗の孫。金春流79世宗家・金春信高、80世宗家・金春安明に師事。5歳で初舞台。12歳で初シテ(主役)。以来、数々の秘曲を披き、全国各地の能公演・講座に出演。TV・ラジオ出演や他ジャンルとのコラボレーションなど多方面で活躍中。
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