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ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
吉川隆弘さん

クラシック・ピアニスト

吉川 隆弘 さん

週末に、仕事帰りに、気軽にクラシック音楽を楽しんでいただきたい

イタリア・ミラノを拠点に活躍中のクラシック・ピアニスト吉川隆弘さん。6月3日に、赤坂区民センターで開催されるリサイタルでは、どんなピアノ演奏を披露してくださるのでしょうか。リサイタルの楽しみ方やピアノについてお話を伺いました。

リサイタルでの聴きどころや選曲について教えてください。

クラシック初心者の方から精通された方まで、幅広い層を想定して曲を選びました。クラシック音楽になじみがない方も、聴いたことがあると思っていただけるような名曲もありますし、詳しい方も、興趣が尽きない選曲になっています。
前半はルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン、後半はフランツ・リストです。ベートーヴェンとリストは師匠と孫弟子の関係でした。演奏を通じて、ヨーロッパの音楽史の本流を感じていただけるのではないでしょうか。ベートーヴェンは感情表現が豊かな作品が多く、思いがダイレクトに伝わる作曲家です。一方リストはピアノを華やかな技巧で表現した作曲家で、その違いに着目して聴いていただいても面白いと思います。もちろん何の知識がなくても楽しめると思います。

演奏中にはどんなことを考えていらっしゃるのですか?

とても難しい質問ですね。音楽には、リズム、メロディ、ハーモニーという音楽の3要素と呼ばれるものがあります。その中で私が一番大切だと思っているのがリズムです。ハーモニーもリズムに沿っているし、リズムがなかったらメロディも成り立ちません。そのリズム感を大切にしながら演奏しています。

ピアニストになって良かったと思うのはどんなときでしょうか?

私は一日中、ピアノの練習をしていたいタイプです。8時間ぐらいは弾き続けますね。みなさんも8時間かそれ以上、お仕事をされていますよね。それと同じ感覚だと思います。技術的に難しいものを弾けるようになるという練習と、音楽的な表現を深めていく練習、両方必要なのですが、繰り返し過ぎると新鮮味のない演奏になってしまうので、毎回、分解して一から作り直すというイメージです。
時間や体験を皆さんと共有する源になるものが音で、その音を紡ぎ出すのがピアニストだと考えてみたら、とても贅沢な仕事ですよね。幸せだなと思います。

現在の活動について教えてください。活動しているうえで感じる日本との違いはありますか?

普段はソロでコンサートをする以外に、スカラ座首席クラリネット奏者のファブリツィオ・メローニと共演したり、CDを制作したりしています。オーケストラとのコンサートや室内楽等でも演奏しています。
日本とヨーロッパの違いは“自分を信じる気持ち”ですね。例えばクロード・アシル・ドビュッシーはフランスの作曲家です。日本では「日本人らしくないドビュッシー」という表現が誉め言葉として使われていますが、イタリアでは「イタリア人らしいドビュッシー」という表現が、自負心というような良い意味でとらえられます。自分の表現に自信があるというのかな。それが日本との差であると私は感じます。
クラシックを目指す方は海外に住んで、身をもって空気感を味わってほしい。音楽はリズムが特に重要です。外国語を話すというだけではなく、日常会話としてどのように使われているか、感情表現がどのようにされているか等、実際に生活してリズムを感じることができれば、それが表現としての深みになると思います。

今後の抱負をお聞かせください。

クラシック音楽を楽しむ人がもっと増えてほしいですね。週末や仕事帰りに、ちょっとおしゃれをして聴きに行くというようなものになったらいいなと思います。特に今回のリサイタルは、学生やシニアの方、港区在住の方、勤務している方等は特別価格になっていますので、気軽にお越しいただきたいですね。

プロフィール

吉川隆弘さん

吉川 隆弘(よしかわたかひろ)
クラシック・ピアニスト
1973年兵庫県西宮市生まれ。1999年東京藝術大学大学院修士課程修了後、渡伊。現在はミラノを拠点に、ヨーロッパ、日本においてソロ、室内楽で活躍。ミラノスカラ座管弦楽団等と共演、ドイツ・グラモフォン、自主レーベルのイプシロン・インターナショナル等からCDを発売。日本のメディアではNHK-BS「クラシック倶楽部」、NHK-FM「ベストオブクラシック」等に出演