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第4回 和朗フラット四号館

第4回 和朗フラット四号館

明治から昭和初期の戦前に建てられた「近代建築」をめぐるシリーズ。
日本の伝統的な工法や意匠、それを支える職人の技術と、西洋の建築様式・意匠・技術が融合していった時代の、魅力あふれる建物たちを訪ねます。

六本木にほど近い路地で出会ったモダンな白壁の洋館

和朗フラット四号館写真
【建物DATA】
和朗フラット四号館
竣工:1936年(昭和11年) 
設計:上田 文三郎
階数:2階建 
構造:木造アパート(全8世帯)

港区・麻布台の一角にある白い壁と爽やかな寒色系の窓枠が印象的な洋風の建物。これが「和朗(わろう)フラット四号館」です。
建物の名は「ここに縁ある人が和やかに朗らかに」過ごせるように、との願いを込めてつけられました。

和朗フラット四号館は、1936年(昭和11年)に建てられた洋館づくりの賃貸アパート。実は「和朗フラット」と名のつく建物は、全部で7棟あり、最初に建てられたのが現在の和朗フラット四号館です。
当時、配置上七番館の名称でしたが、東京大空襲などにより3棟が消失。残った4棟が一号館~四号館となりました。
この中で一般住宅のほか、カフェやギャラリーとしても開かれているのが四号館です。

設計したのは上田文三郎氏。1879年(明治12年)、京都市生まれの上田氏の職業は、なんと農業研究者。米の栽培や販売、農業政策を専門に朝鮮(現在の韓国)で働き、日本に帰ってきてからは米の専門家として経済誌に携わりました。
上田氏は特別に建築の勉強をしたわけではなく、和朗フラットはいわば素人が独学で建てたアパート。それゆえに既存のものにとらわれることなく、自由な発想の中でつくられているのです。

こだわりが随所に見られる緻密に計算された自由な建物

和朗フラット四号館写真

真っ白な漆喰の壁に映える青や水色、深い茶色のドアと窓。外観のモデルになったのは、上田氏がアメリカ旅行の際に西海岸で出合ったコロニアル式住宅といわれています。
しかし、上田氏が京都にいた頃、自宅前にあった立誠小学校(現在は廃校)のつくりに似ていることから、幼少期の記憶の再現もあるのではないかという説もあります。

玄関のドアの形はすべて異なり、窓はアーチ型と四角の細長型、隅切り型が混在していて、どこか外国の家を思わせる遊び心に満ちています。
各部屋には東向きの窓と小さな南向きの窓がありますが、採光を考慮し屋根や壁の角度などが計算されています。
屋根は緩やかな切妻屋根で、うろこのような丸い瓦が使われているのも見どころです。

玄関のドアを開けると、共有スペースへのドアとプライベートスペースへのドアのデザインが異なることに気付きます。
真ちゅう製のドアノブを開けて室内へ。濃いブラウンのフローリングと真っ白な壁のコントラストが美しく、ブルー系の窓枠が優しい印象を添え、どんなインテリアにしようかと考えるのも楽しくなってきます。
壁の漆喰は、入居者が変わるたびに真っ白に塗り替えられていて、そのたびに独特の味わいが加わります。

時代にあわせて変化しつつ歴史を人から人へとつないでいく

和朗フラット四号館では、入居者が不自由しないようにと、ミニキッチンやユニットバスを取り入れるなど、時代に合わせた補修を行っています。
また最近では、70年以上にわたって人々と関わってきたアパートとしての利点を活かしつつ、外へ開かれた場所として変わりつつあります。
1階には、ギャラリーや雑貨店、月末だけオープンするカフェなどがあり、近所の方をはじめ、遠方から訪れる方の姿も。そして昨年、新しい居住の試みとして、シェアハウスがスタートしました。

長く住む人も多く、空き部屋が出ると口コミですぐに埋まってしまうほど人気の高い物件です。
アパートとしてだけではなく、新しい形態を取り入れて進化していく和朗フラット四号館は、住人だけでなく関わった人すべてに愛される、和やかで朗らかな時間が流れる建物なのです。

45年前にタイムスリップ
和朗フラット四号館写真

1967年当時、和朗フラット四号館前の道幅は今よりも狭く、舗装されていませんでした。
古くから“スペイン村”と呼ばれた麻布台の路地の一角は、和朗フラット四号館をはじめ、よりすっきりとしたデザインの一号館・二号館とともにモダンな雰囲気を醸し出し、当時の人々の間では注目のスポットでした。
写真の山桜はすでに寿命を終え、現在はミモザに植え替えられています。
3月になると黄色の可愛らしい花を咲かせ、和朗フラット四号館に春を告げてくれます。


見どころをチェック

和朗フラット四号館 みどころ写真

切妻屋根には丸い瓦が敷き詰められています。
Photo山下 徹/和朗フラット四号館

和朗フラット四号館 みどころ写真

窓は一つひとつ異なる形をしています。

和朗フラット四号館 みどころ写真

京都の旧立誠小学校。ドアや窓のデザインが和朗フラット四号館とよく似ています。


和朗フラット四号館 みどころ写真

写真左:1階のカフェ部分。落ち着いた空間です。
写真右:2階の窓からの風景。

和朗フラット四号館 みどころ写真

写真左:外から見た窓。
写真右:室内から見た東向きと南向きの窓。

◆和朗フラット四号館

和朗フラット四号館地図

港区麻布台3-3-23
東京メトロ 六本木一丁目駅より徒歩8分、
六本木駅より徒歩10分
Email:info@warouflat.com
※ 店舗部分以外は一般住宅ですので建物内の見学はできません。

取材協力:和朗フラット四号館管理室  
参考文献:「天然生活vol.39」(株)地球丸発行、「東京人no.138」(財)東京都歴史文化財団発行
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