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レトロ・ニッポンに会える場所 港区近代建築めぐり

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第3回 大倉集古館陳列館

第2回 日本基督教団 高輪教会

明治から昭和初期の戦前に建てられた「近代建築」をめぐるシリーズ。
日本の伝統的な工法や意匠、それを支える職人の技術と、西洋の建築様式・意匠・技術が融合していった時代の、魅力あふれる建物たちを訪ねます。

大倉財閥の膨大なコレクションを保管・展示する日本初の私立美術館

大倉集古館陳列館写真
【建物DATA】
大倉集古館陳列館
竣工:1927年(昭和2年)
設計:伊東 忠太
建築面積:863m2
階数:2階建 
構造:鉄筋コンクリート造、銅板葺

虎ノ門にある老舗ホテル、ホテルオークラ東京本館に隣接する「大倉集古館」は、日本初の私立美術館。
2500点もの日本や東洋の古美術品や工芸品、約1000部の漢籍(かんせき)(中国古典籍)を所蔵しています。
この美術館は、明治・大正を代表する実業家、大倉喜八郎氏による私設。大倉氏は明治維新以来、日本の産業振興や貿易発展に力を尽くすとともに、慈善事業などにも多くの功績を残しました。
また、日本にあるさまざまな文化財が海外へ流出するのを危惧し、その保護や日本文化の向上に努め、生涯をかけて日本や東洋の古美術品を蒐集(しゅうしゅう)しました。

そうした美術品を保管、陳列するために、明治30年代に大倉邸の敷地内に建てられ1917年(大正6年)に財団法人となったのが大倉集古館です。
しかし、1923年(大正12年)、関東大震災により当時の建物と陳列されていた所蔵品は焼失してしまいます。

中国風建築にさまざまな文化を取り入れた伊東氏ならではの建築

大倉集古館陳列館写真

大倉集古館が再び開館したのは1928年(昭和3年)のこと。幸いにも倉庫に残され無事だった所蔵品のために、新たな美術館が建築されました。
設計を担当したのは築地本願寺や平安神宮を手がけた伊東忠太氏。明治から昭和にかけての名建築家で、日本のみならず世界を巡って建築や文化を調査し、そこから得た着想や意匠を自らの作品に取り入れました。

大倉集古館の設計に影響を与えたとされるのが中国建築です。そこに日本やインドなど各国の建築様式が取り入れられ、独自の中国風建築が完成しました。
石を積み上げた壁面や青緑の銅板葺屋根、効果的に使われた赤色の窓や扉は、中国文化の流れを感じさせるデザイン。また、和風建築に見られる崩し卍の窓、入口付近を囲む西洋風の石積みのアーチなど、伊東氏の感性が光ります。

赤い扉を開き、館内へ。天井は高く四角く太い柱が整然と並び、当時の耐震構造を忠実に守っていることがうかがえます。1階はシンプルな構造になっており、展示物を際立たせます。

伊東氏の建築には、彼が幼少期に親しんだ妖怪や空想上の動物たちをモチーフにしたものが多く見られます。たとえば2階へ上がる階段の手すりには、丸みを帯びた可愛らしい狛犬が5体鎮座しています。
2階の天井に彫られた正面向きの龍や、斗(と)きょう(天井と柱の繋ぎ目の部分)に施された吻(ふん)(日本のシャチホコの原型となった中国式の空想獣)の装飾も必見です。いずれも、魔除けや火除けの動物とされています。

建物に使われている石を中国から輸入したのもこだわりの一つ。中国風建築の様相が色濃く出ているテラスにも使われています。

建築も展示も見どころ満載 何度訪れても楽しめる美術館

大倉集古館陳列館は、中国の古典様式を活かした建物の名作として、1998年(平成10年)に国指定の登録有形文化財となりました。
見ごたえがあるのは、もちろん建築だけではありません。平安時代の国宝「普賢菩薩騎象像」などの常設展示のほか、特別展も充実しています。

3月25日まで開催されている特別展「蒐(あつ)めて愉しむ 鼻煙壺(びえんこ) ―沖正一郎コレクション―」では、貴重な中国の嗅ぎ煙草入れ約300点のほか、関連展示として大倉コレクションから中国の明・清時代の美術品を鑑賞できます。
ぜひ、見どころ満載の大倉集古館で新たな発見をしてください。

大正・昭和へタイムスリップ
大倉集古館陳列館写真
明治から大正時代の大倉集古館は、純和風の建物でした。大倉邸の一角に建てられていましたが、関東大震災で焼失してしまいました。
大倉集古館陳列館写真
ホテルオークラが建つ前の大倉集古館。門や回廊などもありましたが、現在は陳列館のみ残されています。当時はこの辺り一番の高台で、海まで見えたそうです。

見どころをチェック

大倉集古館陳列館 みどころ写真
大倉集古館陳列館 みどころ写真

<左段>
テラスを支える石積みのアーチは5連になっています。
<右段>
写真左:亀甲型の窓も中国風のデザインです。
写真右:屋根の上には吻(ふん)と呼ばれる幻獣が。


大倉集古館陳列館 みどころ写真

2階は円柱の柱。
天井・柱に龍や吻(ふん)が彫られています。

大倉集古館陳列館 みどころ写真

1階は角柱。
各階に変化をつけたのも伊東氏のこだわりです。

まるで動物園!? 動物を探してみよう

大倉集古館陳列館 みどころ写真

写真左:5体の狛犬は室内犬のよう。
写真右:斗きょうの部分にも吻(ふん)が見られる珍しい造形。

大倉集古館陳列館 みどころ写真

写真左:天井の龍は正面を向いています。
写真右:庭には石造りの羊もいます。

◆大倉集古館陳列館

大倉集古館陳列館地図

港区虎ノ門2-10-3
東京メトロ 六本木一丁目駅より徒歩5分、
神谷町駅より徒歩7分
TEL 03-3583-0781

取材協力:公益財団法人 大倉文化財団・大倉集古館
参考文献:大倉集古館学芸部編集「大倉集古館の名品」図録、筑摩書房「伊東忠太動物園」
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