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御菓子司 新正堂代表取締役 渡辺仁久さん

「切腹最中(もなか)」「景気上昇最中」「出世の石段」など奇抜なネーミングの和菓子が話題になっている新正堂(しんしょうどう)。三代目ご主人の渡辺さんにお話を伺いました。

最初は「切腹最中」に大反対

昔からつぶ餡(あん)の豆大福を作っていたという渡辺さん。日持ちするお菓子が欲しいとお客さんからの要望で最中を作りたいと思っていたところ、「ちょうどお店が、忠臣蔵の浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が切腹した田村屋敷跡にあったんですね。なら忠臣蔵にちなんだ最中を作ろうと」。

まずはネーミング。忠臣蔵にちなんだ名前を考えていたら、内匠頭の“切腹”という言葉が浮かんだそうです。「他にも“忠臣蔵”や“御忠義”など、色々考えたんですが、最初に思った“切腹”が頭から離れなかったんです」。そうはいってもお菓子は縁起物、お見舞いなどに持っていくときに“切腹”はまずいだろうと、家族や周囲は大反対。また、最中の皮から餡がはみ出ているのも和菓子としては前代未聞のこと。それでも諦めきれず、商品化に踏み切りました。

平成2年から発売され、名前のインパクト、見た目のボリューム、そしてさっぱりとした甘さが魅力で、今では大人気商品になりました。続けて「景気上昇最中」「出世の石段」と個性的な和菓子を発売。どれも美味しいだけでなくアイデア満載で、ちょっと洒落っ気のある所が渡辺さんの人柄と重なります。

忠臣蔵に後押しされて

新正堂の創業は大正元年。お店には明治から昭和にかけての写真が飾られており、時代の移り変わりを感じることができます。その中に田村屋敷跡にあった」「お化け銀杏・と呼ばれる銀杏の大木の写真があります。この銀杏は関東大震災で焼失し、その跡に「田村銀杏稲荷大明神」というお社(やしろ)が祀(まつ)られました。そのお社も空襲で焼け、ながらく姿を消していました。その後、環状2号線の開発により、渡辺さんは店舗を移転。以前の店舗の跡地の一角にお社を再建されました。実はこのお社、赤穂出身の方から譲り受けたもの。この方が亡くなった後このことを知り、「このご縁は、まさに浅野さんが応援してくれている」と感じたそうです。

現在は娘さんもお店を手伝い、長男は四代目を継ぐため埼玉県の和菓子屋で修行中です。「息子が店を継ぐと言ってくれたときは、嬉しかったですね」と語る渡辺さん。今もユニークで美味しい商品を構想中とのこと。新橋の銘菓として店頭に並ぶ日が待ち遠しいですね。

 

渡辺仁久さん 写真
イラスト
新正堂(しんしょうどう)
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