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![]() 芝・増上寺の門前から歴史を綴る
大奥女中絵島(えじま)、町火消「め組辰五郎」、浮世絵師・安藤広重、歌舞伎狂言作家・河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)、高浜虚子(きょし)、六代目尾上菊五郎、ちんちん電車から都営地下鉄大門駅の開通まで。江戸から、明治、大正、昭和にわたる多彩な人物や風俗を散りばめ、増上寺と大門前の暮らしぶりを描いた冊子が増上寺で頒布されています。題して『門前百年』。筆者は門前で鰻屋を開業していらっしゃった米山昭二さんです。 芝山内(さんない)を庭として育った米山さんは、大門通りには格別の思いがあります。「兵に告ぐ」のビラが舞い落ちた二・二六事件(昭和11年)をはじめ、その翌年銀行頭取の寄付で大門がコンクリートづくりに生まれ変わったこと。日華事変の勃発、増上寺本堂に宿泊した赤坂連隊の若き兵士たちの出征パレード。米軍機の焼夷弾攻撃で門前の町も壮麗な増上寺の将軍廟(しょうぐんびょう)も一夜にして焦土と化したなど忘れられない記憶だそうです。 ![]() 『門前百年』 (本書は増上寺の寺務所にて 取り扱っています) 「実は若い頃は人に聞かれてもロクな説明ができなかったんです」と語る米山さん。「築地の魚河岸で、江戸風俗研究家の岸井良衛先生と出会ったことから、我が町の歴史に心を留めるようになりました。場所柄のせいか店においでになるお客さんは、その道の有識者が多く、私も好奇心が強かったから何でも質問しましたよ。歴史学者、画家、書家、俳人、企業にお勤めの方も一家言(いっかげん)を有する人ばかり。それに町のご長老やお坊さんも加わり、物の見方・研究の仕方などをわかりやすく教えていただきました」 5年前、米山さんは脳梗塞を発症、包丁が持てなくなり廃業を決意されました。「ありがたいことに『ワープロが打てるのなら、できることがあるじゃないか』とお客さんが心配してくださいました。これらの励ましを力に、筑波大学の『近代史資料研究』に論文を提出、『尾崎紅葉の芝時代 上・下』になって掲載されました」。今年元旦で満80歳を迎えられた米山さん、今は三田にお住まいですが「私の心の故郷は大門前だな」とおっしゃっていました。 |
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