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連載コラム

ようこそ!シアターの世界へ

第7回 京劇

皇帝の誕生日をきっかけに誕生

中国伝統の舞台芸能である京劇。起源は18世紀、皇帝の80歳の祝賀のために安徽(あんき)省の4つの劇団が北京にやってきて、大人気を博したのがはじまりといわれています。その後、国内の地方劇や民間芸能の影響を受けながら発展していきました。演目は、歌とセリフを中心とした「文劇(ぶんげき)」と、立ち回りが見せ場となる「武劇(ぶげき)」に分かれます。いずれも、歌唱・セリフ・しぐさ・立ち回りからなる総合芸術です。

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「歌」も重要な要素

京劇の世界では「無字不歌(ウーズブーグー)(字があれば必ず歌う)」と言われています。人物の感情、対話、心の中の独白等を唱(チャン)(歌)で表現することが多いためです。娘役は地声と裏声を、青年役は主に裏声を、年齢を重ねた人物役は地声を使って歌います。京胡(きょうこ)という弦楽器や銅鑼(どら)といった民族楽器の生伴奏と共に朗々と響く歌声は、芝居の核ともいえるパートであり、京劇がチャイニーズオペラと呼ばれるゆえんです。

「京劇白蛇伝2016」より

「京劇白蛇伝2016」より

京劇の舞台

劇場では舞台装置がほとんどなく、「一卓二椅(イージュオアルイー)」(一つの机と二脚の椅子)でベッドや山を表したり、車輪の描かれた旗で車を表したりして、最小限の道具で情景を表現します。観客が想像することで舞台が完成するのです。

■「京劇白蛇伝2016 中国国家京劇院日本公演」

日程:5月28日~6月5日
会場:東京芸術劇場プレイハウス
問合せ:TEL 03-5281-8066

知ってる?鑑賞マナー

舞台への掛け声

日本国内で京劇を鑑賞できる機会は、残念ながら多くはありません。中国への旅行の際や日本公演を観るチャンスがあったらぜひ足を運んでみることをおすすめします。
北京の劇場では、俳優が唱(チャン)を歌い上げたり、立ち回りがうまく決まったりと見どころに差しかかると、観客が拍手をして大声で「好(ハオ)!好!(ハオ)(素晴らしい!)」と口ぐちによびかけます。歌舞伎の「大向こう」のような習わしです。日本の公演では拍手で称賛の気持ちを表すのが一般的です。京劇の舞台は、役者と観客が一緒に盛り上げるものなのです。

参考:「京劇の世界」(東方書店)「京劇への招待」(小学館) 協力:NPO法人京劇中心