キスポート財団設立30周年記念インタビュー ♯5 ー 支える・つなぐ・ひらくー
更新日:2026/11/02
桜田小学校から生まれた「学びの拠点」
―生涯学習センター「ばるーん」の成り立ちについて教えてください。
馬場さん(生涯学習センター「ばるーん」所長)
もともとここは、港区の新橋にあった桜田小学校です。
113年の歴史を持つ学校だったのですが、児童数減少などの理由により、平成3年の統廃合で小学校としての役割を終えることになりました。それから、より多くの人の学びの場となるように平成10年に「生涯学習センター」として開設されました。外観も小学校のままですし、目の前にはグラウンドがあります。各学習室も昔の教室の面影を残しているので、来ていただくと「ああ、ここは小学校だったのだな」と感じていただける施設になっています。
―地域との関係も深いですね。
馬場さん
桜田小学校の歴史を受け継いでいる施設ですからね。
愛宕地区の町会と防災訓練などを通じて連携していますし、「新橋こいち祭」では施設全体を活用して地域を盛り上げています。
また、防災面では災害時の新橋駅周辺の滞留者対策にも関わっています。
施設というより、地域の一員としての役割も大きいと思います。
「ばるーん」は何をする場所?
―ほかの指定管理施設との違いはありますか?
馬場さん
一番の違いは、生涯学習の拠点施設だということです。
区民センターなどは港区在住・在勤・在学の方が主な利用対象ですが、「ばるーん」は区外の方も利用できます。
一方で、個人利用はできません。「一人で部屋を借りて利用したい」「自分が講師になって教室を開きたい」という利用ではなく、自主的な団体が継続的に学び合う活動を支援することが目的になっています。
―施設の役割はどのようなものになりますか?
馬場さん
大きく言うと、
・生涯学習に関する情報の収集と提供
・学習相談
・講座の開催
・関係団体との連携
・学習室の提供
といった役割があります。
学びの場を支える施設運営
―利用状況はいかがですか?
馬場さん
部屋は全部で12室ありますが、年間の平均稼働率は70%を下回ることはありません。
特に新橋という立地もあって、平日の夜や土日の午後はかなり高い稼働率です。部屋によっては90%を超えることもあります。
―かなり利用されているのですね。
馬場さん
そうですね。長く活動されている団体も多くおられますし、新しく団体登録されて利用している団体も増えています。更に私達も学びのきっかけとなるような多くの事業や講座を実施しています。生涯学習の場合、「講座を開催して終わり」ではなく、自分たちで学び続けたり活動を続けたりできる人を育てることも目的になります。そのため参加者や団体との関わり方も深くなります。
―講座を企画する際に大切にしていることは何ですか?
馬場さん
時代に合わせて学びのテーマを考えることですね。
例えば、今だったらNISAのようなお金に関するテーマも注目されていますし、皆さんの興味関心は常に変化しています。昔から続いている講座だけではなく、今求められている学びを意識しながら企画しています。
60歳から始まる新しい学び「さくらだ学校」
―長く続いている特徴的な講座はありますか?
馬場さん
「さくらだ学校企画運営委員講座」ですね。60歳以上の方を対象とした講座で、参加者自身が企画段階から関わります。「今どんなことを学びたいか」「どんなテーマが地域に必要か」等を企画運営委員の皆さんと一緒に考えて形にしていく講座です。
今回は広域品川圏の再開発や高輪ゲートウェイをテーマにしています。
―参加者自身が考えていく講座なんですね。
馬場さん
そうなんです。「ぜひこの講師をお呼びしたい」という思いをお持ちの方もいらっしゃいますし、トレンドをおさえたテーマや、港区の地域・歴史に関わる内容などを話し合って決定していきます。
学びの成果が広がる場づくり
―協働参画事業やフェスティばるーんは、どのようなものですか?
志村さん(生涯学習センター「ばるーん」職員)
協働参画事業は、生涯学習センターを利用している団体の皆さんが講師となり、団体が普段行っている内容を体験できる事業です。いけばなやギターなど様々な講座に気軽に参加して、楽しみながら団体の魅力や活動を多くの方に知ってもらうことを目指しています。
―学び合いの場でもありますね。
志村さん
そうです。 団体の活動も活性化しますし、地域にも学びを還元するという事業です。
―毎年開催しているフェスティばるーんはどのようなものですか?
馬場さん
フェスティばるーんは、利用団体の皆さんにとって日頃の成果を発表する場です。ばるーんにはホールがないので、普段の活動成果を披露する機会は多くありません。そこで校庭にステージを設け、さまざまな団体に発表していただいています。
また、地域の方々や地元企業から協賛をいただくこともあり、利用団体と地域をつなぐ交流の場としての役割も担っています。
生涯学習施設同士の連携で新たな学びを創出
― 青山生涯学習館との連携も行っているそうですね。
志村さん
はい。現在、青山生涯学習館との連携事業「新橋・青山×(クロス)講座」の申込を受け付けています。開催日は2026年11月12日・13日です。
新橋と青山、港区の2つの生涯学習施設が連携し、地域にゆかりのあるテーマの講座をそれぞれの会場で開催します。
普段はあまり訪れる機会のない場所や施設にも足を運んでいただき、新たなまちの魅力に触れてもらえたらと思っています。
― 具体的には、どのような講座を予定していますか?
志村さん
今年度は、「近代東京の地政学」と題し、新橋や青山、表参道など、私たちが普段目にしているまちの風景が、どのような歴史や社会の変化を経て、現在の姿になったのかを探っていきます。
地域への興味や愛着を深めてもらえるような学びの機会にしていきたいですね。
世代を超えてつながる学び
―事業を通じて生まれた印象的なつながりはありますか?
馬場さん
多世代交流ですね。例えば、令和7年度、8年度の桜田学校課外授業では、戦争体験を持つ「港区語り部の会」の方の御協力のもと、子どもたちと昔からの遊びを通して、交流していただきました。
今は90代の方と子どもが接する機会はなかなかありません。ですが、その事業では子ども、保護者、高齢者の三世代が自然に交流する場になりました。
―現在の課題について教えてください。
志村さん
一番は、もっと若い世代に知ってもらうことですね。少しずつですが、若い世代向けの事業を進めています。昨年は、新社会人向けに編み物をテーマにした事業を開催しました。
Instagramでも人気の講師をお招きしたところ、とても盛り上がって、その後団体が立ち上がりました。現在もばるーんを利用して継続して活動しています。
これをひとつの成功例として、これからも若い世代に向けて事業を開催していきたいと思っています。
生涯学習で見える“成長”とは
―ばるーんが目指している生涯学習の成果とはどのようなものですか?
馬場さん
生涯学習の成果は数字だけでは見えにくいのですが、私たちがひとつの理想としているのは、先ほどの編み物の団体のように、講座に参加した人が自分たちで団体を立ち上げて活動していただくことです。
ばるーんでの学びがきっかけになり、参加者自身が一歩踏み出し、新しい活動へ発展していく。そうした変化や成長が、生涯学習の大きな成果だと思っています。
―学んで終わりではなく、スタートになるのですね。
馬場さん
そうですね。ここで出会った仲間と活動を続けたり、「フェスティばるーん」の場で発表したり、さらに新しい人とつながったりする。
長年活動されている方と新しい人たちが、学び合いながらつながっていく。そんな学びの循環が生まれる場所であり続けたいと思っています。
生涯学習センター「ばるーん」公式SNS
【Instagram】https://www.instagram.com/minatoartscenter/
【X】https://x.com/minatoarts_mm
生涯学習センター「ばるーん」
住所:東京都港区新橋三丁目16番3号
電話番号:03-3431-1606 FAX:03-3431-1619
JR:新橋駅下車烏森口徒歩3分
地下鉄浅草線・銀座線、ゆりかもめ:
新橋駅下車JR乗り換え口徒歩4分
地下鉄三田線:内幸町下車A1出口徒歩10分
開館時間:(月曜~土曜)午前9時から午後9時30分
(日曜日)午前9時から午後5時
休業日:臨時休館日(10月・2月をのぞく第3月曜日)、年末年始(12月29日から1月3日)
【施設紹介】
新橋駅徒歩約3分の場所にある生涯学習活動の拠点施設です。学習の機会・場・情報の提供を通じて、区民の自主的な学びや交流を支援することを目的に、1998年(平成10年)に開設されました。
また、現在の建物は旧桜田小学校の校舎を活用したもので、館内には当時の資料を展示する「桜田小学校記念室」が設けられています。
🟧特長・魅力
🔸「フェスティばるーん」
生涯学習センター(ばるーん)の利用団体による年に一度の成果発表会・交流イベントです。日頃センターで活動しているサークルや団体の活動成果を地域に公開するとともに、団体同士や地域住民との交流を図ることを目的に開催しています。
🔸「さくらだ学校企画運営委員講座」
60歳以上の区内在住・在勤の方を対象とした講座です。健康、趣味、歴史、環境、生きかたなど幅広いテーマを扱っています。
令和8年度は「私達のくらしと変わりゆく港区」をテーマに、テーマにまちの変化や芸術、健康、語りの時間など多彩な分野から学べる講座を企画しています。
🔸協働参画事業「ばるーん文化体験講座」
生涯学習センター(ばるーん)とセンター利用団体が協働で講座を実施する仕組みです。
講座内容は、いけばなやギター、社交ダンス、くみひもなど多岐にわたり、利用団体が持つ専門性や経験を生かした学びの場となっています。区民と地域団体を結び付けることで、新たな参加者や仲間づくりにつながる機会を創出しており、「区民団体との協働による学びづくり」を象徴する事業です。
🔸学びの循環事業「まなマルシェ」
まなマルシェは、地域で何かを始めたい人や、自分の「好き」を地域活動につなげたい人が集う交流事業です。参加者同士の学びや対話を通じて、新たなつながりや活動のきっかけを生み出し、地域における学びの循環を育んでいます。
🔸新橋・青山×(クロス)講座
生涯学習センター(ばるーん)と青山生涯学習館が連携して実施する事業です。異なる地域特性を持つ二つの施設を「クロス」させることで、それぞれのまちの魅力や特色を再発見する学びの機会を創出します。

