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ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
上野通明さん(チェリスト)

世界を旅する一流のチェリストに

7月、サントリーホールで開催されるフレッシュ名曲コンサート『第23回 Kissポートクラシックコンサート』で演奏する上野通明さんは、小さい頃から各国で演奏してきた期待の若手チェリスト。チェロとの出会いや海外でのエピソード、コンサートの聴きどころを伺いました。

チェロを始められたきっかけは?

自分ではあまり覚えていないのですが、小さい頃から、目が覚めたらまず歌を歌うほど、歌がとても好きだったようです。二人の姉はピアノとヴァイオリンをやっていましたが、4歳の僕は、「ヨーヨー・マ」のビデオを見てチェロをやりたいと思い、5歳のクリスマスにやっとチェロを始めることができました。

生まれはパラグアイだそうですね。

父の仕事の関係で2歳までいましたが、その後いったん帰国し、チェロを始めて半年ぐらいで今度はスペインに引っ越しました。スペイン時代は、とても楽しかったですね。バルセロナは地中海に面していて、夏は毎週、海に遊びに行くし、音楽もラテン系で陽気。日本だと練習は休めませんが、スペインでは小さい子は遊ぶのが第一なので、旅行中は楽器は置いて行けと、スペインの先生がいつも言っていました。

勉強と演奏の両立は大変ではないですか?

中学時代はサッカー部もやっていたので時間のやりくりが大変でした。音楽高校に通うようになって、より集中して音楽に時間をかけられるようになりました。それでも、いつも練習ばかりしているわけではなく、友達とファミレスで食事をしたり、高尾山の日の出を見に行ったりと、遊ぶときはよく遊びます。4月から、桐朋のソリスト・ディプロマコースに進学しましたが、そこは比較的スケジュールを自由に立てやすいコースなので、どんどん演奏の機会を頂いて、音楽活動をさらに積極的に行っていくことができればと思っています。

今後の活躍が楽しみですね。

演奏を人に聴いてもらえるのが一番嬉しいです。演奏で心がけているのは、確かな技術と魅力的な音、幅広い表現力。自分にしか出せない音や表現を身につけ、将来、世界で演奏できるソリストになれればと思います。『ルーマニア国際音楽コンクール』で受賞したあと、演奏ツアーでルーマニアに行ったのですが、お城や作曲家の記念館で演奏する等、良い経験ができました。そんな風に一流のチェリストになって、世界中を旅するのが僕の夢です。

それでは最後に、今回のコンサートの聴きどころを教えてください。

今回演奏するドボコン(ドヴォルザークの『チェロ協奏曲』)は一番好きな曲です。作曲を依頼したチェロ奏者本人が難しくて弾けないと言ったほどの難曲ですが、にもかかわらずよく演奏されるのは、故郷や亡くなった初恋の人への思いを込めた、ドヴォルザークの人間的な魅力が詰まった名曲だからです。僕が初めてこの曲を練習したのは中学2年の時。高校入試で演奏し、東京音楽コンクールでオーケストラと演奏させていただいた思い出の曲でもあります。また、僕が初めてオーケストラとコンチェルトを共演させていただいたのは11歳の時の『第22回こども定期演奏会』で、指揮が大友先生、オーケストラは東京交響楽団、サントリーホールでした。そして今回、再び同じシチュエーションで演奏させていただくことになり、本当に感激しています!精一杯心をこめて演奏しますので、ぜひ聴きにいらしてください。

プロフィール

上野通明さん

1995年、パラグアイ生まれ。5歳よりチェロを始め、スペイン滞在中からコンクールで受賞多数。
2009年『若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール』日本人初チェロ部門第1位、2010年『ルーマニア国際音楽コンクール』弦楽器部門第1位最年少受賞。桐朋学園大学音楽学部ソリスト・ディプロマコース全額免除特待生。