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ジャズ・ヴォーカル・グループ
BREEZE(ブリーズ)
12月10日に高輪区民センターで『クリスマス・ファミリー・コンサート ブリーズのジャズ・コーラス・ナイト♪』を開催するブリーズの皆さんに、ジャズ・ヴォーカルの楽しさや珠玉のコーラスを生み出す秘訣をお聞きしました。ブリーズは、ソプラノの小菅けいこさん、アルトの松室つかささん、コーラスのアレンジも担当するテナーの中村マナブさん、バリトンの磯貝たかあきさんの4人のグループです。
小菅:ジャズ・ヴォーカリスト後藤芳子さんにレッスンを受けていたときに、待ち時間にみんなで歌って遊んでいたんですよ。たまたまそこにあった『マイ・ロマンス』という曲の譜面でした。それを聴いた後藤さんが「そのままステージでやっちゃえ」と言ってライブを手配してくれたんです。あわててレパートリーを増やして、そのメンバーでライブをやったのが始まりです。その後、海外留学したメンバーのかわりに入ったのが磯貝。中村が2003年に、2年前に松室が入って今のメンバーになりました。
小菅:大学院のときに、ジャズ・シンガーのナンシー・ウィルソンがポップスを歌っているカセットテープを知り合いに勧められて、その中の『カサブランカ』という曲を聴いてからです。すごく良かった。ジャズをやるとこんな素敵な歌が歌えるんだと思って。
松室:港区の明治学院高校・大学に通っていた頃にゴスペルを始めて、そこからジャズに入りました。
中村:ずっとクラシックをやっていたんですが、大学4年のときにブリーズに誘われて、ジャズ・ヴォーカルを始めました。クラシックかジャズかということはあまり気にしないで飛び込みました。
磯貝:中学生の頃、歌手の江利チエミさんの歌に魅了されてからです。チエミさんは、民謡でもなんでもジャズとして歌っちゃうんです。
磯貝:合わせようと思っちゃダメ。合わせようと思うと、それが目的になって、音楽じゃなくなっちゃうから。楽しむことが目的ですから。そう考えると、自然に合っていくんです。
小菅:うまくハモらないときは、リズムや言葉に戻ることもあります。言葉は大事なんですよ。英語の発音を練習すると、さっきまで合わなかったのが嘘みたいに合ったりします。もちろん、練習も大事です。練習には時間をかけます。
小菅:ジャズにはいい曲がいっぱいあります。それから、コーラスやバンドが影響しあって演奏が変わっていくのも魅力です。ライブでは、4人だけじゃなくて、バンドと一緒に音楽を作るから。コーラスは譜面通りに歌うんですが、バンドから受け取るイメージによって、その場その場でテンポもハーモニーの色も変わるんです。バンドの演奏はメンバーが同じでも毎回変わります。聴いているお客さんによっても変わるんですよ。
磯貝:だから、正しく歌うっていう感覚は全くないよね。
小菅:アメリカに行って歌ったときのことなんですけど、お客さんのほうがリズム感がいいんですよ。舞台からは、客席の暗闇に揺れてるお客さんの体のシルエットが見えていて、「こうやってリズムをとるのか!」って感心しちゃうくらいに。バンドには、ジョン・ハードというベーシストが……私たちのすぐ後ろで演奏しているんですけど……そのベースの音が体の中を揺さぶるんです。今まで体の中がこんなふうに揺さぶられたことはないなっていうくらいに。体の中が変わると出てくる音も変わりますからね。そんなふうに、いつも新しい発見があるんです。
磯貝:ジャズもクラシックも童謡も歌謡曲も、たとえばCD屋さんでは探しやすいようにジャンル分けされているけれど、実は音楽としての本質はみんな同じだと思うんです。でも、それがわかったのは、ジャズを歌うようになってからなんです。そういうところもジャズの魅力だと思います。ジャズは楽しくて飽きないし、音楽がなかったらきっと自分は生きてないだろうなって思いますよ。ジャズは難しそうだな、とっつきにくそうだな、と思っている方もいると思うんですが、もっと誰でも楽しめるようにしていきたいですね。
学校公演やコーラス指導にも力を入れているんですね。
小菅:こちらも教えられることが多いんです。ある小学校で公演したときは、最後に一曲生徒さんたちと一緒に歌ってほしいとリクエストをいただいたんですが、生徒さんたちの声があまりにも純粋で感動しました。小学生でもこんなに大声で歌えるんだって思うくらいに、バーンって、声が聞こえてきたんです。
磯貝:ハートでハートを直接タッチされたように感じました。『カントリー・ロード』という曲だったんですが、生徒さんたちがメロディーを歌って僕らがハーモニーをつけることになっていたんですが、コーラスの部分になってもソプラノが聞こえないんですよ。あわてて小菅を見ると泣き崩れて歌えなくなっていました。
小菅:あまりの純粋さに泣いちゃって。
小菅:軽いストレッチと呼吸法と発声は必ずやります。呼吸法で息の流れをそろえて声の純度を上げていくと、音色が違っていても響き合うようになるんです。人と響き合うことを体験してほしいんです。
磯貝:本番が楽しみですよね。本番になると、また、今までになかった力が爆発しますから。
小菅:練習のときは中村がピアノで伴奏するんですが、本番ではバンドと合わせなきゃいけないんです。イントロも間奏も全然違って、どこで歌い始めればいいかわからなくなるくらいです。だから、がぜん本気になりますよ。
松室:お子さんが楽しめるクリスマスソングもジャズの名曲も歌いますから、年齢に関係なく皆さんに心地よく楽しんでいただけると思います。ジャズに詳しくない方にもぜひ来ていただきたいです。
中村:聴きに来た方が、自分もやってみたいなと思ってもらえるとうれしいですね。
BREEZE(ブリーズ)
1993年、ジャズ・ヴォーカリスト後藤芳子の門下生5人で結成、メンバーチェンジを経て2015年1月から現在のメンバーに。スイング感あふれるハーモニー、親しみやすいステージで知られる。ロサンゼルスやサンフランシスコ、ハワイ、中国、韓国等でも公演し、海外での評価も高い。学校公演やコーラス指導にも力を入れている。
左上:磯貝 たかあきさん
右上:松室 つかささん
左下:小菅 けいこさん
右下:中村 マナブさん