ここから本文です。

ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
栄 和人さん

日本レスリング協会常務理事

強化本部長

栄 和人 さん

子どもから大人まで楽しめるレスリングで体力トレーニング

2016年のリオ・オリンピックの女子レスリングで金メダルを獲得した川井梨紗子選手と土性沙羅選手とともに、2月4日、港区スポーツセンターで『レスリング講演会・体験会』に登場する日本レスリング協会強化本部長、ナショナルコーチの栄和人監督。レスリングの楽しさやメダリストを育てた指導方法について伺いました。

監督がレスリングを始めたきっかけは?

中学校時代、相撲や柔道をやっていて、いくつかの高校から「うちに」と勧誘を受けたんですよ。ただ、体が大きい人が強い競技ではなく、体重制のある競技がやりたかったんですね。同じ体重なら誰にも負けないと思っていたので。今は柔道やアマチュア相撲にも体重制がありますが、僕らの時代にはレスリングだけ。それがきっかけです。

レスリングの魅力を教えてください。

レスリングのマットというのは、柔らかくてレクリエーション的な遊びが楽しめるんですよ。マットの上で自由に転がったり、走り回ったりすることで、知らないうちに体力と健康づくりのトレーニングになっています。そこからマット運動が上手くなったり、技を覚えて動きの基礎ができてくると、ほかの競技にも応用がききます。運動会で活躍したり、バレーボールや陸上が上手くなったり。つま先から頭の先、指先まですべてを使う運動で、体づくりを含めたすべての競技の基本がレスリングにあるということです。その上、わかりやすくしっかりしたルールがあるので、安全な競技でもあるんですよ。

子どもたちも喜びそうですね。

最近は「ちびっ子レスリング」教室が広まっていて、オリンピック選手のほとんどが、そうした教室をきっかけに始めた人たちみたいですね。オリンピック選手を目指していなくても、レスリングは個々の弱点や強みにあわせて鍛えていくことができます。取っ組み合いさえしなければ、80歳を超えてもできるでしょう。0歳から大人まで、一生楽しめるのです。

ところで、オリンピックチームはどのように指導されているのですか?

僕の場合、選手には目標を明確に知らせます。たとえば、チャンピオンの目の前で新人に「早くこの先輩に勝つようになれ」と言うんです。「そうすれば、今度はあなたがチャンピオンだよ」と。新人にとってはすごい励みになりますよね。チャンピオンもそれを悪くとらずにエネルギーにします。何年か前には、やはり同じことを言われて研鑚してきたわけですから。そこに化学反応が起きるのです。そうやって新しい選手が先輩を超えていくチームの良い循環ができて、強い選手が育っていくんですね。

そうしたチームの指導のポイントは?

コミュニケーションも大事ですが、まず心がここにあるか、ということだと思います。教える側も、心ここにあらずな状態では良い指導にはなりません。自分の時間を惜しまず選手のために努力すれば、いつかは自分に返ってくるんですよ。

『レスリング講演会・体験会』が楽しみです。最後にメッセージをお願いします。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、レスリングだけでなく、スポーツ全体に関心を持つ人が増えるといいですね。子どもがスポーツを始めると、親御さんも興味を持ったり、応援したくなるでしょう。選手はそれを肌で感じて頑張ります。日本開催ですから、ぜひ、目の前で応援してください。

プロフィール

栄 和人(さかえ かずひと)さん

栄 和人(さかえかずひと)
1960年鹿児島県生まれ。
日本体育大学卒業。レスリング選手として活躍、ソウル五輪出場。現在、至学館大学レスリング部監督兼日本女子レスリングのナショナルコーチ・強化本部長。卓越した指導力と慕われる人柄で、吉田沙保里、登坂絵莉、伊調馨、川井梨紗子、土性沙羅等多数のオリンピックメダリストを育ててきた。