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ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
市村萬次郎さん、山井綱雄さん

歌舞伎役者(左)

市村 萬次郎 さん

金春流シテ方能楽師(右)

山井 綱雄 さん

日本の伝統芸能が一度に楽しめる舞台を気軽に楽しんでください!
「英語で楽しむ伝統芸能~能と歌舞伎~」に向けて

日本の代表的な伝統芸能である歌舞伎と能が、同じ舞台で上演されるという画期的な公演が行われます。
「キスポート」誌上でも、歌舞伎役者市村萬次郎さん、金春流シテ方能楽師山井綱雄さんに共演していただきます。

歌舞伎と能の同時公演は、滅多になく貴重な機会です。

市村
今回は日本の伝統芸能「歌舞伎」と「能」の特色を生かした個々の作品を赤坂の舞台で上演します。どちらも古典として長い歴史を背景に伝統を受け継いでいますので、比較ではなく、率直にお楽しみいただければと思います。
山井
そうですね。それぞれの発見があるかもしれませんね。今回は、市村さんとも内容を何度も話し合い、能、歌舞伎という順で上演します。歌舞伎も能も、「日本人の心」を表していることに違いはありません。
市村
今回は公演を観る前に、歌舞伎、能の見方を解説します。英語での解説もありますので、気軽に楽しんでほしいですね。

日本人と外国の方が同時に楽しむことができる今公演は、すばらしい取組みですね。

市村
私自身も海外公演に参加し、外国での舞台をつとめてまいりました。日本に仕事や留学等で来日される諸外国の方が増えていますが、少しでも日本の文化や風習を知っていただく入り口になれればと思い、取り組んでいます。

山井
能楽の世界は、流派毎の活動が中心ですが、今後は能楽界全体を見渡す視点・姿勢が必要だと感じています。それは、歌舞伎等、他の伝統文化の皆さんとの関係に於いても同じ。一致団結して、お客様が感じる日本伝統文化との距離を縮めていきたいですね。

今公演での見どころを教えていただけますか。

市村
「藤娘」は歌舞伎・女形の代表的な演目で、多種多様な舞台効果と演出方法を凝縮した舞台です。今まで多くの国々や地域で上演し、とても楽しんでいただきました。大道具もすべて本物です。是非、歌舞伎の美しさをご堪能ください。
山井
今回は、今年の4月に家元を継承された、金春流81世宗家金春憲和師に能楽最古の流派・金春流が伝承してきた「翁」を謡っていただきます。その後、能の代表作、「高砂」をご覧に入れます。「高砂」はとにかく、小気味よいテンポと気合い(笑)。音楽担当である囃子方との一体感をお楽しみください。

日本の伝統芸能を担う立場でいらっしゃいます。常に心掛けていることは何でしょうか。

市村
やはり、日々、丁寧に舞台を勤めることが大切なのではないでしょうか。諸先輩方から学んだことを基本に、さまざまな役の本質を捉えて演じることができるように心掛けています。海外での公演やワークショップも開催していますが、日本に対する興味や親しみを感じる「きっかけ」に私たちの舞台がなることができればと思っています。日本を更に好きになってもらえるようこれからも勤めていきたいですね。

山井
我が流派も含めて能楽界は、正直申し上げて厳しいと言わざるを得ません。しかし、伝統をここで終わらせることなく、未来へ繋いでいく必要があります。そのために何をすべきか、何が必要なのかをいつも考えています。少し不謹慎な言い方ですが、「金春流を潰してたまるか!!」。これが私のすべての原動力です。
今、世界は、「自分の国さえ良ければいい」という風潮になりつつあります。しかし、日本人が構築してきた日本伝統文化には、ある種の『寛容性』が根底にあります。日本には、色々なものが共存しています。例えば能でも、神様も仏様も一緒に出てきます。能と歌舞伎も、争うことなく共存共栄してきました。そのような〝多様性の享受”というものが、日本伝統文化にはあります。それを、今こそ世界の人々に知って欲しいですね。

お互いにエールの交換をお願いします。

市村
今回は大変貴重な機会をいただき、山井綱雄さんと知り合う事ができました。お互いに良い舞台を観客の皆様にご覧いただけるよう頑張りましょう! よろしくお願い申し上げます。
山井
ありがとうございます! 市村萬次郎さんは歌舞伎の名門ですからね。同じ空間で演じられることが出来て本当に光栄です。また、役者としてジャンルは違っても、大先輩。私自身、とてもいい経験と勉強の機会をいただけました。こちらこそ、よろしくお願い申し上げます!

公演は9月9日に赤坂区民センターで行われます。「キスポート」の読者へメッセージをお願いします。

市村
今回はとても楽しい公演になると思います。普段はそれぞれ別の空間で表現していますが、「歌舞伎」も「能」も日本の伝統芸能という同じ背景を担い活動しています。この機会に、ぜひご覧ください。ご来場を心よりお待ち申し上げます。
山井
今回、久しぶりに赤坂区民センターの舞台に立つことが出来て嬉しく思っています。能は「寿福への祈りの儀式」、そして歌舞伎は「華やかに昇華された舞台芸術」という繋がりで、通して〝日本のココロ" を表します。それぞれの素晴らしさを感じてください。

プロフィール
市村萬次郎(いちむらまんじろう)さん

市村萬次郎(いちむらまんじろう)さん

歌舞伎役者。1949年12月23日、十七代目市村羽左衛門の次男として生まれる。1955年10月歌舞伎座『土蜘』の石神で五代目市村竹松を名のり初舞台。1972年5月、歌舞伎座『暫』の照葉ほかで二代目市村萬次郎を襲名。早くからインターネットのホームページを使った歌舞伎の啓蒙に取り組む等、歌舞伎を広める活動に熱意を見せている。

プロフィール
山井綱雄(やまいつなお)さん

山井綱雄(やまいつなお)さん

金春流シテ方能楽師。1973年5月25日神奈川県に生まれる。79世宗家故金春信高、80世宗家金春安明、富山禮子に師事。祖父は金春流能楽師、故梅村平史朗氏。5歳で初舞台、12歳で初シテ(主役)。以来、海外での能楽普及、他ジャンル芸術家とのコラボレーション等を多数行っている。