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落語家
柳家三三 さん
落語と深い関わりのある港区で開催されている「みなと毎月落語会」は、7月で150回を迎える運びとなりました。これを記念して、「柳家三三独演会」が開催されます。〝超売れっ子″の噺家、三三さんの素顔に迫ります。
落語を始めたきっかけは……、落語家になったからですよ! なぜ落語家になったかって? それは、学校行って勉強するのがイヤだったからです。中学を卒業したとき、小三治師匠に入門させてほしいと頼んだんですけど叶わなくて、仕方なく高校へ進学しました。高校を卒業するときに再度頼み込んで入れてもらいました。これが理由の半分です。もう半分は、落語が好きで好きでたまらなくて、聞いてるだけじゃ勿体ないと思ったからなんですよ。
師匠はね、怖いですよ、やはり。でも、うんと優しい。落語の技術的なことは、ほとんど教わっていませんが、生きている背中を見させてもらっている。これですね。
あァ、どんな出来事も噺家ならば当り前なんだろうと思っているから、つらいとか苦労したとかいう気はしません。私には、落語家でいたい、落語をしゃべりたいという気持ちより強い感情はないのでしょう。あとは、ものすごく物忘れが良いから大抵のことを忘れてしまう。だからストレスが残らないのかな。
好きな噺を演じて、それで生きてる。これを当り前と思わず、世の中でこんなに恵まれた境遇は、なかなかないって。いつも、これだけは忘れないようにしています。
休日ね。休日ったって……。仕事のない日は失業しているってコトですからね。ウキウキできません。私はオンとオフみたいな賢い考え方がうまくできないので、24時間365日いつも柳家三三です。しいて言えば、自分の知らない楽しみを人に教えてもらうのが、楽しみですね。
私は落語をしゃべっている時が一番楽しいんですが、お客さんのいないところではしゃべっても楽しくないんですよね。楽しい時間は、みんなで過ごせるとより楽しいと思います。これからも「みなと毎月落語会」を……。そうですね、毎月という名がついていますが、隔月ぐらいでいいからかわいがってください。7月にお目にかかれるのを楽しみにしています。
柳家三三(やなぎやさんざ)さん
1974年神奈川県生まれ。1993年10代目柳家小三治に入門。2006年真打昇進。第9回北とぴあ若手落語競演会大賞(1999年)、平成15年度にっかん飛切落語会若手落語家大賞(2004年)、平成19年度文化庁芸術祭新人賞(2007年)、平成27年度(第66回)文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞(2016年)等、若手噺家に贈られる数々の賞を受賞。映画、漫画等、落語を題材にした作品の監修を務め、幅広い分野で活躍中。