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ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
NHK交響楽団 クラリネット首席 松本健司

NHK交響楽団 クラリネット首席

松本健司 さん

15周年を迎えたトリオ・サンクァンシュ 木管楽器三重奏の音色をお楽しみに

1月31日の「N響メンバーコンサート2019 -トリオ・サンクァンシュを迎えて-」にご出演される、クラリネット奏者の松本健司さんに、コンサートやクラリネットの魅力を聞きました。

「トリオ・サンクァンシュ」はどのようなグループですか?

NHK交響楽団のメンバーで構成された木管楽器のトリオで、ファゴットの菅原恵子さん、オーボエの池田昭子さん、そしてクラリネットを私が演奏します。結成から15年が経ち、息はピッタリですね。半年ぶりのリハーサルでも、間の取り方が、ぱっと一度で合うのです。3人で積み重ねた曲や時間は本当に大きなものだと、最近しみじみと感じているところです。トリオ名の由来は、私たちの楽器に付くリード(発音体)にちなんでおり、フランス語で【5枚リードのトリオ】という意味です。

いつもはどのような活動をされていらっしゃるのでしょうか?

不定期での室内楽コンサートが中心です。菅原さんのファゴットが安定感のある低音を奏で、そこに池田さんのオーボエや私のクラリネットのメロディが自然と乗り、3つの木管楽器それぞれが互いを輝かせていく。そうした演奏を毎回目指しています。また、コンサートの日程に合わせて、地元の小学校を訪ねる出張コンサートにも参画し、子どもたちに音楽や楽器の楽しさを伝えています。

松本さんがクラリネットに出会ったのも、小学生のころだそうですね?

そう、小学校4年生の時に学校にオーケストラがやってきて、音楽鑑賞会が行われたのです。その際に楽器紹介のコーナーがあり、私はクラリネットの音にだけ「ビーン!」と反応したのです。いい音がするなーと思い、家へ帰ってすぐに「クラリネットを吹きたい!」と親に頼んだことを覚えています。その時の演奏は「クラリネットポルカ」という曲で、下からタタタタタっと音階を駆け上がっていくような軽やかな旋律や、楽器としての機動力が、幼かった私に強く響いたのでしょうね。今も基本的には明るく、軽やかな音を求めているように思います。
クラシックではモーツァルトのクラリネット協奏曲や、ブラームスのクラリネット・ソナタ2番等が好きですね。クラリネット奏者にとってだけでなく、人類の宝のような曲だと思います。

クラリネットの音色の魅力について教えてください。

オーボエやファゴットに比べると、音域の広さが大きな特徴です。低音域のふくよかな音から、高音域の鋭く刺すような音まで、音色の幅が実に豊かです。音量も自在に調整でき、目立つこともできれば、低音域でメロディラインを支えたり、柔らかな雰囲気をつくることも可能で、多彩な音を表現できるのがクラリネットの魅力です。

今回の演目は物悲しい旋律から軽快な曲まで、さまざまに楽しめそうですね。

そう、料理ならフルコースです。プーランクの小品やサティのジュ・トゥ・ヴは、私たちが友人の作曲家にアレンジをお願いしたオリジナル曲ですから、ぜひそこをお楽しみください。「エディット・ピアフへのオマージュ」は、オーボエパートの音が高く、技術的にとても難しい曲ですが、池田さんの努力と練習によって全く難しく聞えませんから(笑)、ここも味わいどころです。最後のオーリックの三重奏曲は、しゃれっ気に富んだとても楽しい曲です。全編通して本当に心地よい、聴きやすい曲ばかりですから、気軽に演奏を楽しんでほしいと思います。そしてお客様が演奏を心から喜んでくださることが、私の何よりの喜びです。

コンサートへいらっしゃるお客様へメッセージをお願いします。

私たちは普段、オーケストラのなかにいて、木管楽器はステージ中央辺りに位置しますから、お客様との距離は遠く、演奏中の表情も見えづらいと思います。でも今回はお客様の近くにいます! お席が前方なら、息を吸って、息を出して、楽器を響かせている、演奏家の呼吸が感じられるでしょう。ステージは常に3人ですから、休符が少なく、トリオの演奏はキツくて、実は曲間は息がはぁはぁと上がっているのです(笑)。当日は、楽器掃除やリード付け替えの様子も見えるでしょう。そんな臨場感もお楽しみください!

プロフィール

NHK交響楽団 クラリネット首席 松本健司さん

松本健司(まつもとけんじ)
神奈川県出身。国立音楽大学を経てパリ国立高等音楽院へ。レオン・ルブラン特別賞を得て卒業。1997年、第22回トゥーロン国際音楽コンクールにおいて第3位、同年、第53回ジュネーヴ国際音楽コンクール、ディプロマ受賞。2002年NHK交響楽団に入団し、現・首席奏者。「トリオ・サンクァンシュ」としても活躍するほか、複数の音大で後進の指導にあたる。