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港区探訪

一度は訪ねたい 港区のアート&施設

第11回 東京都庭園美術館

東京都庭園美術館 本館 大広間 写真

本館 大広間

何度、訪れても、そのたびに新たな発見がある

門をくぐり、道なりに進むと見えてくる白亜の建物。1933年に建てられた朝香宮(あさかのみや)邸です。建物を、そのまま美術館として使い、1983年に東京都庭園美術館として開館しました。

幾何学模様、左右対称、
繰り返しのデザインを探してみよう

本館はアール・デコとよばれる装飾様式で統一されています。アール・デコとは、直線や幾何学的な模様の装飾です。今回は、1910年代から30年代のヨーロッパで、工芸・建築・絵画・ファッション等すべての分野に波及したアール・デコを、思う存分楽しむことにしましょう。

朝香宮ご夫妻が自邸の建設にあたり、主要な部屋の設計をフランス人芸術家アンリ・ラパンに依頼し、建築は宮内省内匠寮(たくみりょう)が担当しました。国の重要文化財に指定されています。

正面玄関で出迎えてくれるのは、フランスのガラス工芸家ルネ・ラリックが制作したガラスレリーフ扉です。羽を広げた女性たちは、これから羽ばたこうとしているのでしょうか。それとも、空から舞い降りてきたところなのでしょうか。

足元にも目を向けてみましょう。小さな大理石がモザイク状に配されています。天然石の色は意外にカラフルなのですね。単一ではない色味が、玄関をより魅力的に装飾しています。

東京都庭園美術館 ガラスレリーフ扉/本館正面玄関 写真

写真左)ガラスレリーフ扉。素材のガラスは硬質なはずですが、女性は柔らかく温かみがあるように感じます。
写真右)本館 正面玄関

では「大広間」へ進みましょう。この空間の中に左右対称のデザインがあります。ぜひ探してみてください。

次室(つぎのま)には、アンリ・ラパンの「香水塔」があります。上部の照明部分に香水を施し、照明の熱で香りを漂わせたという由来から、後に「香水塔」と呼ばれるようになったそうです。続く大客室と大食堂は、 朝香宮邸の中で最もアール・デコの粋が集められている部屋と言われています。シャンデリアや扉の装飾にも注目してください。

東京都庭園美術館 次室と香水塔 写真

本館 次室と香水塔

随所に職人の技や工夫を感じる

2階は家族と過ごすプライベートな空間です。居室、書斎等、ここで、どのような時間が流れていたのか、興味がわきます。

室内や廊下にさりげなく存在する、ラジエーター(暖房機)のカバーが気になってきました。日本古来の抽象的なモチーフが使われていたり、直線の中に一部分だけ曲線が混じっていたり、遊び心を感じるデザインです。各部屋の照明にもこだわりを感じます。恐れ多いけれど、自分の生活に取り入れられたら、と夢見心地で庭へ向かいます。

東東京都庭園美術館 大客室 写真

大客室。ルネ・ラリック制作のシャンデリア、レイモン・シュブ制作の扉上部の装飾等、幾何学的にデザインされた花がモチーフになっています。

東京都庭園美術館 ラジエーターのカバー 写真

各部屋や廊下に設置してあるラジエーターのカバー。青海波(せいがいは)という扇状の幾何学模様や、香の図(こうのず)という縦と横の線の組み合わせで作られる模様等、それぞれデザインが異なります。

現在、公開されている庭園は、芝庭と日本庭園です。日本庭園は、起伏のある地形を生かして作られているので変化に富み、豊かな自然を感じることができます。池で泳いでいるコイにも癒されます。明るく開放的な茶室もぜひ見学を。のんびり自然を味わってください。

東京都庭園美術館の名の通り、「庭園」と「美術館」、両方の相乗作用で、いつも以上に優雅な気分を味わうことができました。

東京都庭園美術館 庭園 写真

四季折々の木々や草花を楽しめる庭園にはコイが泳ぐ池や茶室もあります。

開催予定の展覧会

3月21日(水)~6月12日(火)

「アール・デコ・リヴァイバル!
建物公開 旧朝香宮邸物語」

「鹿島茂コレクション フランス絵本の世界」

東京都庭園美術館 外観写真

東京都庭園美術館

〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)

【開館時間】
10:00~18:00(入館は17:30まで)
【休館日】
毎月第2・第4水曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
【入館料】
展覧会によって異なる。
【庭園入場料】
一般100円、大学生80円、中・高校生・65歳以上50円
*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
※3月21日(水)より以下の料金になります。
一般200円、大学生160円、中高校生・65歳以上100円

展示替え期間中の3月20日(火)までは庭園のみの公開