港区探訪

カルチャーの発信地・虎ノ門ヒルズで
ダイナミックなパブリックアートを鑑賞

「MINATOシティハーフマラソン2018」の2キロ地点辺りに位置する虎ノ門ヒルズは、レストランやショップ、オフィスやホテルの入った複合施設。国際的なアーティストによるパブリックアートが点在し、日常空間がアートに包まれています。なかでも目をひくのは、オーバル広場に設置されているスペインのアーティスト、ジャウメ・プレンサさんの大型彫刻作品「ルーツ」。8つの言語の文字によってかたどられた膝を抱えて座る像は、文化の多様性を越えた人間の平和的共存を象徴しています。オフィスロビーガラス壁面・天井の、韓国のアーティスト、サン・クワァクさんによる「Untying Space_Toranomon Hills Mori Tower」は、かつて江戸城にあった虎ノ門と、その近辺に流れていた川から着想を得たというダイナミックな作品。作品の前を歩くと、その大きな流れの一部になったような錯覚に陥ります。

写真左）オフィスロビーガラス壁面に設置されたサン・クワァクさん（韓国）による「Untying Space_Toranomon Hills Mori Tower」。
写真右）オフィス受付にあるアートは、ジャン・ワンさん（中国）による「Universe29」。約20メートルの高さから大きな岩を落とし、砕け散った破片をステンレススチールでかたどって制作している。

写真左）1階車寄せロビーにある内海聖史さんの「あたらしい水」。日本の四季が感じられる全長27メートルの油彩画。
写真右）「アンダーズ東京」につながるエレベータ内にあるアートは、和菓子の木型を和紙でかたどって制作された永田哲也さんによる「蟷螂の棲むところ」。

ハーフマラソン折り返し地点の麻布十番で
童謡「赤い靴」の女の子の像と出会う

ハーフマラソンでは、赤羽橋を通り、麻布十番商店街の手前付近が、最初の折り返し地点となります。麻布十番商店街は江戸時代から続く歴史ある商店街。都営地下鉄大江戸線の開通を前に、時代にあった街づくりをと、12カ国のアーティストによる「微笑み」をテーマとしたモニュメントが設置されました。今もそれらの彫刻に加え、商店街のランドマークである彫刻家・佐々木至さんによる「きみちゃん」の像を見ることもできます。童謡「赤い靴」（作詞・野口雨情）に登場する女の子きみちゃんは、幼い頃に母親と離れアメリカ人宣教師チャールズ・ヒュエット夫妻の養女になりますが、童謡の歌詞と異なり、6歳で結核になって、アメリカに渡ることなく9歳で、当時麻布十番にあった鳥居坂教会の孤児院で亡くなったと伝えられています。それを知った一人の洋品店店主の呼びかけから、「きみちゃん」の像は誕生しました。この像には、きみちゃんへの弔いと、「このような不幸な子をつくってはならない。親子の絆を思い出そう」という思いが込められています。

「『きみちゃん』の像が完成したその日、足元に18円が置かれていたのをきっかけに、貯金箱を設置し、子どものためのチャリティー活動をはじめました」と「きみちゃん」の像の設置呼びかけ人で当時洋品店を営んでいた山本仁壽（きみとし）さん。集まった募金は現在総額1,300万円以上になり、ユニセフ等に寄付されている。

麻布十番商店街はそうしたアートだけではなく映画との縁も深く、10月中旬から「東京国際映画祭」の街頭フラッグも掲げられます。映画祭を楽しむための冊子「みなとシネマップ」は9月末から配布予定。虎ノ門・麻布十番で「アート&映画&スポーツ」を満喫するのもいいですね。

麻布十番商店街を彩る彫刻、マーク・ブルースさん（オランダ王国）の「はしごの上で微笑んで」（左）と、カレン・グノフさん（オーストラリア）の「思い出のパッケージ」（右）。作品に表現された「微笑み」の要素を探してみては？