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ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
能楽師・狂言方大蔵流 山本則秀

能楽師・狂言方大蔵流

山本則秀 さん

650年かけて洗練された古典芸能・狂言を観て、聴いて、体験してください!

5月26日に開催される狂言の鑑賞&体験イベント「赤坂塾『狂言の世界へようこそ!』」にご出演の山本則秀さん。狂言の魅力や、初めてでも狂言を楽しく鑑賞する秘訣についてお話をうかがいました。

初心者でも狂言のおもしろさを味わうためのコツを教えてください。

狂言は、650年前の室町時代の話し言葉を使ったセリフ劇です。まずは言葉を聞き取れるかどうかが大きなポイントですね。古い時代の言葉ではありますが、現代語と比べて、意外と変わっていないなあと私は感じます。例えば「しびり」という演目があって、これは「足がしびれる」のしびりです。今回のイベントでは狂言で使われる言葉の解説もしますので、解説を聞いてから狂言をご覧になると、より楽しめるのではないでしょうか。

狂言にはどんな内容の物語が多いのですか?

人々の愚かしい姿をコミカルに描いて「フフフ」と笑わせるのが狂言。狂言は喜劇なんです。例えば先ほどの「しびり」は、主人公が「おつかいに行け」と命令されて、面倒くさいから「足がしびれて行けない」と仮病を使う話。室町時代も現代も、人間って気が乗らない時には仮病を使うんですね(笑)。人間はだれしも「愚かしい行動」をしてしまうもの。狂言はそれを芸能としておもしろく見せて、我が身を振り返ってみようというものです。逆に、狂言と切っても切れない関係にある「能」は悲劇的な内容の演目が多いですね。

能と狂言を「能楽」と呼びますが喜劇の狂言と、悲劇の能がひとくくりなのは不思議です。

能楽は人の一生を描いていると言われます。人生には笑いもあれば悲しみもあるでしょう? 能と狂言は、人間を描くという根本は同じで、描き方が違うだけなんです。昔は日の出とともに能が始まり、間に狂言をはさみながら日の入りとともに終演したそうです。ちなみに能では難解な言葉を使うので、初めてご覧になる方には理解しづらいと思います。そのぶん舞等の動きでアピールする芸能ですから、まずは肌で感じることをおすすめします。

狂言を継承する家柄に生まれた山本さん。デビューは何歳?

4歳頃に稽古を始め、5歳で初舞台を踏みました。以降は11歳頃まで、子方(子役のこと)として本当に数多くの舞台に立ちました。というのも、子方の出てくる演目は小さな子どもがいる時期しか上演できないので、大人たちもやりたい作品がたくさんあったのでしょうね。ただ、私自身は当時のことを全く覚えていないんです。覚えているのは、衣装を汚してしまったり、大事なセリフを忘れてひどく怒られたりしたことくらい。嫌な思い出のほうが覚えているものですね(笑)。

山本さんが属する大蔵流とはどんな流派なのですか?

大蔵流は、江戸幕府の武家式楽を受け継いでいます。根底に武士の心があるため剛直な芸風で、「まずは基礎をしっかりしよう」という考えなのです。私も狂言の基本となる歌舞(謡と舞)の稽古をみっちりと受けてきました。それもあって、今回のイベントの体験タイムではお客様に基本の動きをお伝えしようと思っています。芸の美意識にのっとった究極に美しい立ち方、座り方をステージの上で体験していただければと考えています。

今回のイベントの楽しみどころを教えてください。

今回は、まず「しびり」を見ていただき、体験や解説を通して理解を深めてから、「蝸牛」を見ていただく構成です。どちらの演目も短くて大変わかりやすい作品なので、小さいお子様からお年寄りまで幅広い方々に楽しんでいただけると思います。それに、演目と演目の間に体験タイムを入れるというのは、かなり珍しい形式ですね。先入観なく見る狂言と、理解してから見る狂言、両方を楽しめるお得なイベントです。たくさんの方に足を運んでいただき、狂言を少しでも身近に感じていただけたら嬉しいです。

プロフィール

能楽師・狂言方大蔵流 山本則秀さん

山本則秀(やまもとのりひで)
徳川幕府の武家式楽を継承する大蔵流狂言の家柄・山本東次郎家に、山本則俊の次男として生まれる。4歳より父と伯父・四世山本東次郎に師事。5歳で初舞台。現在は国内外での能楽公演や学校普及公演等幅広く活動。2017年から、わかりやすさ、親しみやすさをモットーとした狂言会「則重・則秀の会」を兄・山本則重とともに主宰。