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ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
原田 弘子さん

藍絞り染め作家

原田 弘子 さん

みんなに愛される「藍」を使って
自分だけの藍絞り染め作品を作りましょう!

2021年1月開催のKissポート講座「~日本を識る、体験する~有松絞りの手ぬぐいと小風呂敷の染め体験」で講師を務める原田弘子さんに、藍染めを始めたきっかけやワークショップの楽しみどころについてうかがいました。

藍絞り染めに興味をもったきっかけを教えてください。

 学生時代に、絞り染めの技術が後継者不足で衰退していることや、伝統的な色合いが人の心を落ち着かせることは学んでいたのですが、自分が絞り染めの伝統手法に関わることになるとは思ってもいませんでした。やがて結婚して愛知県新城市に暮らすようになり、自分が住む土地のことを知りたいと考えました。古い文献を調べると、新城市は昔、藍の染料や、藍染めに使う木もく灰ばいの産地だったことがわかったのです。ただ、昭和40年代にはすでに藍を扱う家は新城市に1軒もありませんでした。そこで、学生時代に学んだ断片的な知識と、土地の歴史としての藍染めが私の中で全てつながって、藍絞り染めについてもっと知りたいと考えました。教員として大学に再び呼び戻された11年間、研究や調査を重ね論文を書き、次第に「藍」が自分のものになってゆきました。

工房を開くことになった経緯は?

 私の子が軽度のアトピーだったため、薬品を使わずに体を守ってあげることができないかと考えていたとき、「武士は藍で染めた鎧下を着ていた」と書かれた文献を目にしました。藍には菌の繁殖を抑えたり、蚊を寄せ付けない効果があるんですね。西部開拓時代のアメリカで人々がインディゴ染めのジーンズを着たのも、蛇を避けるためです。そこで子どものパジャマやタオルを藍染めで染めると、居心地が良いのか、大好きなキャラクターより、子どもも猫も藍染めを選び寝るのです。ならば化学薬品を使わない、藍と木灰だけの藍染めを自分でやろうと考え、自宅に小さな工房を設けました。

先生の大きな布に込めた作品表現はどこから生まれるのでしょうか?

 最初から大きな布を使った作品を作っていました。私の作品はおおよそ横1m、縦3~4mのサイズで、美術館のような広さがなければ飾れない大きさです。おおよそ横1m、縦3~4mのサイズが、藍染めで自分の気持ちや世界観を表現するのに最も適した布の大きさでした。
 いざ工房を始めると同時に、教員として大学に戻り、染色の研究も始めました。私の生き生きとした姿を見て家族もとても喜んでくれました。
 やがて海外の政府や美術学校から、短くて1ヶ月長くて3ヶ月のお招きによる講演会やワークショップに対しても、家族は常に快く今も送り出してくれております。
 自然豊かな新城の風景や暮らし、国内外で感じた景色、建築・美術館や茶室、美しい工藝品など、小さな工房で積み重ねた物語が、私の作品になっています。

海外からも、生徒や、企業オファーが来るそうですね。

 伝統的な藍絞り染めを学びたいと、アメリカをはじめ世界中から多くの方がいらっしゃいます。昨年もメキシコの女性が3ヶ月ほど滞在しました。そうした方々が、のちに美術関係の先生やデザイナーとして活躍されている姿を見ると本当に嬉しいです。海外企業との連携としては、アメリカの楽器メーカーであるフェンダー社から依頼を受け、エレキギターのボディに30本限定で藍染めしました。まったく異なる分野で技を生かせたこと、藍染めを知らない若い方々と感動を共有できたことはとても素晴らしい経験だったと感じています。

ワークショップの内容と楽しみどころを教えてください。

 雪花(せっか)絞りという手法で藍染めを体験していただきます。手順はとても簡単ですが、絶対に誰も同じ柄にはなりませんから、驚くと思いますよ。身のまわりでたくさん使われている身近な色である藍を、この藍染め体験を通して新鮮に感じてもらえればと思います。今回で2回目の開催ですが、前回とはまったく違うことをやりますので、前回参加された方も、そうでない方も、ぜひ足をお運びください!

プロフィール
原田弘子(はらだひろこ)さん

原田弘子(はらだひろこ)さん

1975年、愛知県新城市に工房「藍弘苑(あいこうえん)」を設立。江戸時代以来の伝統の染め・絞りの技法と、国内でも10件に満たないと言われる希少な本藍瓶(ほんあいがめ)を持ち、創作活動を続けている。「国展」入賞受賞、「金沢工芸コンペティション」入選ほか受賞歴多数。個展やワークショップ等、国内外で活動を展開する。個人の芸術活動に加え、次世代育成と文化継承に努めている。
1975年~1986年、愛知大学の教員として、染織の研究に携わる。

藍染めのタオル
藍染めのタオル

フェンダー社から依頼を受けたエレキギター
フェンダー社から依頼を受けた
エレキギター

藍染め体験
藍染め体験にぜひお越しください!