ふれあいコラム

サントリーホールの大舞台は憧れの場所！ 心洗われるレクイエムをお届けします

9月にサントリーホールで行われる「第32回Kissポートクラシックコンサート」に出演されるソプラノ歌手の種谷典子さん。歌との出会いや、コンサートで歌う楽曲についてうかがいました。

—

歌手を目指したきっかけは？

地元の児童合唱団で指導をしていた母に付き添ううちに、いつしか私も合唱団に入っていました。３歳頃だったと思います。それが歌との出会いで、中学や高校でも合唱部に所属し、歌うことをずっと続けてきました。
大学で声楽を学び、大学院では華やかな舞台に憧れてオペラを専攻しました。現在はオペラと歌曲の両方をやっています。自分の声と姿で役柄を表現する「オペラ」、ピアニストと二人三脚で楽曲の世界観を作りあげていく「歌曲」、どちらも大好きです。

—

海外での研修経験をお持ちですが、印象深いエピソードを教えてください。

2016年から1年間、文化庁の在外研修員としてイタリアのミラノで過ごしました。その間、エストニアやロシアなどで行われる複数のコンクールに参加しました。
ロシアに行った際は、ミラノ発の飛行機が5時間も遅延し、モスクワに到着した時はすでに深夜でした。一人でタクシーに乗り、市街地に移動したのですが、言葉が全く分からない国で「このまま知らないところに連れていかれたら……」と、心底怖かったことを覚えています。でも、きちんと目的地まで連れて行ってくれて。こうした経験を経て、多少トラブルがあっても「何とかなる」と思えるようになりました。もともと私はすごく心配性で、石橋をたたいても壊してしまうくらいのタイプなのですが、思い通りに進まなくてもくじけないタフさが身につきました。

—

声のために、普段から気をつけていることはありますか？

疲れた時はシャワーで済ませずにゆっくり湯船に浸かったり、オペラの稽古でヒールの高い靴をはくので寝る前に足に湿布を貼ったりと、日々のケアを大切にしています。
学生時代は「これを食べよう」「あれを飲まなきゃ」と、もっといろいろなことに気を遣っていました。ただ、海外だと調達できないものが多いんです。手に入らなかった時に「歌えない」という状況になるのは避けたいので、ジンクス的なことは考えなくなりましたね。

—

普段の息抜き方法や、趣味はありますか？

いちばん手軽な趣味は料理です！ 冷蔵庫を開ければすぐに始められますから。
稽古が続くと日々の食事がおろそかになりがちなので、稽古場に持って行けるものや、疲れて帰宅してもサッと食べられるようなものを、趣味と実益を兼ねて日頃から作るようにしています。得意料理は……名もない料理が好きなんです（笑）。切り昆布の煮物やひじきの煮物など、おばあちゃんが作りそうな料理が多いですね。
他には、フィットネスジムで体を動かしたり、ピラティスをやったりというのも、最初は体づくりのために始めたのですが、いい気分転換になっています。

—

9月のコンサートで歌う、フォーレのレクイエムについて教えてください。

レクイエムとは、死者の魂を鎮める鎮魂歌です。ヴェルディやモーツァルトなど多くの作曲家がレクイエムを書いていますが、今回歌うのはフォーレが作曲したもの。死の悲しみよりも、肉体が苦しみから解き放たれた先にある希望を描いたという説があります。とても美しく純粋で、ソプラノ歌手にとっては憧れの曲です。
フォーレはこの曲を書いた頃に両親を亡くしたといわれます。曲の背景にあるフォーレ個人の想いに寄り添いながら聴くのも、面白いかもしれません。
今回4年ぶりに舞台に立つという市民コーラス「ミナトシティコーラス」の皆さんとともに、美しい音楽を花開かせたいと思います！