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港区探訪

港区ー祈りの聖地 今昔STORY

第3回 安藤記念教会

安藤記念教会 写真

木の香りが心地よい礼拝堂の内部。堅牢さでも知られる伝統工芸、松本家具の長椅子には、使い込まれた艶があります。

震災や戦争を乗り越え現存する貴重な近代建築

今回ご紹介するのは、100年以上前に建造された安藤記念教会。毎週日曜に行われる礼拝や教会学校には誰でも参加することができます。

ステンドグラスのアーチ窓が美しい
伝統あるプロテスタントの教会

 国際色豊かな元麻布の一角に、瀟洒な石造りの安藤記念教会がたっています。創立したのは、幕末から明治にかけて現代日本の礎を築くため奔走した安藤太郎。英語が堪能だった安藤は、明治維新後に上海やハワイの総領事として活躍しました。ハワイ滞在中、日本からの出稼ぎ移民の困窮した暮らしを改善するため苦心していた安藤は、サンフランシスコから布教のためにやってきた日本人牧師が苦しむ人々を懸命に世話する姿に感銘を受け、文子夫人や領事館の仲間たちとともにキリスト教の洗礼を受けることを決めました。安藤は帰国後も外務省などに勤務しながら敬虔な信仰生活を送り、やがて自宅を寄付して教会を設立。礼拝堂が開かれたのは1917年のことでした。設計したのは銀座教会(関東大震災で焼失)を手がけた建築家、吉武長一。礼拝堂はこれまでに繰り返し改修が行われてきたものの、100年以上経った現在も建築当時の姿をそのまま残しています。その歴史的価値が認められ、2004年に東京都歴史的建造物に選定されました。

ステンドグラス

ハワイで領事館の全員が受洗したことを記念し、ステンドグラスには「布哇日本人開拓伝道者及初回受洗者記念」の文字が。

礼拝堂外観

礼拝堂の外壁は栃木県大谷町で採掘された大谷石を積み上げた組積造(一部は小松石)。

安藤太郎・文子夫妻の肖像画

安藤太郎・文子夫妻の肖像画。お酒好きの安藤をいさめるため、文子夫人が酒樽を壊したことも。その後、安藤は禁酒を誓い、禁酒運動に力を注ぎました。

礼拝堂内部

建築当時の礼拝堂内部。かつては白く塗装されていたことがわかります。

ステンドグラス 画像
ステンドグラス 画像

日本初のステンドグラス作家といわれる小川三知によるステンドグラス。「復活」を意味するユリや、十字架、ダビデの星などがモチーフに。

テーブル

文子夫人が壊した酒樽から作られたテーブル。