ここから本文です。
開催中の企画展「家紋と和菓子のデザイン展」。
とらや 赤坂店に併設されたギャラリー。毎年秋には虎屋に伝わる和菓子の資料を中心に展示する「虎屋文庫資料展」を、それ以外の期間は多彩な企画展を開催しています。
赤坂御用地に面してたたずむ老舗和菓子店「とらや
赤坂店」。その地下1階にある「虎屋
赤坂ギャラリー」では、日本文化や和菓子にまつわる企画展や、講演会などのイベントが行われています。
現在開催されているのは「家紋と和菓子のデザイン展」。日本に古くから伝わる家紋と虎屋に受け継がれてきた和菓子のデザインを見比べてみよう、という試みです。家紋と和菓子はどちらも、子孫繁栄、長寿、富貴といった願いが込められており、また、動植物や自然など身の回りのさまざまなものが意匠化されています。同じモチーフのものを並べてみると、デザインにも多くの共通点があることに気付くはずです。例えば、上の写真にある“鶴”を描いた家紋と和菓子の絵図は、羽の角度や脚の向きなどがよく似ています。違う目的でデザインされているにも関わらず、家紋にも和菓子にも日本ならではの美意識が同じように反映されてきたのですね。「家紋と和菓子のデザイン展」は5月30日(木)まで。夏休み期間には、また違った趣向の企画展を開催予定です。
虎屋は室町時代後期に京都で創業し、後陽成天皇のご在位中(1586-1611)より御所の御用を勤めていました。1869年の東京遷都にともない東京にも進出。明治期の混乱の中、神田、丸の内などを経て、1879年に赤坂に店を開きました。以降、店舗は移転しつつも、赤坂の地にのれんを掲げ続けています。2018年に建て替えが行われた現在の赤坂店は、地下にギャラリー、2階に菓子売場、3階に菓寮(喫茶)を備えています。ギャラリーは、壁一面に職人が一つ一つ切り出した2万ピースのヒノキ材が組み込まれ、木のぬくもりをたっぷりと感じられる空間となっています。実はこの木のピース、とらやの羊羹(ようかん)のように角が丸くなっているのです。ぜひ現地で注目してみてください。
白黒のコントラストが目を引く家紋の隣に、色鮮やかな菓子見本帳の絵図が並び、一部本物の和菓子も展示されています。菓子見本帳とは、虎屋で実際に使われていた商品カタログのこと。昔は菓子を店先に並べるのではなく、注文が入ってから見本帳をもとに菓子を作るしくみでした。
権威のモチーフである牡丹、長寿を象徴する鶴など、家紋と和菓子には共通する題材がたくさん。
(上2点)1936年に発行された家紋の辞典『平安紋鑑』と、大正時代に虎屋で使われていた『形物御菓子見本帖』のレプリカ。めくって楽しめます。
壁面には「鶴の丸」「雲」「クローブ」などユニークな家紋がずらり。「こんな家紋もあるんだ!」という驚きが。
虎屋の浅田ひろみさん。「今回の展覧会はパネルを眺めるだけでも楽しく、外国のお客さまにも人気です!」
「虎」のロゴが存在感を放つ、2階の売場。羊羹や最中など定番商品のほか、赤坂店限定の菓子も販売されています。駐車場を含め全フロアが全面バリアフリーのつくり。
(左)3階の菓寮。目の前に赤坂御用地の緑が広がります。(右上)赤坂店限定の羊羹「千里の風」中形2,160円。2階売場にて販売。(右下)菓寮では5月からかき氷を楽しめます。一番人気は、小倉あんの上に氷をかき、宇治抹茶の蜜をかけた「宇治金時」2,640円(飲み物付き)。
住所:港区赤坂4-9-22
開室時間:9:30~18:00
休館日:毎月6日(12月は除く)、展示替え期間
入室料:無料
アクセス東京メトロ銀座線・丸ノ内線「赤坂見附」駅徒歩7分、
東京メトロ銀座線・半蔵門線・都営大江戸線
「青山一丁目」駅徒歩9分
※売場、菓寮の営業時間は公式HPをご覧ください。
とらや 赤坂店2階の売場の一角に、年季の入った菓子木型(きがた)が展示されています。これらは実際に虎屋で使われていたもの。菓子木型とは、落雁(らくがん)などを作る際に砂糖などの材料を押し固めるための道具で、主に桜の木で作られています。アヤメやモミジといった季節の植物のほか、鶴、亀、鯛など、さまざまな風物が精巧に彫り込まれ、実用品でありながら芸術品ともいえる美しさがあります。創業から約500年の歴史をもつ虎屋は、現在使用中のものを含め約3,000点の木型を所蔵しており、最古の木型には「宝永六年」(1709年)と書かれているそうです。和菓子作りを陰で支える木型ですが、現在では木型を作る職人は全国に数人しかいないといわれ、貴重なものとなりつつあります。
とらや 赤坂店に展示された菓子木型。