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港区探訪

港区‒自慢の宝ものを訪ねて

第30回 赤十字情報プラザ

赤十字情報プラザ企画コーナー

企画展コーナーでは、赤十字と関わりの深い出来事や人物にスポットを当て、時流に合わせた展示が行われます。

世界各地で命を救う赤十字の歩みをたどる

災害救護や献血の受け入れ、病院運営など、命を救う事業を数多く手がける日本赤十字社。豊富な資料でその歴史をひも解く「赤十字情報プラザ」をご紹介します。

パリ万博の展示が評判を呼び
世界に活動を広げた赤十字

赤十字は、今から160年前にスイスで誕生した国際組織です。現在は世界191の国・地域に赤十字社・赤新月社があり、日本赤十字社もその一つ。世界各地の紛争地や災害地に救護員を派遣したり、保健衛生の環境が整っていない地域で伝染病予防の教育をしたりと、さまざまな人道的支援を行っています。
日本赤十字社の本社に併設された「赤十字情報プラザ」では、貴重な資料や映像を見ながら、赤十字の成り立ちや活動について深く知ることができます。常設展には、国際赤十字の創始者アンリー・デュナンによるベストセラー『ソルフェリーノの思い出』初版本や、ナイチンゲールが著した『看護覚え書』初版本などがずらり。解説を読めば、いつの時代も「敵味方の区別なく救いたい」という熱い志を持った人々によって赤十字の活動が支えられてきたことがわかります。また現在は企画展「万博と赤十字~日赤発祥の原点は万博にあり~」を開催中(2025年10月30日(木)まで)。1864年に創設された国際赤十字が、パリ万博やウィーン万博を通じて世界に名を知られるようになり、やがて日本で博愛社(のちの日本赤十字社)の設立に至った歴史を振り返る内容です。
大阪・関西万博の開催を来年に控えた今、万博と赤十字とのつながりについて学ぶのも面白そうですね。事前予約制となりますので、ご来館の際はお忘れなく!

日本赤十字社の活動で実際に使われていた救護用品 大正から昭和初期に、日本赤十字社の活動で実際に使われていた救護用品。

ナイチンゲールが著した看護の参考書『看護覚え書』と、ナイチンゲール (左)1859年にナイチンゲールが著した看護の参考書『看護覚え書』。
(右)ナイチンゲールはイギリス赤十字社の一員として、その創設期を支えました。

救護員の人形、救護看護婦立像 (左)元救護看護婦が手作りした救護員の人形。大正時代にデザインされた制服は今も式典で着用されることも。
(右)前庭に設置された救護看護婦立像も同じ制服を着用。

赤十字国際委員会の研究誌 赤十字国際委員会の研究誌(1873年発行)には、明治初期に岩倉使節団がスイスを訪れ委員会総裁に面会したこと、岩倉具視や伊藤博文が熱心に話を聞いていたことなどが記録されています。拡大部分に「Tomomi Iwakura」の名前が。

入口前のグッズ売り場、広報室の大西智子さん (左)入口前のグッズ売り場。日本赤十字社の公式キャラクター、ハートラちゃんの姿も。
(右)広報室の大西智子さん。「2025年開催の大阪・関西万博に国際赤十字・赤新月運動パビリオンを出展します。ぜひお越しください!」

病院船「博愛丸」の模型 1899年から27年間、病院船として使われ多くの命を救った「博愛丸」の模型。日本赤十字社の創設者 佐野常民の並々ならぬ尽力の末、完成に至った船でした。

アンリー・デュナン著『ソルフェリーノの思い出』 アンリー・デュナン著『ソルフェリーノの思い出』。デュナンはイタリア・ソルフェリーノの戦場で4万人もの死傷者を目にした経験から、赤十字の設立を呼びかけました。

佐野常民の演説を書き留めた筆記原稿 日本赤十字社の前身である博愛社を創設した佐野常民の演説を書き留めた筆記原稿。佐野は「惻隠(そくいん:いたわりの心)」という言葉を大切にしていました。

パリ万博の赤十字パビリオン L'Exposition universellede 1867 :イラスト 佐野も佐賀藩士の一人として派遣されたパリ万博の赤十字パビリオン“L'Exposition universellede 1867 : illustrée”より。

赤十字情報プラザ

住所:港区芝大門1-1-3 日本赤十字社 本社1階
開館時間:10:00~12:30、13:30~16:30(火・水・木のみ開館)
休館日:金・土・日・月、祝日、年末年始、創立記念日(5/1)
入場料: 無料
(要事前予約。まずはお電話にて仮予約を。
TEL 03(3437)7580 /
月~金曜日10:00~17:00 ※祝日を除く)
アクセス: 都営地下鉄三田線「御成門」駅徒歩3分、
都営地下鉄浅草線・大江戸線「大門」駅徒歩5分、
JR「浜松町」駅徒歩7分
WEBサイト:赤十字WEBミュージアム
https://www.jrc.or.jp/webmuseum/
※WEB特別企画「万博と赤十字」も開催中

マップ

赤十字情報プラザ こぼれ話

赤十字のシンボルツリー「イトスギ」

1859年、イタリア統一戦争の激戦地ソルフェリーノで負傷兵たちの悲惨なありさまを目にしたスイスの実業家アンリー・デュナンは、住民や旅人と力を合わせ、救護活動に力を注ぎました。その経験を『ソルフェリーノの思い出』という本に書き、負傷者を敵味方の区別なく救護する中立組織の必要性を訴えます。その努力が実を結び、ジュネーブ条約調印とともに国際赤十字が設立されました。

いわば「赤十字発祥の地」となったソルフェリーノの丘はイトスギの群生地です。そのため、イトスギは赤十字のシンボルツリーとされるようになりました。

アンリー・デュナンによって赤十字思想が提唱されて100周年を迎えた1959年、イタリア赤十字社がソルフェリーノの丘で採取したイトスギの種が、日本赤十字社に贈られました。その種を育てて植樹したイトスギの木が、日本赤十字社本社の庭に今も根付いています。赤十字情報プラザを訪れた際には、天高くそびえるイトスギの姿もぜひご覧ください。

イトスギの木