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港区探訪

港区‒自慢の宝ものを訪ねて

第34回 紅(べに)ミュージアム

紅(べに)ミュージアム

2019年のリニューアルにより、近代以降の化粧文化に関する展示が追加され、さらに見ごたえのある内容に。

紅と化粧の歴史をひもとく資料館

紅花から赤色色素を抽出する伝統の“紅づくり”や、紅と関わりの深い化粧の歴史を、約450点の資料を通して紹介する「紅ミュージアム」をご案内します。

古くから人々の生活を彩ってきた“紅”の魅力にふれてみよう

紅ミュージアムは、江戸時代に創業した紅屋「伊勢半」が運営する「化粧の歴史」に関する資料館です。紅屋とは、紅花の花びらにわずかに含まれる赤色色素を取り出し、口紅や絵具、布の染料などにして販売する店のこと。江戸時代には多くの紅屋が存在しましたが、化学染料が普及した明治期以降は減少の一途をたどり、現在では伊勢半が最後の紅屋となりました。
紅ミュージアムの常設展示は「“紅”を知る」「“化粧”の歩み」という2つのゾーンで構成されています。「“紅”を知る」では、紅花の生産・加工の様子や、紅づくりの工程
などを紹介。「“化粧”の歩み」では、古代に始まり現代に至るまでの日本における化粧の歴史を振り返ります。縄文~古墳時代は魔よけなどのために赤や黒の色を体にあしらっていたこと、平安時代は化粧で身分を表していたこと、そして江戸時代に庶民の間に化粧文化が広がったことなどが、解説パネルや実物資料からよくわかります。
展示室の一角には、3~4か月ごとに内容が替わるテーマ展示のコーナーも。現在のテーマ展示は、伊勢半が1960年代に販売した香水や販促品が並ぶ「Travel theWorld with キスミー香水’」です(5/10(土)まで)。また、6/25(水)からは伊勢半の創業200周年を記念した特別展も開催されます。
来館者は無料で紅の試しづけ体験ができます。一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。

館内の様子
明治時代の伊勢半の店舗を復元した模型

(左)手前に見える白を基調としたゾーンが「“紅”を知る」、奥の黒を基調としたゾーンが「“化粧”の歩み」。
(右)明治時代の伊勢半の店舗を復元した模型には、店舗に併設された工場で紅が製造される様子が再現されています。

化粧道具類
浮世絵

(左)江戸時代後期~明治時代に使われた化粧道具類。紅猪口(べにちょこ)や手鏡、おしろいなどが効率的に収納されています。
(右)鏡台の前でお歯黒をする女性を描いた浮世絵。お歯黒は既婚女性がたしなむ化粧の一つとされましたが、明治初期に禁止令が出され、徐々に廃れていきました。

紅猪口や紅皿
持ち運びできる化粧道具

(左)江戸~明治時代の紅猪口や紅皿。
(右)江戸時代中期には持ち運びできる化粧道具が登場。

化粧用の紅
紅花の花びら

(左)化粧用の紅は猪口などに塗りつけて販売されます。熟練の技で仕上げた高品質な紅は、乾くと玉虫色に!水を含んだ筆で溶くと赤色に変化します。
(右)1つの紅猪口をつくるために約1,000輪の紅花の花びらが必要。

刷り絵具
子ども用のお守り袋

(左)古来、赤い色は災厄を退けると信じられてきました。江戸時代に流行した疱瘡(天然痘)の見舞い品は、刷り絵具に紅が使われています。
(右)江戸~明治時代の赤い子ども用のお守り袋。

香水
紅のミニ実験

(左)現在のテーマ展示で紹介されている香水。
(右)月2回開催される「紅のミニ実験」の様子。紅花から色素を抽出し、和紙で色の変化を見ます。要申込(先着順)、1セット500円。

学芸員 案内してくれた阿部恵美子さん。「日本の化粧の通史を、常設で展示する希少な施設です。ぜひお越しください!」

紅ミュージアム

https://www.isehan-beni.co.jp/museum/
map

住所:港区南青山6-6-20 K’s南青山ビル1階
開館時間:10:00~17:00(最終入館16:30まで)
休館日: 日曜、月曜、7/7(創業記念日)、年末年始(※特別展開催中を含む6/23~9/28は日曜開館、月曜、火曜休館)
入館料: 無料(※特別展は200円、中学生以下無料)
アクセス: 東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道」駅 徒歩13分

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紅(べに)ミュージアム こぼれ話

最後の紅屋「伊勢半」の紅づくり

紅花の花びらに含まれる色素のほとんどは黄色色素で、赤色色素はわずか1%といわれます。どのように赤色色素を取り出しているのでしょうか。
紅づくりの原料となる紅花は、山形県で生産されています。紅花農家は、摘み取った紅花の花びらを水洗いし、よく揉み、丸めて天日干しして「紅餅」を作ります。伊勢半は、この紅餅から赤色色素のみを抽出して精製します。これを「紅づくり」といいます。まず、紅餅を水につけてふやかし、アルカリ水溶液(古くは灰汁(あく))を使用)をかけて圧搾すると、赤色や黄色の色素が溶けだした紅液が絞り出されます。ここに酢など酸性の液を加え、麻の束を浸すと、赤色色素だけが麻に吸着します。これを絞り、再び麻の束を浸して酸性の液を加えて絞り……を繰り返すことで、赤色色素の純度を高めていきます。その後、絞った液に酸性の液を加えてしばらく置くと、赤色色素だけが沈殿します。これを濾しとったものが紅です。紅づくりは、酸とアルカリの化学反応で生み出されているのですね。
布の染料や絵の具として出荷する場合は、紅をそのままビン詰めします。化粧用の紅は、ハケで紅猪口(べにちょこ)に塗り、ムラができないように丁寧になでつけ、自然乾燥させます。
紅の収量や品質は職人の経験や技量に大きく左右されるそうです。そのため紅屋にとって紅づくりの技術は生命線であり、門外不出とされてきました。現在も、伊勢半の紅の製法を知っているのは7代目当主と職人2名のみとのこと。紅ミュージアムの展示室では紅づくりの工程を追った映像が映し出されていますが、館外では決して見ることができない貴重な資料です。現地でご覧になってくださいね。

花
紅づくり 保管

塗りつけ

職人の手により、いくつもの工程を経て、美しい紅が生み出されます。