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自粛生活に戻らないためにも「少し大げさ」な感染防止の行動を

国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授 和田耕治先生

国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授

和田耕治 先生

いま多くの人から関心を集める新型コロナウイルスとの向き合い方について、港区内にキャンパスをもつ国際医療福祉大学の教授であり、政府の感染症対策専門家会議メンバーである和田耕治先生にお話をうかがいました。

●まずは「少し大げさ」にそして少しずつゆるめていく

はじめに、感染状況は今後どのようになっていくと思われますか?

5月25日に緊急事態宣言が解除されました。私たち専門家は、緊急事態宣言とともに自粛が解除されれば再び感染者が増えるだろうという想定のもと、準備を進めています。おそらく流行が落ち着いた状態がずっと続くというよりは、数か月に1回はピンチの局面を迎えることがあるのではないかと思います。

引き続き感染防止をしながら生活する必要があるのですね。

そうです。また自粛生活に戻らないためにも“少し大げさ”な感染予防を毎日の生活に取り入れていただきたいです。

感染防止のために、具体的に私たちはどのような対策をとればよいのでしょうか。

感染防止の基本である「マスクをする」「手洗いをする」「人と人との距離をとる(フィジカルディスタンシング)」の3つは、ぜひ行ってください。また、厚生労働省から「新しい生活様式」として詳しい実践例が公表されています。例えば「食事は対面ではなく横並びで」「買い物では展示品への接触は控えめに」等日常生活で気を付けるポイントが書かれていますので参考にしてください。「新しい生活様式」はまだ感染拡大中だった5月初旬に作成されたものなので、少し厳しく感じるかもしれませんが、まずは実践してみて、流行が収まっていれば少しずつゆるめていくものと考えましょう。緊急事態宣言が出た際「人との接触を8割減らす」という目標がありましたね。もし「新しい生活様式」が浸透すれば、また自粛が必要な状況になっても、8割まで減らす必要はないかもしれません。

●新型コロナウイルスとともに迎える初めての夏。夏場の注意点は?

夏場の感染防止における注意点を教えてください。

暑い季節はマスクを負担に感じますね。熱中症も心配ですから、症状がなく2m以内に人がいない場であればマスクをしなくてもよいのではないでしょうか。ある程度は臨機応変に、地域や人それぞれの状況に合わせて対策してくださいね。それから、夏休みやお盆は人の移動が増える時期です。帰省や旅行は、時期をずらしたり人数を減らしたりして、なるべくみんなが一気に移動することを避けてほしいです。大事なのは、体調が悪いときは「行かない」という決断をすることです。ちなみに夏だからといって新型コロナウイルスが流行しないわけではありません。実際にシンガポール等温暖な国でも感染が広がっています。

自粛が解かれた今は、公園で子どもを遊ばせても感染の心配はありませんか?

緊急事態宣言中は遊具を使用禁止にした公園もありましたが、流行が抑えられている状況ではそこまでしなくてもよいのかなと思います。ただし、感染リスクがゼロになることはありません。ですから子どもたちの体調が悪くないことを確認したうえで、保護者はリスクがあることを忘れずに遊ばせるということになるのではないでしょうか。ちなみに暑くなると子どもはたくさん汗をかきますが、今のところ汗からの感染はないと考えられています。

●収束までには1~2年はかかる見込み それまで感染を大きく広げないことが大切

どうなれば新型コロナウイルスが「収束した」と言えますか。また、そうなるまでにどのくらいの時間がかかりますか?

「収束」の大きな目安は、ワクチンもしくは特効薬ができることです。未来のことは断言できませんが、私を含む多くの専門家は1~2年はかかるだろうと考えています。でも感染が大きく広がる状況でなければ8割減の自粛までは必要ありませんし、友だちと会って話をしたり、買い物に行ったりできます。ただ、人と会うときにはマスクをして、相手との距離を空け、できれば誰と会ったか記録してほしい。そして気を付けてほしいのは、流行が上向きになっているときは控えめにすることです。3月を振り返ればわかるように、流行するときには1週間ほどで急拡大するでしょうから。

新型コロナウイルスは、インフルエンザのように定期的に流行する病気になっていくのでしょうか?

それはまだわかりせん。抗体検査を実施している医療機関もありますが、抗体があれば感染しないのかどうかもわかっていません。これが1年経って来年の春になれば、かなり多くのことがわかってくるはずです。「新しい生活様式」に載っている実践例のなかでも「ここまでしなくていい」というものが出てくるでしょう。それまでは“少し大げさ”に感染防止対策を生活に取り入れていきましょう。(5月25日取材)

●[COLUMN]国際医療福祉大学東京赤坂キャンパス

地域の防災・医療・子育てに貢献する大学キャンパス
国際医療福祉大学は日本初の医療福祉の総合大学。1995年に栃木県大田原市で開学し、2018年に東京赤坂キャンパスが開校しました。東京赤坂キャンパスがたつのは、江戸時代には大岡越前守の屋敷、明治初期からは旧赤坂小学校があった歴史ある地です。ここに大学院本部や、赤坂心理・医療福祉マネジメント学部が置かれています。
地域連携を重視しているのが東京赤坂キャンパスの特徴。学部1年生全員が授業で赤坂の歴史を学ぶほか、地域ボランティア活動にも力を入れています。また、年10回ほど開催する市民公開講座を、港区民は無料で受講することができます。
この春にはキャンパス内に「赤坂山王保育園」がオープン。さらに8月には「赤坂山王メディカルセンター」が開院します。MRIやCT等高度な医療機器を備えた人間ドック・健診施設、内科、整形外科、小児科、リハビリテーションセンターを併設し、地域医療に貢献していくことでしょう。
キャンパスの担当者は「本キャンパスは、災害によって都心の交通がマヒした場合には最大500人の帰宅困難者を3日間受け入れる協定を港区と結んでいます。また新型コロナウイルス感染防止対策にも政府の要請を受け、全学をあげて取り組んでいます。地域の防災拠点としての役割を果たしつつ、さまざまなサービスを通してみなさんに『赤坂にこの大学ができてよかった』と言っていただけるよう努力していきます」と語ります。 一般の人が利用できる施設やサービスも用意されているので、ぜひ活用してみてくださいね。

※学内の施設利用やイベント開催は、新型コロナウイルス感染の状況により休止する場合があります。

和田耕治(わだこうじ)先生

国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授 和田耕治先生

国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授。WHO(世界保健機関)とILO(国際労働機関)のコンサルタント、厚生労働省新型インフルエンザ専門家会議委員を経験したほか、国立国際医療研究センター国際医療協力局医師として活動。専門は公衆衛生、健康危機管理、感染症、疫学。著書に『企業のための新型コロナウイルス対策マニュアル』(東洋経済新報社)等。

国際医療福祉大学の東京赤坂キャンパス。

伝統ある赤坂氷川神社の山車をエントランスに常設展示。

1000人収容の講堂は地域のイベントにも活用されています。

「レストラン オーブ」は落ち着いた雰囲気のレストラン。

2万冊以上の資料・書籍が揃う図書館。