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東海大学高輪教養教育センター准教授
みなと区民大学ジャズ講座講師
田丸智也 先生
東海大学でジャズの歴史や作曲法、コンピュータを使った音楽創作について教えている田丸智也先生。キスポート財団が主催する「みなと区民大学」ではジャズ講座を担当されています。
田丸先生がジャズの魅力にはまったのは、アメリカの大学に通っていた時のこと。「奨学生としてバークリー音楽大学に入学しました。大学のスタジオには学生たちが集い、毎日深夜までジャムセッションしているような、音楽に没頭できる環境がありました。そのなかで私も連日スタジオに通って演奏の腕を磨き、ジャズのルールを体で覚えていったのです」
田丸先生にジャズの魅力についてうかがうと、「ジャズはいろいろなスタイルを許容できる音楽。私は“多様性の音楽”と考えています」と教えてくださいました。
「ジャズはさまざまな人種が暮らすアメリカで生まれました。その社会を映す鏡のような音楽だと言えるのではないでしょうか。一人ひとりの音楽家が個々のスタイルを築き、それをぶつけていく面白さがあります。時代によって演奏方法が変わりますし、使用する楽器にも決まりはありません。例えば電子楽器が登場すれば積極的にとり入れたり、和楽器が使われることもあるのですよ。『面白いからとり入れよう!』ということが受け入れられる音楽なのです」
大学卒業後、帰国した田丸先生は音楽制作会社勤務を経て、東海大学の教壇に立つことに。同時にミュージシャンとしても第一線で活躍を続けています。そして2014年からは社会人講座にも力を入れています。田丸先生が「みなと区民大学のような社会人講座は、私にとって大きな存在」と考えるのは、なぜでしょうか。
「社会人講座では本当にさまざまな方に出会えます。受講者のなかには、ものすごくジャズに詳しい方や、中にはジャズのレコードレーベルで働いていたという方までいらっしゃるのですよ。本来なら出会えないような人たちとつながれる楽しさがあり、私にとって教える場であり、学びの場でもあります」
講義の際、楽器の実演や余談を交えながら、その場の偶然性を講義に取り込んでいくのが田丸先生のスタイル。「ある時、受講者のお一人が、歴史的に貴重な資料を調べて持ってきてくれたことがあります。その日はスペシャルゲストとして、その方にも登壇してもらいました。受講者の方々と一緒に講座を作り上げていくのが私の講義のあり方です」
今年の冬に開催されるみなと区民大学のジャズ講座は、ウィズコロナ時代に対応し、初のオンライン配信となる予定です。次回の講座に向けて、田丸先生は「いま、社会人講座だけでなく大学でも授業はオンラインとなっています。私もオンラインでの授業をいかに面白くできるかということを、日々模索しているところです。今年度の講座では、従来とはひとあじ違った面白さをお伝えできればと考えています」。そして、この状況をジャズと重ね合わせます。「そもそもジャズは多様性の音楽。枠にとらわれないのがジャズの魅力です。ジャズのセッションのように、社会の状況に合わせて講義のやり方も変えていくということですよね」
今年で7年目となる田丸先生のジャズ講座。次回のテーマは「おうちで楽しむ『ジャズのひみつ』」です。オンライン配信という新たな取組みによってジャズ講座がどう進化を遂げるのか、今から楽しみですね。
(財団注) 今年度のジャズ講座の講義日程等、詳細については、9月号でご紹介します。
情報通信の先端、品川・港エリアにたたずむ設備充実のキャンパス
東海大学は文理が融合した幅広い知識と国際性が身につく総合大学。全国に7ヶ所あるキャンパスのうち、情報通信学部が置かれているのが、由緒ある泉岳寺の隣にたつ高輪キャンパスです。
東海大学高輪教学課の末永節子さんは「情報分野の先端企業が集まる品川・港エリアだからこそ、学生たちは感度の高い情報に常に触れることができます」と話します。バーチャルリアリティを体験できる没入型立体映像装置や国内の大学で初めてプロジェクションマッピング設備を導入する等、最新設備が揃えられたキャンパスです。
実は高輪キャンパスの施設は、地域住民も利用可能。例えば学食は一般の人でも利用できますし、教室の一般貸出しも行っています。また、年3回ほど、入場無料の公開セミナーを開催。テーマはバラエティに富んでおり、2019年度は「眼球運動と人の行動分析」「宇宙考古学」といったセミナーが行われました。
さらにキャンパスの一部を学童保育の場として活用し、地域の子育てに貢献しています。ここは小学生が放課後を過ごす場所であり、大学生と子どもたちの交流の場にもなっています。
末永さんは「地域の活動を大切にしているためか、出勤する際に近所の方から“駅伝、優勝おめでとう”なんて声をかけていただくことがあって嬉しいですね。キャンパスで学ぶ学生たちのためにも、大学と地域の協力体制を作っていくことは不可欠だと考えています。これからも地域の皆さんに親しんでいただけるキャンパスをめざしていきますので、ぜひお立ち寄りくださいね」。
※学内の施設利用やイベント開催は、新型コロナウイルス感染症の状況により休止する場合があります。
1999年米国バークリー音楽大学の奨学金試験に合格し同校に入学。2001年ジャズコンポジション科卒業。ジャズピアニスト上原ひろみとは同期。現在、東海大学高輪教養教育センター准教授、同校教養学部芸術学科講師。音楽制作や演奏活動と共に、社会人を対象にしたジャズ教育に力を入れており、東京都港区、世田谷区、豊島区、神奈川県相模原市、千葉県松戸市、茨城県行方市等で毎年ジャズ講座を実施している。