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生まれ育った港区に高齢者のダンスカンパニーをつくりたい!

(社) 日本バレエ・ワークアウト協会代表稲垣領子さん

(社) 日本バレエ・ワークアウト協会代表

稲垣領子 さん

●ニューヨークで出合ったバレエ・エクササイズが人生の転機に

今年7月から開催される「チェアバレエ・エクササイズ」で講師を務める稲垣領子さん。バレエというと幼少期から習って身につけるもの……というイメージがありますが、意外なことに、稲垣さんがバレエを始めたのは大学時代だったそう。「高校でダンス系の部活に所属し、大学に進んでから本格的にダンスのレッスンを開始しました。最初はバレエではなくジャズダンスです。ただ、どんなダンスをやるにしても基礎になるのがバレエなんですね。そこでバレエも始めました」。やがて、ミュージカルの舞台に出たり、紅白歌合戦でバックダンサーを務めたりと、ダンサーとしての実績を積み上げていきました。
ダンスの勉強のためにニューヨークをたびたび訪れていた稲垣さんは、2001年にニューヨーク・シティ・バレエ団による「ニューヨーク・シティ・バレエ・ワークアウト」と出会います。それは、バレエの知識やダンス経験がない人でも気軽に取り組めるように開発されたフィットネス・プログラムでした。稲垣さんはこのワークアウトを日本でも広めたいと考え、ニューヨーク・シティ・バレエ団に交渉して研修と試験を受け、日本人で初めてインストラクター資格を取得しました。「研修はすべて英語でしたから、途中で日本に帰ろうかと思いましたね(笑)。そのなかで、エクササイズの動きや説明のセリフを自分で作って発表するというものがありました。日本語でもいいよ、と言われたのですが、思い切って英語でチャレンジしたところ、皆さんがとても評価してくれて。アメリカらしいですよね。すごく嬉しかったです」。
この頃から稲垣さんは「ダンス経験のない人にバレエの楽しさをどう伝えていくか」を考えるようになりました。

●「楽しく」「美しく」「転ばない」チェアバレエ・エクササイズを開発

以降、バレエの動きを取り入れた、誰でも楽しめるエクササイズのレッスンを中心に活動してきた稲垣さん。2019年にはイスに座ってできる高齢者向けの「チェアバレエ・エクササイズ」を考案しました。
そのきっかけはご自身のリハビリ経験にあったそうです。「3年ほど前、右脚に人工股関節を入れる手術をすることになり、術後はリハビリに取り組みました。そこではご高齢の方もたくさんリハビリに励んでいらっしゃったのですが、『トレーニングしなくちゃ』と思いながらのリハビリはとても大変そうでした。そこで、ダンサーの目線から、もっと楽しく運動できるプログラムを作れないだろうかと考えたのです」。
稲垣さんが重要視したのは「楽しく」、そして「安全に」。まず、楽しい気分で行うために音楽に合わせたプログラムにすると決めました。そして転倒を防ぐため、イスに座ってできる動きを考えました。「リハビリが必要な方や高齢の方の場合、運動したくても『転んでしまうかも』という恐怖があるのです。その恐怖を取り除く必要があると思ったんですよ。そのうえで、美しく見える動きにフォーカスしたのがチェアバレエ・エクササイズです」。
このエクササイズを高齢者の健康維持や介護予防に活かしたいと考えた稲垣さんは、Kissポート財団にプログラムを提案し、昨年3ヶ月間のチェアバレエ・エクササイズが開催されました。コロナ禍ながら、男性2名を含めた12名の方が最後まで参加。最終回に行う発表会が目標となり、参加者のモチベーションアップや日々の生活の活力アップにつながったようです。チェアバレエ・エクササイズは今年は期間を6ヶ月間にのばして開催される予定です。
「皆さんに安心感をもってプログラムに臨んでほしい」という思いから、現在、大学院の博士課程でスポーツや健康についてあらためて学んでいるという稲垣さん。将来の夢は「海外にあるような、高齢者のダンスカンパニーを港区につくる」ことだそうです。「好きなことを始めるのに年齢は関係ありません。合わなかったらやめればいいのですから、興味があることには躊躇せずトライしてみてくださいね!」
※7月から開催予定の「チェアバレエ・エクササイズ」についてはイベント情報よりご覧ください。

●自宅でできる簡単エクササイズ

チェアバレエ・エクササイズのインストラクターである稲垣領子さんに、高齢の方でも安心して取り組めるエクササイズを教えていただきました。お好きな音楽を流しながら楽しく行いましょう!

ー転ばないスクワット(下半身全体の筋肉を鍛えます)

①うしろにイスを置いて立つ(テーブルはなくてもかまいません)。

②イスに座ろうとするイメージで、腰を落とす。イスに座る前に動きを止めます。

③ゆっくりと①の姿勢に戻ります。

POINT
ヒザがつま先より前に出ないように気をつけましょう。

ー足をもち上げるだけの筋力トレーニング(太ももの前側の筋肉(四頭筋)を鍛えます)

①イスに座ります。

②片足のつま先を天井に向け、その足をヒザの高さまで持ち上げます。ゆっくりと足を下したら、もう片方の足も同様に。

POINT
余裕がある方は写真のような手の動きも付けてみましょう。手と足の動きが違うので脳トレになりますよ。

ーバレエの動きと呼吸を使ったエクササイズ(姿勢を整えます)

①イスに座って姿勢を正し、両手の指を向かい合わせます(両腕で大きな円を描くように)。

②息を吸いながら、円の形を崩さずに、ゆっくりと腕をもち上げます。

③息を吐きつつ、腕を横に広げながら下ろし、①の姿勢に戻ります。

POINT
腕を上げた時の位置はこのくらい。腕を顔より前で止めます。

※無理をせず、痛みを感じた場合は運動を中止してください。

稲垣領子(いながき れいこ)さん

稲垣領子(いながき れいこ)さん

港区に生まれ育つ。大学時代にジャズダンスやバレエを始め、ダンサーとして舞台やテレビ等で活躍。2002年、ニューヨーク・シティ・バレエ団による「ニューヨーク・シティ・バレエ・ワークアウト」を日本に初めて導入するとともに、同ワークアウト公認のマスター・ティーチャー・トレーナー資格を日本人で唯一取得。2011年、同ワークアウトの名称終了に伴い、その継承・普及・発展のために一般社団法人日本バレエ・ワークアウト協会を設立。2019年よりイスに座ってできる「チェアバレエ・エクササイズ®」をスタート。筑波大学大学院スポーツ健康システム・マネジメント専攻にて体育学修士取得。南カリフォルニア大学ジェロントロジー学科通信教育課程修了。現在は筑波大学大学院スポーツウエルネス学学位プログラム(博士後期課程)在学中。