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港区の歴史や文化を未来に伝承する
港区語り部の会
「港区語り部の会」(以下、語り部の会)が結成されたのは2001年。当初は、忘れられつつある港区の生活文化や昔の遊びについて勉強することを目的に、港区立生涯学習センター(以下、ばるーん)に集まっていました。しだいに、当時の暮らしが子どもたちに受け継がれるよう、学校まで足を運ぶようになりました。そこで語ることは、語り部の会のメンバーが子どもたちと同じ年代だった頃に使っていた、昔の生活道具や遊びについてです。
「数十年前は家に洗濯機などなく、洗濯板を使って服を洗っていました。出張活動ではまず私たちが見本を示して、それから子どもたちにも実際に手で洗濯してもらいます」。
七輪を持ち込んで炭火をおこし、餅を焼いたときは子どもたちが大喜びしたそうです。
語り部の会の皆さんが子ども時代に親しんだ、お手玉やベーゴマ、あやとりなどの遊びを紹介する際は「“教える”というより、私たちも一緒になって遊びます。最近流行しているゲームとは違い、手や体を動かして楽しむ昔の遊びは、子どもたちにとって古くさいというよりも新鮮に感じられるようで、どれも人気がありますよ」。
語り部の会のメンバーの多くは、若い頃に戦争を経験してきました。だからこそ「二度と戦争をしてはいけない」という確固たる想いがあり、近年は周囲のリクエストに応え、自らの戦争体験を語る活動が増えています。
「中学生の頃、空襲で家のまわりがすべて丸焼けになりました。空襲警報が鳴っても不思議と怖くなく、怒りの感情だけがありましたね」「疎開先ではいつもお腹を空かせていて、セミやトンボまで食べました。どうしても甘いものが食べたくて歯みがき粉を食べたこともあります。そんな話をすると、今の子どもたちにはビックリされますよ」と、次々にリアルな体験談が飛び出します。メンバーのひとりは「戦争中のできごとは、あまりにもみじめで、自分の家族には話したことがありません。語り部の会に参加して、ようやく人に話すことができました」と語ってくださいました。
コロナ禍のため出張活動は制限されていますが、港区平和青年団(平和について学ぶ高校生有志グループ)との交流がメンバーの励みにもなっています。
戦時中の様子を子どもたちにもわかりやすく伝えるため、十数年前に「みよちゃんの集団疎開」という紙芝居を制作。ストーリーを考案したのも絵を描いたのも、語り部の会の皆さんです。紙芝居を披露すると、小学生は興味津々に話を聞いてくれるそうです。
「出張活動のあと、子どもたちから感想文をいただくことがあります。みんなそれぞれの言葉で感じたことを書いてくれて、とてもうれしいです。コロナ禍が落ち着いたら、もっといろいろなところで話をしたいですね」。
現在は、港区で生まれ育った70代~90代の9名が在籍しています。月2回(第2・第4水曜日)、ばるーんに集まり「みなと新橋
今・むかし新聞」の発行(年1回)に向けて語り合っています。会員募集中ですので、興味がある方はぜひご参加ください。
今年から語り部の会のメンバーが作成した新聞を公開しています。プロフィール下の「詳細はこちら」からぜひご覧ください!
港区を中心とした歴史・文化・風土・生活習慣を次世代に伝えることを目的として、2001年に結成。小学生や港区平和青年団など若い世代の人々に向け、昔の生活道具や遊び、自らの戦争体験などを語り継ぐ活動を行っている。現在は9名が在籍。写真はお話をうかがった会員の皆さん。左から武 恒雄さん、髙橋雅雄さん、井上 繁さん、中嶋房子さん、池田林太郎さん、佐藤すみ江さん。