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ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
落語家・三遊亭究斗(さんゆうていきゅうと)さん

落語家

三遊亭 究斗 さん

語りと歌で笑いと感動が倍増 ミュージカル落語にいらっしゃい!

落語とミュージカルを融合させたミュージカル落語。劇団四季出身の落語家・三遊亭究斗さんが創案した、これまでにない舞台です。その究斗さんが4月17日(金)・18日(土)、赤坂区民センター「勝手に、キュートに、ミュージカル落語まつり!」に登場。2014年に真打になってから初の連日3公演ということで、その内容を究斗さんに伺いました。

ミュージカル落語とはどんなものですか?

弟弟子が言ったんですけど「ミュージカル落語って、イチゴ大福ですね。イチゴと大福って、あわないなぁと思っても、食べたらウマイじゃん」「お前、ウマイこというね」って。楽しい笑いだけでなく、音楽や歌の持つ強さとタメになるストーリーが相まって感動する。そんな作品ですねぇ。
僕が最初に作ったミュージカル落語は、『レ・ミゼラブル』の登場人物が題材の「テナルディエ」。このテナルディエって男、根っからの悪党です。でもどんな悪党も、生まれつきの悪党なんていないじゃないですか。どういう人生をたどったらこうなるのかってストーリーを、歌と落語でやってみた。そしたらすごく反応が良くて。
それで続けて、古典落語やミュージカル、ベートーヴェンやリストとショパン、エディット・ピアフなんかの人物伝まで題材に、いろんな作品を作ってきまして、今年で12年目。全部で31作品になりました。

作品もスタイルもさまざまですね。

歌うだけでなく踊ることもありますし、音楽はピアノの生演奏が基本で、ドラムやチェロが入ることも。でも、共通する要素がいくつかあって。たとえばシリアスな『オペラ座の怪人』に笑うところはないですが、僕のは笑える。どんな話にも絶対、笑いがなければと思ってます。で、笑いだけでもダメ。笑いながら感動できる物語ですね。感動って大切で、心が感じて動くことで人は変わることができる。感動が生きる活力になるんですね。だから僕のミュージカル落語には、歌と笑いと感動が絶対入ってますね。

では、4月17日(金)・18日(土)の連日3公演について教えてください。

17日の夜の部は、新作『アラジンと魔法のランプ』。『千夜一夜物語』だけでなく、いろんな話やミュージカルをミックスしました。この日のゲストは、腹話術のいっこく堂さん。前座時代にお会いして、いつかゲストに来て欲しいと思っていたので僕もワクワクです。
18日昼の部は、お子さんに見ていただきたい『背中に輝く大きな星』。背中に大きなアザのある少年の物語ですが、4歳になるうちの子どもの背中にアザがあったのがきっかけで作ったもの。楽しく笑って聞いてるうちに、「いじめはダメ」、「命や友達を大切に」といったことが伝わる作品です。夜の部は『ウエストサイド物語』。ビッグゲストに、『笑点』でもおなじみの三遊亭円楽師匠が来てくださいます。

真打になって初めての連続公演ということで、とても楽しみです。

劇団四季で10年間、エンターテインメントについて教わり、小朝師匠に古典落語のすごさを教わり、円丈師匠には新作落語で僕がこれから作っていかなければいけないものを教わった。こうしたすごい流れがあって、ここまでやって来られました。

ところで、劇団四季に入られる前から、ミュージカルや歌をやっていらしたのですか?

いやぁ、やってなかったですね。もとは役者志望で、劇団俳小(俳優小劇場)っていう老舗の新劇の養成所に入ってたんですけど、香川県高松の実家に帰らなくちゃならなくなって。親父の土木建築業の手伝いしながら悶々としている時に、友達が「倉敷にものすごくよく当たる霊感占い師がいるよ」って言うんで。みんなで行ったんですよ。
で、「親父の仕事継いだほうがいいですかねー」って聞いたら「あなた芸能界、向いてるわよ。大きい集団がいいから劇団四季」って、いきなり名指しだったんですよ。えー?マジ?劇団四季?驚きますよね。でも、僕、良いと言われると素直に信用するんですね。で、半年後にオーディション受けて…見事に落選いたしました。
それで、悔しかったんですね。それから四季のミュージカルを見始めました。当時は市村正親さんとかメンバーもアンサンブルもすごくってね。それで本当に入りたい、と思ったんですよ。で、高松で踊りと歌の先生探して、昼間は親父の仕事。2トントラック乗って工事で穴掘りしながら、夜はレッスン通い。そしたら翌年、すごい倍率だったのに合格しちゃったんですよ。
僕が入団した1988年は『オペラ座の怪人』の初演の頃。四季の人気がグアーッと盛り上がっていった時期。僕も順調にやってたんですが、10年たって…結局、9年半でしたけど、30歳すぎるといろいろ考えはじめるもんですよね。自分の人生、これでいいのか?って。

それで落語家に転職されたんですね。

なんでミュージカル役者から落語家?って思いますよね。でも僕、四季でもわりと笑わせる楽しい役柄が多かったし、ミュージカルだと、どうしてもセリフが少ないでしょ。もっとしゃべりたいなというのがあって。で、いろんな芸能を見ていたら、笑いと語りで、落語がピタッとハマったんですよ。
これまたちょうど、四季の『エビータ』という舞台で、九州の博多で三か月のロングラン公演をやってた時なんですけどね。中洲川端にある上川端商店街、両側にやたら仏壇屋がいっぱい並んでて、「変わったことありませんか?」「ぶつだん変わったことありませんよー」なんて話しているとこですけどね、毎日通っていると、そこにまた占いって看板があったんですよ。で、「落語家に転職考えてるんですけど」って見てもらったら、「うーぬ、おぬしっ、向いとるっ!今なれば、ずーっと道が開けとる」と。僕、御存知のように、良いと言われると素直に信用するんですね。師匠を探さないとって思って。それで、福岡の情報誌を読んで、ちょうど九州で高座をやってた小朝師匠を見に行って「あ、この人だ」と。翌日、弟子入りをお願いしたんです。
でもね、落語家になって初めてわかったんですけど、前座修行っていうのが大変で。当時の僕は34歳。10歳以上、年下の先輩ばっかりでね。最初は、相当キツかったですねー。
とはいえ、前座でも高座にあがって、たった一人で15分、しゃべってウケると「ものすごーくキモチいい!」。役者は一人芝居以外、15分しゃべり続けってないですからねー。  それになんていうか、落語の芸を勉強したかったんですね。上手い噺家って所作のリアリティが見事じゃないですか。お蕎麦食べたり、お酒飲んだり、人物描写が本当に見事。しかも、一人で何役もこなす。それをやりたかったんでしょうね。それで小朝師匠のとこに3年いたんですが、辞めることになっちゃって、次に引き受けてくれたのが今の三遊亭円丈師匠です。ありがたいことですよ。
円丈師匠のとこで二ツ目になる前には、帝国劇場のミュージカル『レ・ミゼラブル』のテナルディエ役もやりました。実はね、劇団四季の時代から「この役やりたいなー」と思ってて、ちょうどキャスト交代のオーディションがあったので、受けたら合格しちゃって。帝国劇場の舞台にも立たせてもらったんですけど、実はこれが「ミュージカル落語」のきっかけになってるんですよ。
やっぱり芸人というのは、同じ色じゃダメでね。古典落語やる人、新作落語やる人、いろいろいますけど、だったら僕はなにがいいかなぁと自分の来た道を考えてたら「噺の中に歌や音楽が入ってたら楽しいんじゃないか」と思いついた。ミュージカルやってたんだから「ミュージカル落語」。どうだ?いいじゃんって。
それで公演が終わった2004年、前に言った『レ・ミゼラブル』の「テナルディエ」をミュージカル落語にしたわけです。役柄を作りあげる劇団四季の方法論に0(ゼロ)幕っていうのがあって。1幕、2幕の前の0幕なんですが、どういう人生をたどったらこうなるのか、それを歌と笑いで作ったのが「ミュージカル落語」ってことです。

2009年頃からは、エデュテインメント、娯楽でありながら教育要素のある作品を作ってらっしゃいますね。

もともと、カフェや電車で隣の席の人が話していることを聞くのが好きでね。この人、どんな仕事してて、どんな家族がいるんだろうって想像したりしてるんです。それがある時、あるカフェで噺を作ったり覚えたりしていると、隣のテーブルのご婦人が話していたふたつの言葉が耳に飛び込んできたんです。それが「彼はやりとげたのよ」と「一口弁当」って言葉。それを聞いた瞬間、ダダダダーとストーリーが浮かんできて、あっと言う間にできたのが『一口弁当』という作品。家が貧乏な少年がいてね、貧乏なのでお弁当も持っていけなくていじめられているんですけど、あるおじいさんと知り合って、考え方や生き方をチェンジして、いじめを克服していくってストーリーなんです。実は僕も、小学校5年ぐらいの時、いじめられた経験があったんですよ。だから、楽しいだけじゃなく教育的な要素のある子ども向け作品を作るようになったんですね。いじめられても気持ちを変えて、楽しくしていれば、考え方ひとつで人生変わるよ、と。
やってみたらこれがすごいパワーがあって。口コミでどんどん広がって、たくさんの小学校でやらせていただいたり、テレビで紹介されるようになりました。
聞いてくれた子どもたちからは目からウロコの感想文が送られてきて、それを読むたび、今年52歳になりますけど「50にして天命を知る」って感じているんですよ。経済も大切かもしれないけど、やっぱり教育が一番じゃん、て。この子たちがこれからの日本を担っていくんだから。そんな風に、ミュージカル落語で日本の教育や心が変えられたら。そんな使命や考えを持ってやっているんです。
というわけで、ミュージカル落語というのは僕だけのオンリーワンなもの。ほかでは見られないミュージカル落語、ぜひ皆さん、いらしてください。

プロフィール

三遊亭究斗(さんゆうていきゅうと)さん

三遊亭 究斗(さんゆうていきゅうと)
1963年香川県生まれ。1988年劇団四季入団、97年春風亭小朝に入門し落語家に転身、2001年三遊亭円丈門下に移籍。03年~04年ミュージカル「レ・ミゼラブル」にテナルディエ役で出演。その後、ミュージカル落語を創作。14年真打に昇進し「究斗」となる。
三遊亭究斗OFFICIAL SITE http://www.aro-world.net/