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ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
ピアニスト 石田 啓明(いしだ ひろあき)さん

ピアニスト

石田 啓明 さん

ドイツ留学を前に、シューマンの「ピアノ協奏曲」に思いを込めて

7月30日にサントリーホールで開催される『フレッシュ名曲コンサート 第24回Kissポートクラシックコンサート』は、第一部がシューマンの「ピアノ協奏曲」、第二部はオペラ「万葉集~二上挽歌編」という構成です。この第一部で演奏するピアニストが石田啓明さん。2012年、まだ高校在学中の『第21回 Kissポートクラシックコンサート』での演奏を聴いた方もいらっしゃるでしょう。

その後、桐朋学園大学に進学され、大学生活はいかがですか?

僕が進学したのは、ソリスト・ディプロマ・コース。ソリストを目指す人向けで、演奏活動と両立できるよう配慮がなされている特殊なコースです。一番厳しいのが実技試験で、修了するには、リサイタル試験を3回とコンチェルト試験を2回受けて合格しなければなりません。
鍵盤音楽史や音楽理論といった必須科目もあります。1年目で全部取ろうと思ったのですがレポートが多くて落としてしまい、翌年も落としちゃって(笑)。

それぐらい、演奏活動の比重が大きくなったということですね。

高校時代と違って、演奏活動に集中できるようになりました。自分で自由に使える時間が増えたので、自分のペースで練習できるところが、すごく良かったです。
それに、学校の練習室や図書館が使えるのもとても助かっています。図書館の所蔵は何万点もあって、楽譜を借りたりCDを聴いたり、オペラのビデオもよく見ます。練習室は、仙川キャンパスの校舎が朝5時から使えます。ただ、電車だと始発でも間に合わないので、免許を取って、早起きして車で行って練習しています。

6歳の時からピアノをやってきて、良かったと思うのはどんな時ですか?

舞台で、全力を出し切れた時ですね。曲に対する思いや、こみ上げてくるものを表現できた時が、すごく嬉しいです。
演奏中は、本当に我を忘れて…という感じで、性格も普段の自分と変わってしまっているかもしれません。別人になっている気がします。よく、ほかの演奏家の方から「今日の夕飯はなんだろう」とか考えながら演奏している、等と聞くことがありますが、自分の場合は絶対にありえないです。演奏に没頭しているというか、表現したいイメージに向かって一直線という感じです。
毎回ではないですが、そうした演奏ができると、終わったあと、楽屋でひとり泣いていることもあります。

今度のコンサートも、そうした演奏を聴かせていただけそうですね。

僕が演奏するのはシューマンの「ピアノ協奏曲」。もともと、イタリアの世界的ピアニストであるマウリツィオ・ポリーニが好きで、彼の録音を聴いて、なんて良い曲だろうと思っていました。本当に大好きで、いつか弾きたいと願っていた曲なので、機会をいただけてとても感謝しています。

演奏されるシューマンの「ピアノ協奏曲」の魅力と、お好きな理由を教えていただけますか?

シューマンは、妻でピアニストだったクララに対する思いが本当に強い人で、ものすごく一途。そこにすごく惹かれます。この曲も、主題はクララの名前をそのまま音にしたものなんです。それくらい強い思いが込められた曲なので、それを表現できたら…と思います。第3楽章は華やかで明るいですが、全体的にほの暗いものが漂っていて、とても深いところも好きなポイントですね。僕も一途なタイプかもしれないので、演奏していてすごく心に沁み入る曲なんです。

それにしても、大学生活と演奏活動の兼ね合いが大変そうですね。

演奏会は、平均すると月1回くらいですね。時期が固まっていることが多いので、本番が増えると忙しくなります。
大学の試験はあらかじめ日程が設定されていて、受ける10日くらい前までに受験票を提出するのですが、出さないとそのまま過ぎていきます。ですので、試験に関しては、その時期に本番があったらついでに受けることにしています。そのとき取り組んでいた曲で、本番の仕上げとして試験を受ける感じです。

試験と演奏会をうまく両立できるよう工夫しているんですね。大学の友達とは、遊んだりしますか?

仙川は美味しい食べ物屋さんが多いので、よく食事に一緒に行ったりします。先輩との交流も多くて、色々教えていただいたり相談に乗っていただいたりしています。

今後のご予定は?

今年中にドイツ留学する予定で、準備をしています。

そうすると、石田さんの演奏は今年のうちにたっぷり聴いておきたいですね。コンサートが本当に楽しみです。

プロフィール

石田 啓明(いしだ ひろあき)さん

石田 啓明(いしだひろあき)
1994年生まれ。桐朋学園大学音楽学部ソリスト・ディプロマ・コース在学中。6歳からピアノを始め、2011年 第9回東京音楽コンクール第1位、聴衆賞受賞、2014年第83回日本音楽コンクール第1位等受賞多数。東響、東京フィル、日本フィル等と共演。