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ふれあいコラム

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トランペット奏者 関山 幸弘(せきやま  ゆきひろ)さん

トランペット奏者

関山 幸弘 さん

華麗な金管五重奏を楽しむバレンタイン・コンサート

2月14日に高輪区民センターで開催される『NHK交響楽団メンバーによるバレンタイン・コンサート』。今回は、高らかに鳴り響く金管五重奏です。コンサートやトランペットの魅力について、長年N響首席トランペット奏者として活躍された関山幸弘さんに伺いました。

金管五重奏とは、どんな楽器編成ですか?

トランペット2本、ホルン、トロンボーン、チューバ各1本の編成で、金管楽器の演奏会では、最もポピュラーなスタイルです。5人全員が主役でそれぞれの見せ場もありますが、一番高い音を担当するトランペットがリーダーシップをとり、迫力ある演奏を楽しめるスタイルです。
演奏曲も、多ジャンルで幅広いですよ。クラシック、オペラのアリア、ジャズ、映画音楽と多彩です。

たしかにプログラムは、『ゴッドファーザー 愛のテーマ』、『マイ・ファニー・バレンタイン』、『トランペット・ボランタリー』、『じょんがららっぱ』等と幅広いですね。

バレンタイン・コンサートということで、愛にちなんだ曲を検討しました。『愛のテーマ』はニーノ・ロータの代表作。ジャズナンバーの『マイ・ファニー・バレンタイン』もステキな曲です。『トランペット・ボランタリー』はイギリスの古い曲で、英国王室の結婚式で演奏されたりする華やかな曲。『じょんがららっぱ』は、他では聴けない曲です。僕の生まれが青森県弘前市、津軽地方なので、津軽三味線をイメージして作ってもらったのです。

思い出に残るバレンタイン・コンサートになりそうです。関山さんのバレンタインの思い出を教えてください。

初めてバレンタインのチョコレートをもらったのは、うちの奥さんからです(笑)。大学時代、付き合ってすぐの頃で、甘党だったので嬉しかったですが、当時はまだあまりピンとこなくて。チョコレートメーカーの戦略かな、って(笑)。そんな感じでしたね。

トランペットを始めたきっかけは?

金管楽器をやる人のほとんどがそうだと思いますが、中学・高校の吹奏楽部です。もともと、母がジャズのハリー・ジェイムスや日野皓正が好きで、僕もトランペットが一番カッコ良いと思っていたんですよ。それで中1の時、吹奏楽部に入ったのですが、雰囲気的にチューバをやらされそうでね。親に泣きついて、安いトランペットを買ってもらいました。先輩たちも、個人で楽器を持っているならそれをやれ、と。

戦略勝ちですね(笑)。それからずっと憧れの楽器を続けてきたわけですね。トランペットは音が大きいので、練習場所に苦労すると聞きましたが…。

そういう意味では、場所を選ぶ楽器かもしれませんね。昔は、NHKホールの横の代々木公園で、誰かが練習している音が響いていたりしましたね。でも今は良いところがありますから。僕も時々利用しますが、カラオケボックスなら、気兼ねなく練習できます。音大生やアマチュアの方も、利用されてる方が多いと思いますよ。便利になりましたね。

武蔵野音楽大学卒業後、留学されて、帰国後はずっとNHK交響楽団で活躍されてきたわけですね。最近、泉岳寺のN響の建物が新しく改修されましたね。

きれいになりましたね。約50年ずっと使っていたので新しくなって良かったと思いますよ。外観は変わりませんが、中は迷うぐらい変わりました。
伊皿子坂のN響に通い始めた頃は、その向かい側に高輪ホテルがあって、そこでお昼ごはんを食べるのが楽しみでしたね。あそこの中華は本当に美味しかったので、なくなった時はショックでした。N響に通う楽しみの、大きなひとつがなくなったから(笑)。そんな思い出もありますね。
よく伊皿子坂では、たぶん坂の上のマンションにお住まいの芸能人が、歩いて下りてくるのを見かけたりもしました。以前は車で通っていたのですが、最近は電車に乗るようにしていて、駅の改札を出て階段を上がって坂を上っていくのが地獄だったんだけど、泉岳寺の駅にエレベーターがついた時は、嬉しかったですね(笑)。

今年、還暦を迎えられ、N響を定年退職されたのですね。

定年になってから、演奏会が楽しくてしょうがないんですよ。N響の時も楽しかったですが、今は自分の演奏を楽しめるようになってきました。現役時代は、やはりN響という看板の大きさもあるし、テレビ放送もあって、義務感やプレッシャーのほうが強く、素直に楽しむところまではいかなかったのでしょう。なにしろトランペットが間違えると、5歳の子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで全員にわかってしまうから。ほかの楽器だって間違えることはあると思いますが、トランペットは良い意味でも悪い意味でも目立つから。そこがツライところでしたね。そうしたところから自由になったのかもしれないですね。

現役時代の思い出は、どんなことがありますか?

金管五重奏をやっていたおかげで、日本各地、普段は行けないような場所にもずいぶん行かせてもらいました。バブルの頃はイベントがたくさんあって、仕事のほうが溢れている時代でしたから。年間、何十回も金管五重奏の演奏会をやりましたよ。
オーケストラだと大きな会場のある主要都市しか行きませんが、金管五重奏は5人ですから、機動力が違います。日本のほとんどの島も制覇しました。たとえば、隠岐島、種子島、東京都の小笠原諸島、沖永良部島や沖縄の離島にも行きました。種子島は湿気がすごかったんですが、金管楽器は弦楽器と違って環境に影響されにくい。水洗いもできるし、雨の中でも吹けますから。

タフな楽器なんですね。

凹んだ時は、カンカンカンと叩いて直してしまいます(笑)。ただ金属なので、弦楽器等に比べると寿命は短いですね。大事に使えば一生使えますけど、吹くと振動しますから、金属疲労が起きるといわれています。腐食もします。だから、古い楽器は骨董的な価値はあっても、楽器としての価値や音色は、新しいもののほうが良いと思いますよ。
演奏術技的には、僕らが学んだ若い頃に比べると、日本はこの数十年で相当レベルアップしています。ただ最近は、技術にばかり興味が行きがちで。本質は音楽ですから、あくまで技術は音楽を表現するための道具という発想を、若い演奏者たちにも、持ってもらいたいと思っています。

トランペットの音の魅力は?

なんといっても輝かしくて、気持ちを高揚させることですね。マーチや野球の応援等もそうですが、先頭で旗を振り、元気のない人に元気を届け、明日からまたがんばろうと思ってもらえるような。演奏者も、清水の舞台から飛び下りる気分で、思い切って前向きに演奏します。また、そうした力強さだけでなく、ジャズ等哀愁を感じさせる曲も多いように、甘く切ない音も出せる楽器です。

バレンタインの愛の告白に、勇気をもらえそうなコンサートですね。

N響の金管現役ベストメンバーが揃い、文句なしに楽しめる金管五重奏ですから、圧倒的な迫力と金管の音色の素晴らしさを、大人から子どもまで楽しんでいただけると思います。ぜひ皆さん、いらしてください。

プロフィール

関山 幸弘(せきやま  ゆきひろ)さん

関山 幸弘(せきやま ゆきひろ)
1955年青森県生まれ。
武蔵野音楽大学卒業後、1982年文化庁在外研修員として米国ノースウェスタン大学留学。帰国と同時にNHK交響楽団に入団し、翌年から32年間、首席トランペット奏者として活躍。2003年NHK大河ドラマ『武蔵』のソロ演奏で好評を博した。2015年7月、定年&還暦記念コンサートを開催。