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ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
ズーラシアンブラスの生みの親 大塚治之さん

ズーラシアンブラスの生みの親

大塚 治之 さん

親子のコミュニケーションを育むコンサートに!

11月18日に開催される「ふれあい親子コンサート」。今回はオカピやホッキョクグマが演奏するオーケストラ「ズーラシアンブラス」が出演します。その仕掛人である大塚治之さんにお話を伺いました。

動物の格好をしたオーケストラなのですね。発足のきっかけを教えてください。

娘が小さかった頃、未就学児が鑑賞できるクラシックコンサートはほとんどなかったのです。静かに鑑賞することが前提のクラシック音楽ですので、騒いでしまうかもしれない子どもが入れないのは理解できるのですが、日本に一つぐらい未就学児でも鑑賞できるコンサートがあっても良いのではないかと思ったことが、動物楽団発足のモチベーションになりました。

17年間も活動を続けていらっしゃるのですね。ご苦労も多かったのではないでしょうか。

そうですね。辛かったこともあったでしょうか。親子のためのクラシックコンサート「音楽の絵本」をスタートさせた当初、動物の格好をして演奏するのだからどうせ子どもだましだろうとか、着ぐるみでは奏者の汗も見えないとか、聴いたことも観たこともないのに批判ばかりで、制作意図や内容が全く理解されなかったということもありましたね。
でもうれしいことのほうが断然多いです。日々事務所に届く出演者の似顔絵やファンレターにはいつも癒されていますし、毎回コンサートに足を運んでくださるお客様のお顔を拝見するときも心がほっこりします。中でも心に残っているのは、末期癌のお母さんが、毎年、小学生のお子さんとコンサートを鑑賞することを目標に治療しているというお手紙をいただいたことです。そのお子さんが「お守りだよ」と動物たちに渡した、きれいなアクリルの石を、演奏者も何とか回復してくださるようにと燕尾服のポケットに忍ばせ演奏したものでした。

今後の目標を教えてください。

人間のオーケストラではやりにくい、さまざまな音楽シーンを創出していくことです。少しでも多くの方にクラシック音楽に興味を持っていただきたい。そして、ぜひ人間のオーケストラを鑑賞してほしい。日本には優秀なオーケストラが沢山あります。身近なオーケストラを是非聴いていただきたいですね。
具体的には、小さい編成でも良いので、日本各地をまわって生の演奏を届けることと、来場者が興奮するような音楽イベントを季節ごとに開催しようと思っています。現在、夏の吹奏楽とオーケストラ、盆踊りも行う夏祭り、そして年末にはジルベスター音楽祭、年始にはニューイヤーコンサートを行っていますが、春と秋にも大きな音楽イベントを計画したいと考えています。来年の秋には芸術祭を実施する予定です。新キャラクターについてはいろいろな計画がありますが、まだ秘密です。楽しみに発表をお待ちください。

一番思い入れのある動物は何でしょうか。

すべての動物たちに等しく思い入れがありますが、あえて言うなら、うさぎの弦楽四重奏団「弦うさぎ(つるうさぎ)」。真っ先に制作した動物だからです。「弦うさぎ」がいなければ「ズーラシアンブラス」も誕生していなかったと思います。
弦楽器を動物が演奏するため制約も多く、制作時には公表できない大人の事情が沢山あったのです。しかしながらこれを解決すれば道が開けるという思いから、試行錯誤を繰り返しました。株式会社スーパーキッズを設立して10周年を記念して制作したということも特別な思い入れの一つです。

親子コンサートを行う上で常に意識していること、または子どもたちに伝えたいことを教えてください。

実は、私たちが子どもに伝えたいことというのは特にありません。我々の活動は、子どもに何かメッセージを送ることではなく、親子のコミュニケーションを豊かに発展させていくことなのです。伝えたいことがあるとすれば、親子のコミュニケーションの中から、親子で見つけていくことだと考えています。そのため、お子さんはもちろん、お母さんやお父さんを意識して制作しています。
私たちがイメージしているシーンは、お子さんが嬉しくてお母さんの顔を見上げたとき、優しく自分を見つめているお母さんお父さんではなく、お子さんと一緒になって感動しているお母さんお父さんの姿なのです。子どもの感性を育むためには、親子同等に共感できる感動が何より大切であると考えています。

来場されるお客様へメッセージをお願いします。

親子のためのクラシックコンサート「音楽の絵本」の対象は0歳から。特に0歳児を持つお母さんは、出かける機会も激減し大変なストレスを抱えていらっしゃいます。0歳に音楽がわかるかどうかではなく、お母さんのストレスが解消されることで、また明日から優しい笑顔をお子さんに見せてあげられることが、とても大切だと思います。是非お子さんと一緒に「音楽の絵本」の世界をお楽しみください。

プロフィール

ズーラシアンブラスの生みの親 大塚治之さん

大塚 治之(おおつかはるゆき)
株式会社スーパーキッズ代表。1961年生まれ。静岡県出身。多摩美術大学卒業後、株式会社ホンダランド(現:株式会社モビリティランド)に入社。遊園地部門で企画、デザインを担当。88年に独立し、イベント企画制作会社、スーパーキッズを立ち上げ、89年に株式会社化。作曲コンテストを実施、実践の場を提供しつつ、若手作曲家育成に取り組んできた。2011年第5回キッズデザイン賞経済産業大臣賞(ズーラシアンブラス)受賞。2013年経済産業省より「がんばる中小企業・小規模事業者300社」に選定。