ここから本文です。

ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
浪曲師 玉川太福さん

浪曲師

玉川 太福 さん

三味線の演奏に合わせて、いっしょに唸りましょう!

2月に開催される「Kissポート講座唸ってみよう! 作ってみよう! 浪曲体験講座 特別口演つき」の講師を務める玉川太福さん。人気若手浪曲師として、注目を集めています。異彩を放つその芸風の秘密を探ってみましょう。

浪曲とは、どのようなものでしょうか。

落語、講談と並んで浪曲は日本三大大衆話芸の一つです。落語や講談は一人で語るのに対し、浪曲は三味線の伴奏が付くので、必ず二人で舞台に立ちます。義理人情を描いたものが多いですね。三味線の伴奏に合わせ、古典的な物語に節をつけて語る、日本古来のミュージカルのようなものです。

浪曲師になろうと決意したきっかけをお聞かせください。

小学生の頃からお笑いが好きで、常に友達を笑わせることを考えていました。大学卒業後、コントの台本を書いたり、舞台に立ったりしていたのですが、偶然出会った浪曲に心を奪われたのがきっかけです。予備知識もなく聴いていたのですが、口演の30分間、ずっと前のめりでした。声と話芸の力でお客様を引き込むことができるんだと、衝撃的な体験でしたね。それが師匠でもある、故・二代目玉川福太郎との出会いでもありました。
それまで自分がやってきたコントは、浪曲とは対極な日常を切り取ったもの。逆に、その日常に節をつけたら面白いかもしれないと思い、何の目算もなく、この世界へ飛び込んでしまいました。

それが新作浪曲の始まりですね。どのようなことをヒントに創作されるのでしょうか。

日常の些末な出来事を取り上げています。登場人物は庶民的な人です。自分自身の身の回りに起こる出来事だからこそ観客の共感を得られ、物語との距離感は近いのに、〝唸る″という行為が非日常で、滑稽に見えるということがあるのだと思います。
例えば「唐揚げを食べたいと思った」ということを、「唐揚げを~」と唸ると、その大げさな表現がギャップとなり、面白いと感じていただけるのではないでしょうか。
今後は、これまで浪曲に興味のなかった方や、若い世代の方にも気軽に楽しんでいただけるよう、伝統を大切にしながら、創作浪曲にも力点を置いていきたいですね。古典としての浪曲はもちろん、身近な話芸としての浪曲を普及させていきたいと思っています。

浪曲の道を歩まれて10年余り。苦しかったこと、辛かったこともあったのではないでしょうか。

弟子入りして二カ月半後に師匠は不慮の事故で亡くなってしまいました。憧れて、芸だけではなくすべてを吸収したいと思っていた人がいないという状況は、今でも心の整理が付くようなことではありません。
もちろん辛いことばかりではありません。姉弟子やお客様が応援してくださる等、周囲の方にとても助けていただきました。ありがたいことです。
浪曲の魅力は三味線があって、節が付いて、メロディがあって、というところ。頭の芯が振動するような声の響きや表情を実際に体感していただきたいですね。

講座を受けてみたいという方へメッセージをお願いします。

やってみようというコーナーでは、実際に声を出していただきます。三味線に合わせて声を出すという、通常ではなかなか得られない体験ができるのです。浪曲の知識がなくても大丈夫。人間の身体は楽器になると言いますが、こんな声が出るのかと自分自身の声に驚かれるのではないでしょうか。
年齢、性別関係なく、どなたがチャレンジしても思いがけない自分の声に出会えるように、準備を整えてお待ちしています。ぜひご参加ください。

プロフィール

浪曲師 玉川 太福(たまがわだいふく)さん

玉川 太福(たまがわだいふく)
1979年新潟県生まれ。子どもの頃から、コント、お笑いが好きで、コント作家を志す。大学卒業後、目標通り、お笑いの世界へ。ユニットを組みコントを作りながら、舞台役者としても活動。27歳のとき、偶然に出会った浪曲の舞台に衝撃を受け、故・二代目玉川福太郎氏に入門。これまでの浪曲を受け継ぐ古典はもちろん、オリジナルの新作浪曲にも果敢に取り組む。2012年より日本浪曲協会理事に就任。