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ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
ヴァイオリニスト 降旗貴雄さん

ヴァイオリニスト

降旗 貴雄 さん

モーツァルトの「春」で季節を先取りしてください

毎年、大好評の「NHK交響楽団メンバーによる早春コンサート」。今回は2月18日に、高輪区民センター 区民ホールで開催されます。NHK交響楽団ヴァイオリン奏者の降旗貴雄さんに、メンバーやコンサートの聴きどころについて伺いました。

どのような楽器編成で演奏されるのでしょうか。

ヴァイオリン2挺、ヴィオラ、チェロと、いわゆる弦楽四重奏の形で演奏します。「N響メンバーによる大人倶楽部」というグループから私を含め2名のヴァイオリンとヴィオラ、N響の先輩にチェロをお願いして、合わせて4名です。
N響では、アウトリーチ活動として「NHKこども音楽クラブ」を実施しています。「こども」があるなら「大人」があってもいいじゃないか、というコンセプトで名付けたんです。結成は2009年。大人はお酒を、子どもはジュースを飲みながら音楽を聴き、楽しい時間を過ごしてもらおうという演奏会を行っています。
そもそもクラシック音楽というものは、王様や貴族が食事中や食後に楽しく過ごすための音楽です。皆さんにも、楽しい気分でゆったりと聴いていただきたいと思っています。

今回は、どのようなコンサートになりそうでしょうか。

飲み物は振舞えませんが、春を先取りしていただけるような曲目をと考えています。モーツァルトの「春」を中心にした選曲ですが、ジャンルにとらわれずに、ジャズ、ポップス等、さまざまなスタイルの曲をお届けする予定です。せっかく楽器が3種類ありますので、それぞれをフィーチャーした曲も聴いてほしい。楽器の特徴やキャラクターも感じてほしいですね。

オーケストラで演奏されているときとの違いはありますか。

いつもと違うアプローチをするのが弦楽四重奏のだいご味です。オーケストラも、言ってしまえば大きな室内楽ですので、根本的には変わらないのですが、より他の演奏者の反応が気になります。自分がどのように演奏したいか、相手はどう考えているか、即興性と言いますか、その時々で楽器の役割を変えていくのが弦楽四重奏ではないでしょうか。
学生のとき先生からいただいた言葉があります。それは「命を削って演奏をする」ということ。例えば、言葉なら一度書いても、文字を消して書き直すことができますが、音は一度出してしまったら消せません。それくらい強い責任感を持って演奏しなければならないということです。今でも肝に銘じています。

万全の演奏をするために、常に気をつけていらっしゃることは何でしょう。

まずは体調を整えることですね。年間約200回のコンサートをしていますので、お腹が痛い、昨夜は寝られなかったという日も正直あります。それをいかに無くして、ベストを出しやすい状態に持っていくかが大切なのです。意外に思われるかもしれませんが、私、繊細なので、十二分に気をつけています。
あとはジンクスがあって、大事なコンサートの当日には梅干を食べます。梅はその日の難逃れだと祖母が教えてくれたことをずっと守っています。

コンサートにいらっしゃるお客様へメッセージをお願いします。

私は多種多様な演奏で、弦楽四重奏の可能性を広げたいと思っています。
クラシックの名曲は数々ありますが、この曲を知っているというだけでもワクワクすると思いますし、さわやかな感じがする曲調だ等と、自分なりの解釈をするのも一興です。ぜひ、気軽に来て、楽しんでください。

プロフィール

ヴァイオリニスト 降旗貴雄(ふりはたたかお)さん

降旗 貴雄(ふりはたたかお)
公益財団法人NHK交響楽団、第1ヴァイオリン奏者。東京藝術大学附属音楽高等学校を経て同大学卒業。第10回日本クラシック音楽コンクールにおいて一般部門最高位受賞。これまでに澤和樹、大関博明、若林暢、ヤン・ソンシク、田中千香士、堀正文、篠崎史紀の各氏に師事。2008/01/01入団。現在、Gen室内管弦楽団やピアニストとのDuo「コントラスツ」で、各地で精力的に演奏活動をしている。