ここから本文です。

ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
劇団ふぁんハウス 平野恒雄さん、鈴木千秋さん

劇団ふぁんハウス

平野恒雄 さん

鈴木千秋 さん

笑って笑って最後にホロリ。障害のある無しにかかわらず楽しめる芝居です!

8月に麻布区民センター 区民ホールで創立20周年記念「夢めぐり」を公演する劇団ふぁんハウス。障害のあるメンバーとともに作り上げた20年間の歩みを代表の平野恒雄さんと主演の鈴木千秋さんにお伺いしました。

劇団を立ち上げたきっかけを教えてください。

平野
20年以上前、目の見えない役者志望の方と出会い、「プロの役者になりたい」という気持ちに応えようと、1回限りの劇団として立ち上げました。そうしたら多くの人が来場し、また観たいと言ってくれました。一緒にやりたいという仲間も増え、やめるわけにいかなくなったのです。
鈴木
私もそうやってふぁんハウスに参加したひとりでした。視覚に障害のある友人に誘われて観に行ったら、まず全盲のピアニストの演奏から始まるオープニングに衝撃を受けて、感動の涙とともに障害に対する壁がなくなりました。

劇団の目指すものは何ですか?

平野
お客さまが元気になるお芝居を作ろうという、ただそれだけです。ふぁんハウスのお客さまの中には、さまざまな障害のある方がいらっしゃいます。ですからそのような人でも楽しんでもらえる芝居を常に目指していますし、そのためのサポートも行っています。
鈴木
とくに好評なのは音声ガイドです。プロのアナウンサーの方がいつも無償で入れてくださるので、とてもいい声でガイドが聴けます。また、駅から会場までのガイドヘルプもしていますし、会場には手話のできるスタッフもいるので、どなたでも安心して来ていただけます。

港区の小学生を入場無料にした理由は何ですか?

平野
せっかく港区の協賛をいただいていますから、小学生がお芝居にふれるきっかけになればと思いました。大人の中に交じって観ることで鑑賞のマナーも学べますし、小学生こそ生のお芝居を観てもらいたい! といつも思っています。

20年間続ける中で思い出に残る出来事は何ですか?

平野
当初主役を務めていたのは、視覚障害のある役者でした。彼は目の見える役をこなせるくらいに成長しましたが、同時に観ているお客さんの目も肥えてきて、小手先の演出だけでは通用しなくなってきたのです。僕は彼に高い演技力を求めて彼もものすごく努力してくれましたが、ある日「疲れた」と言い、劇団を去りました。あとに残ったのは目の見える役者だけ。その時点でこれ以上この劇団を続ける意味があるのか悩みましたが「障害者がいるから応援しているのではなく、ふぁんハウスの芝居が好きだから観にきている」というファンの方々の言葉に背中を押され、続けることになりました。今でも障害のある役者に入ってほしいという思いはあります。

脚本を書くうえで大切にしていることはありますか?

平野
まずわかりやすいこと。シリアスな脚本が書けないので(笑)、基本は笑いあり涙ありの人情ものを書きます。そこに必ず入れる要素は「夢」ですね。自分自身が大切にしてきたものなので、そこは伝えていきたいと思っています。

今回の公演について教えてください。

平野
これは実体験をもとに書いた作品で、女優への夢を追い続けてきた主人公が平凡であることの良さに気づき、成長していくお話。10年前の周年記念で公演し、反響が高かった作品ですが、今回はさらにパワーアップしています。
鈴木
私がふぁんハウスに参加して初めて演じたのが今回の公演「夢めぐり」でした。いくつになっても夢を追い続ける気持ちを持っていいと思える作品であると同時に、仲間や友達、家族の温かさが伝わってきます。どうぞお楽しみに!

プロフィール

劇団ふぁんハウス 平野恒雄さん、鈴木千秋さん

平野恒雄(ひらのつねお)(写真左)
大阪府枚方市出身。舞台俳優を経て、80年代後半から「あぶない刑事」をはじめ数々のテレビドラマや映画に出演。その後、俳優中村敦夫の付き人を経て、1998年12月に劇団ふぁんハウスを設立。障害者に開かれた劇団にこだわり続けている。

鈴木千秋(すずきちあき)(写真右)
茨城県坂東市出身。イベントMCやナレーターを経て、ミュージカルへの出演をきっかけに役者を志すようになり、2005年より劇団ふぁんハウスに所属。役者として出演するほか、バリアフリー観劇サポートのひとつである音声ガイド台本の執筆も担当。