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ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
東京演劇集団風

ダンサー・俳優

辻󠄀田暁さん
(つじたあき)

思いっきりからだを動かしながら
ダンスによる舞台作品をつくってみよう!

8月10日から赤坂区民センターで行われる小・中学生向けのワークショップ「めにみえないもの製造工場」で講師を務める辻󠄀田暁さん。辻󠄀田さんの表現活動やワークショップへの思いなどをおうかがいしました。

ダンスや演劇との出会いについて教えてください。

子どもの頃は、言葉で気持ちを表現するのが苦手だったんです。その頃、習い事でバレエをやっていたのですが、ある日のレッスンで、自分の気持ちを踊りで表現できることに気がついて、驚きました。「表現手段は、言葉じゃなくてもいいんだ」と、気持ちが楽になりました。そうした経験から、ワークショップに参加する子どもたちには、気持ちを伝える手段は言葉以外にも、からだの動き、歌、造形物、絵など、たくさんあることを知ってほしいと思うようになりました。子どもたちには、「たくさんの表現手段の中から、自分にしっくりくるものが見つかったら素敵だね」とよく話しています。
子どもの頃の夢はバレリーナになることでしたが、大学では演劇を学び、コンテンポラリーダンスと出会いました。これまで、「ものを言う身体(からだ)」をテーマに、演劇とダンスを融合させた創作(芸術)活動を続けてきました。創作活動のおもしろさは、「自分は何者であるか」を探求できるところにあると思います。ワークショップを通じて、子どもたちに芸術の魅力を、ぜひ味わってもらいたいですね。

8月に行われるワークショップの特徴は?

今度のワークショップでは、子どもたちと一緒にダンスによる舞台作品を創作し、最終日に発表公演を行います。ワークショップのはじめの頃は、参加者一人ひとりがどんな性格なのかわからなくても、からだを使っておしゃべりをしていくうちに、「こういうことを考えているんだな、こうした一面もあるんだな」というのが見えてきて、おもしろいですね。子どもたちはとても楽しみながら踊ってくれますが、「こんなのダンスじゃない! 変なの!」と言い出すことも。でもそれは私にとっては、「しめしめ」という感じです(笑)。その子の中に反感が生まれたのは、それまで持っていた概念の枠を壊しはじめた証拠です。それは「こんなダンスもあったんだ!」とその子の中の世界が広がっていく過程だと思うんです。
ワークショップのタイトル「めにみえないもの製造工場」は、チェコの作家カレル・チャペックの作品『絶対製造工場』からヒントを得ました。その物語は、「絶対」(神)を生み出す機械によって世界が大混乱してしまうというもの。「絶対」(神)も目に見えないものですが、ワークショップでは、喜びや悲しみなどの感情、空気や電気、精霊や幽霊といったあらゆる「めにみえないもの」を子どもたちと一緒にダンスによって生み出し、一つの作品としてまとめていきたいと思っています。今回は作品の創作段階からギタリストのファルコンさんが参加し、演奏をつけてくださいます。ファルコンさんはエフェクター(音響機器)を使って、宇宙や海の中などの異空間を連想させるような不思議な音をつくるのを得意としていますが、その音を聞いて子どもたちがどんな反応を見せてくれるのか、今からすごく楽しみです。

ワークショップで子どもと接する際に気をつけていることは?

ワークショップでは、指導や強制の言葉は使わないようにしています。強制の言葉を投げかけてしまうと、言葉通りに動こうとしたり、頭を使って正解を探そうとしたりしてしまいますが、芸術に正解も不正解もありません。私はワークショップの参加者によく「ダンスを一緒に発明しよう」と語りかけることがあります。自分自身が思っている以上にからだには大きな可能性が潜んでいて、一人ひとり、それぞれのからだにしか生まれない動きがあります。子どもたちには、それまで気づかなかった自分のからだや感覚と出会ってもらえたら、とてもうれしいですね。

子どもから受ける刺激はありますか?

自分自身の創作活動では、子どもの身体性に触発されることも多いです。子どもは考える前にすでにからだが動くことが多いように思います。子どもは、例えば「走りたい」と思う前に、もう走り出しています。言葉が生まれるより先に、からだがおしゃべりをしだすんです。楽しいときには、何も言わなくてもからだが楽しがっているのがわかるし、おもしろくないときは、からだが本当につまらなそうで、すごくわかりやすいですね。
大人になるにつれて、「~しなければ」というルールに縛られ、頭を使ってからだの動きを制御することが多くなります。それは社会生活を送るうえでは必要なことですが、そうして思考優先になる時間が多くなると、「ものを言う身体(からだ )」を失ってしまいます。子どものようにからだを解放していなければ、うまく踊れないんです。
子どもはからだを解放することの天才で、解放されているからだは魅力的です。子どもの動きを見ていると、からだを解放することの大切さに気付かされます。

ワークショップ参加者に向けてメッセージをお願いします。

参加者の親御さんはぜひ、「いってらっしゃい!」と子どもたちの背中を押してあげてほしいですね。これまでのワークショップでは、「日に日に子どもの表情が変わっていくのが楽しかった」「子どもの新たな表情、動きを発見しました」と感想をお寄せくださる親御さんもいらっしゃいました。表現する子どものからだに引っ張られるようにして、「そういえば子どもの頃は自分もこんな感じだったな。もっと自由にからだで表現していたな」と思い出される方も多いようです。
子どもたちには、追い立てられるような忙しい日常から離れ、それとはまったく別の時間と空間の中で、表現することを思い切り楽しんでもらいたいと思っています。

プロフィール

辻田暁さん

辻󠄀田暁さん
6歳よりクラシックバレエをはじめる。桜美林大学文学部総合文化学科演劇専修卒業。演劇を平田オリザ、コンテンポラリーダンスを木佐貫邦子に師事。“ものを言う身体”を自身の表現のテーマとする。人形劇、オペラ、クラシック音楽など、異なるジャンルとのコラボレーションを積極的に行い、身体表現の可能性を追究している。主な出演作に、「旅とあいつとお姫さま」お姫さま役、「ピノッキオ」ピノッキオ役(以上、演出:テレーサ・ルドヴィコ)、「ペールギュント」ボタン作り役(演出:ヤン・ジョンウン)、カンパニーデラシネラ「分身」(演出:小野寺修二)、ダンス×人形劇「エリサと白鳥の王子たち」エリサ役(演出:扇田拓也)、ダンス×人形劇「ひなたと月の姫」ひなた役(演出:広崎うらん)他、波多野睦美、ステファン・ウィンターとのコラボレーション等。

辻田暁さん
辻田暁さん
辻田暁さん
辻田暁さん

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