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ふれあいコラム

今、話題の人物をクローズアップ!
公益社団法人日本女子プロ将棋協会 代表理事 女流棋士 中倉宏美(なかくらひろみ)さん

代表

榎本トオルさん
(えのもととおる)

劇団員

やなせ けいこさん

さまざまな人が共生する社会を目指して
ろう者と聴者が一緒に創り上げる人形劇

デフ・パペットシアター・ひとみは、3月5日(日)に男女平等参画センターリーブラホールで「河の童-かわのわっぱ-」を上演します。劇団代表の榎本トオルさんと劇団員のやなせけいこさんに、劇団の成り立ちや作品に込めた思いをうかがいました。
※ろう者の榎本さんの手話は、聴者のやなせさんに通訳していただきました。

ろう者の方と一緒に創作するきっかけを教えてください。

やなせ
デフ・パペットシアター・ひとみは1980年に結成されました。それまでは人形劇団ひとみ座で、子どもたちを対象に、セリフがあり人形が動いてという、一般的な人形劇を行っていたそうです。そうした活動の中で、セリフに頼らずに、動きだけでストーリーを伝えられる表現方法を模索していました。ちょうど同時期に、アメリカのろう者劇団デフ・シアターの日本公演がありました。公演を観たひとみ座のメンバーが、手話や外国語がわからなくても動きだけで伝わることに驚いて、こうした要素を自分たちの人形劇にも取り入れられないかとはじめたのがきっかけです。視覚での情報をもとに生活しているろう者の方と一緒に演じることで、動きだけで伝える人形劇団をつくることになりました。

榎本
私は元々、地元の山形県で手話劇のサークルで活動をしていました。アメリカのデフ・シアターを観たこともあり、山形でデフ・パペットシアター・ひとみの公演を主催する実行委員もしていました。本格的に参加することになったのは、手話だけでなく身体を使ったさまざまな表現ができて、ろう者と聴者が一緒に演じることに魅力を感じたからです。

ろう者の感性が、どのように作品に反映されているのでしょうか?

榎本
台本については、元々あったセリフを省くというより、視覚的に表現することが前提で書かれています。例えば「今日は天気がいいねぇ」といった心で思っていることを、セリフとして声に出すのではなく、動作などで視覚的に表現しています。このあたりを見てほしいですね。通常の人形劇と違うところは、身体を隠すような 「 蹴込(けこ)み」 と呼ばれる、ついたてがないことです。人形を使っている人の身体が見えている状態で演じています。

耳の聞こえない方は、どうやって音を感じているのでしょうか。

榎本
ろう者の場合、音楽が好きな人もいます。カラオケに行ったりする人もいるんですよ。私自身は、あんまり興味ないんですけど(笑)。
私の好きな楽器は、太い竹を使ったマリンバです。それが振動してボンボンと響いてきたり、「響き」を感じることがあるんです。楽器によって色々な響きがあります。また、目の前で演奏している人の表情や動きが見えるので、音の強弱が視覚的に伝わり、感情が伝わってくることもあります。ですから、劇の中でもどういった場面なのか、見た目から想像できることもあるのです。

1月に開催された御成門小学校の「ことばときこえの教室」では、公演と「音」に関するワークショップが行われましたが、内容を具体的に教えてください。

やなせ
私は劇中で人形を持つこともありますが、今は音楽をメインに担当しています。元々はろう学校の音楽教師をやっていたことがきっかけで、劇団に入りました。
教師としての経験から、私共の人形劇ではできるだけ音を生で出して、聞こえない子にも音楽を感じてほしいと思っています。「このお芝居は、こういった楽器を使って、こんな音楽なんだよ」ということが目で見てもわかるように、さらに工夫できないかと常に心掛けています。そうした中で、もっと音に親しみを感じてもらえるように、音に特化したワークショップを企画しました。ワークショップではお芝居で使っている楽器だけでなく、台所で使うステンレスのボウルやフライパンなども楽器として使用しました。身の周りの物でも音を楽しめることが子どもたちにも伝わったようです。

「河の童」は、共生をテーマにしていますが、劇団が考える共生社会とは?

榎本
観に来てくださるお客さまの中にもさまざまな方がいらっしゃいます。ろう者の方だけではなく、車椅子に乗った方や障害のある方など…。外国の方もいらっしゃいます。多様な方たちが同じ場にいて、一緒に生活ができる差別のない社会になるといいなと思っています。
劇の中でも河童が人間にいじめられる場面がありますが、実は、昔は河童も神様として崇められていた時代があったのです。雨が降らないのも河童のせいではないのに、河童のせいにしてしまっている。誤解が偏見を生んで、いじめに繋がってしまう。そういったことがない社会になることが願いです。

観た方の感想には「ラストが想定外だった」という意見が見られましたが…。

やなせ
原作は火野葦平(ひのあしへい)さんの「河童曼陀羅(かっぱまんだら)」という短編集の中の一編です。ご覧になった皆さまの感じ方は本当にさまざまで、内容がよくわからなかったというお子さまもいるかもしれません。ラストシーンも「女の子と河童はどうなったの?」と。親御さんが「こういうことだったんじゃないかな」と助言もできますし、考える余地のある物語だと思っています。想像を膨らませながら、楽しんでほしいです。
今回は、ろう者のダンサー雫境(だけい)さんを客演に迎えていますので、マイムのような、より身体的な表現ができるのでは、と思っています。年齢制限もありませんので、ぜひ、世代を超えて多くの方たちに観ていただきたいですね。

プロフィール

公益社団法人日本女子プロ将棋協会 代表理事 女流棋士 中倉宏美(なかくらひろみ)さん

デフ・パペットシアター・ひとみ
劇団名のデフ(DEAF)は「聞こえない」という意味。その名のとおり、ろう者と聴者が共同で作品を創り上げている人形劇団。NHK「ひょっこりひょうたん島」でおなじみの人形劇団ひとみ座を母体に、国際障害者年となる1980年、(公財)現代人形劇センター内に誕生した。1981年から公演活動を開始。国内のみならず海外公演も積極的に行っている。

公益社団法人日本女子プロ将棋協会 代表理事 女流棋士 中倉宏美(なかくらひろみ)さん
公益社団法人日本女子プロ将棋協会 代表理事 女流棋士 中倉宏美(なかくらひろみ)さん
公益社団法人日本女子プロ将棋協会 代表理事 女流棋士 中倉宏美(なかくらひろみ)さん

チケット発売中!
デフ・パペットシアター・ひとみ「河の童-かわのわっぱ-」のチケットが発売されています。詳しくは下記をご覧ください。

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