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港区役所の目の前にある都立芝公園の一角を、日本庭園風にアレンジした芝公園 おもてなしの庭。夏にはキキョウやサルスベリなど園内の花々が見ごろを迎えます。
芝公園は、日本最古の公園の一つです。かつては増上寺の敷地でしたが、1873年の太政官布達第16号(日本初の公園制度)により公園として開放されました。戦後に政教分離のため増上寺と切り離され、現在は都立公園(一部は港区立公園)となっています。
その芝公園の一角に、今年5月、「おもてなしの庭」が開園しました。おもてなしの庭は、東京2020大会で東京を訪れる人々を花と緑で迎えようというコンセプトの空間です。都市緑化機構などが主催する緑の環境プラン大賞を受賞した5つの緑化プランが、おもてなしの庭として都内各地で作庭されており、こちらもその1つ。芝公園
おもてなしの庭では、江戸の伝統技法を用いつつ、現代にもしっくりとなじむ日本庭園を鑑賞できます。
園内は、中央の庭門を境にして、和モダンな「はなやぎの庭」と、伝統の技を駆使した「逍遥(しょうよう)の庭」という2つのゾーンに分かれています。はなやぎの庭には、瓦を積み上げたうろこ垣、日本一の長さを誇る臥龍(がりゅう)垣などダイナミックな創作垣が。逍遥の庭では、海の水面をイメージした市松の庭をはじめ、8つの情景を楽しめます。いずれの庭も、増上寺三解脱(さんげだつ)門、東京タワーという東京ならではの借景を生かしながら、どの角度から見ても美しい景観となるよう計算されています。施工を手がけたのは総勢50名以上の庭師たち。東京・長野・滋賀の3人の名工が親方となり、全国から集結した若い庭師たちを指揮しました。この庭づくりを通して、若手に伝統の作庭技法を継承することも目的の一つだったそうです。
随所に匠の手業とこだわりが光る、芝公園
おもてなしの庭。誰でも気軽に足を運べる公園ですから、気構えることなく日本庭園の景観美を堪能できますね。
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【A】長さ19mの臥龍垣。雄大な龍の姿をイメージしています。
臥龍垣には、1本の竹を64等分し、また合わせるという熟練の技が。逆立つ龍のうろこを表現するため、あえて継ぎ目が見えるよう竹をつなぎました。
【B】日陰の多いはなやぎの庭には、白い石を配して明るさを演出。栃木県鹿沼市産の深岩石。
【C】南側入口のうろこ垣。古い家屋の瓦を再利用しています。 瓦は1枚ずつ反り方が異なるため、水平に積み上げるには高度な技術が必要。
【D】既存の庭門の両脇に設けた、石積とよろい垣。よろい垣は竹の表と裏を交互に並べることで色の違いを楽しめるデザイン。で色の違いを楽しめるデザイン。
【E】月のモニュメントの周りに、じゃかごを模したオブジェをあしらいました。竹を細く割って薄くそぎ、編んでいます。
【F】富士山を模した小さな築山の裾野には、黒ぼく石を使って溶岩を表現した枯れ流れを。
【G】市松模様の敷石はキラキラと輝く品川の海面を、3枚の金閣寺垣は打ち寄せる波を表現。奥の力強い立石が、眺める人の目線を借景の東京タワーへと誘います。
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【H】小窓から庭を眺めるしかけ。子どもや車いすの方も楽しめるよう、低い位置にも窓を。中央の窓からはかわいらしいカニの親子の姿が。
【I】ハーブが植えられた、香りの石山。景観だけでなく香りも楽しめる工夫です。
(一社)日本造園組合連合会
参与の井上花子さん(左)と、日本造園組合連合会 相談役で、芝公園
おもてなしの庭の作庭では親方も務めた野村脩さん(右)。
「日本庭園を少しでも身近に感じてもらえたら嬉しいです」と語ります。
住所:港区芝公園1丁目
都営三田線「御成門」駅徒歩1分、「芝公園」駅徒歩4分、都営三田線・浅草線「大門」駅徒歩4分、JR「浜松町」駅徒歩10分
昭和30年
現在
創業230年のそば処。そば打ち上手として知られた信州の反物商が、江戸で行商をしていた際に領主にすすめられて東日本橋にそば店を開業。大正初期に芝大門に移転しました。人の手による石臼製粉の風味豊かなそばを、本醸造醤油・鰹節のだし汁・砂糖・本みりんだけで作った濃厚な甘口つゆでいただきます。江戸時代の味を忠実に再現したそばは、何回でも通いたくなるおいしさです。
住所:港区芝大門1-15-8
営業時間:11:00~21:00
(土は20:00まで、日祝は19:00まで)
定休日:年末年始のみ