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港区探訪

港区ー憩いの場 今昔STORY

第8回 芝公園 もみじ谷

水のせせらぎと紅葉が楽しめる都心の渓谷

東京タワーがたつ場所は、古くは「紅葉山」と呼ばれ人々に親しまれたそうです。
その紅葉山に由来し「もみじ谷」と名付けられた人工渓谷をご紹介します。

深山幽谷の趣を味わえる人工の渓谷 秋には紅葉のグラデーションを楽しめる

東京タワーと増上寺の間に位置する「もみじ谷」は、芝公園の一角に設けられた人工の渓谷です。傾斜のある地形を生かして、緑豊かな樹林、自然石の岩場、渓流などが配されていますが、なかでも壮観なのは高さ10mの「紅葉滝」。2段に流れ落ち、渓流へと注いでいます。もみじ谷は紅葉スポットとしても知られており、イロハモミジやオオモミジなど9種類、約200本のモミジが秋になると鮮やかに色づき、12月に見ごろを迎えます。10分ほどで一周できる、公園内の一エリアなので、ちょっとした息抜きや散策にピッタリですね。
もみじ谷では、2017年12月から2020年2月まで2年以上かけて大規模な修復工事が実施されました。この工事で、滝や崖の整備、植生の調整、歩道のアスファルト舗装などが行われました。

日本初の公園デザイナーの作風を 目の当たりにできる歴史的資源

もみじ谷の大きな見どころである紅葉滝がつくられたのは1906年、今から115年も前のことです。設計を手がけたのは、明治から大正にかけて活躍した造園家、長岡安平(ながおかやすへい)。日本人初のランドスケープデザイナーの1人といわれる人物です。「公園」という概念が生まれたばかりの日本において、長岡は「自然の地形を生かす」「オープンで誰にも平等である」など現在では当たり前とされている公園設計思想にこだわって公園づくりに挑みました。彼がもみじ谷に人工滝を作ろうと考えた理由は、このあたりにかつて天然の滝があったから、また、奥深い山の雰囲気が残っていたからだとされています。やがて彼は日本全国で数々の公園・庭園の設計を手がけることになりますが、その多くは関東大震災や戦災、その後の復興計画などの影響を受けて当初の景観を失っており、現在、都内で建造当時の面影が残るのは唯一もみじ谷だけとなっています。
この秋、色とりどりのモミジに囲まれながら、明治期のもみじ谷に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

12月頃のもみじ谷 12月頃のもみじ谷の様子。北から南に色づくようにモミジが植えられています。

長岡安平 紅葉滝を設計した長岡安平(1842年~1925年)。明治政府は西洋諸国にならって公園制度を打ち出しましたが、当初は公園とはどんなものであるべきか誰も答えを持っていませんでした。そんななか、東京府(東京市)職員だった長岡は独自の発想で公園づくりに取り組み、その名は全国に知れ渡りました。

紅葉滝 竣工当時の紅葉滝。Ⓒ(公財)東京都公園協会

芝公園設計絵図 「芝公園設計絵図」(赤字部分は、説明用の加筆)。1910年発行の『東京市公園改良設計調査報告書』にあった図面と共通性が高い図面で、上部にあるのが現在のもみじ谷です。Ⓒ(公財)東京都公園協会

如意輪観音堂 もみじ谷の高台にたつ如意輪観音堂。設置された経緯や時期などは不明ですが、長年、有志によって手入れが続けられているそうです。

お地蔵様 渓流のほとりから斜面を見上げるとお地蔵様の姿が。その後ろには蛇塚がまつられています。

渓流沿道 自然に囲まれた渓流沿道を歩いていると、都心にいることを忘れそうです。

園内の説明板 園内の説明板。もみじ谷で見られる9種のモミジを図解しています。

モミジ柄のタイル 今回の修復工事でモミジ柄のタイルが4か所設置されました。

モミジ柄のタイル もみじ柄のタイル
探してみてね!

長柏園(ちょうはくえん)跡の碑 長岡安平が暮らした屋敷の跡地を示す「長柏園(ちょうはくえん)跡の碑」。もみじ谷を出て南に下ったところに建立されています。

アクセス情報

アクセス情報

《芝公園 もみじ谷》
住所:港区芝公園4-3-25
都営大江戸線「赤羽橋」駅徒歩約4分、「大門」駅徒歩11分、都営三田線「芝公園」駅徒歩約8分

公園近くの もうひとつの今昔STORY

芝神明 榮太樓

増上寺や芝大神宮にお供え菓子を納めている老舗の和菓子店。明治初期の1885年、日本橋の榮太樓總本鋪からのれん分けされ開業しました。店を代表する商品「江の嶋最中」の名付け親は『金色夜叉』で知られる明治の文豪・尾崎紅葉。また、店舗の前に置かれた看板の題字は芸術家・岡本太郎によるもので、多くの文化人に愛されてきたことがうかがえます。

江の嶋最中 貝の形がかわいらしい「江の嶋最中」。

太鼓暖簾 店の前の太鼓暖簾は季節によって色が変わります。

住所:港区芝大門1-4-14
営業時間:9:00~19:00(土は14:00まで)
定休日:日・祝日