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港区探訪

港区‒自慢の宝ものを訪ねて

第8回 国立科学博物館附属自然教育園

水生植物園

ヒメガマやヨシが群生する水生植物園。時にはカワセミが色鮮やかな姿を見せることも。(画像提供/国立科学博物館附属自然教育園)

まるごと天然記念物の森林緑地で自然体験を

自然教育園は、東京ドーム4.2個分(約20ヘクタール)の広さを誇る森林緑地。400~ 500年前から残る大自然を都心にいながら味わえる穴場スポットです。

必要最小限の植生管理で
里山らしい素朴な自然が楽しめる

四季折々の草花や生きものを間近で見られる国立科学博物館附属自然教育園。これまでの調査で、種子植物をはじめシダ植物や菌類など1,473種の植物、昆虫類や鳥類や哺乳類など約2,800種の動物が観察されています。園内には、山野の道ばたに生育する野草が茂る「路傍植物園」、武蔵野らしい草原の風景が残る「武蔵野植物園」、湿地で生きる動植物が観察できる「水生植物園」の3つの教材園が整備されています。それらをつなぐ散策路をさっと一周するだけでも約30分かかる広大さですが、実は一般公開されているのは敷地の15%ほど。公開エリアは里山らしい自然を維持するために草を刈ったり伐採したりといった植生管理が行われ、残り85%の非公開エリアは人間の手を入れずに森 林の変遷が見守られています。
この地の歴史を振り返ると、室町時代には豪族が館を構えたとされ、江戸時代には高松藩主松平頼重の下屋敷がありました。その頃、屋敷内に設けられた薬草園の管理をしていたのが本草学者の平賀源内だといわれます。明治時代には陸海軍の火薬庫、大正時代には白金御料地となったのち、1949年に天然記念物に指定されたことで一般公開されました。それまでは一般の人々が足を踏み入れられない場所だったため、豊かな自然が残されたのですね。
入口脇にある教育管理棟では、自然を題材にした企画展が催されています。現在は「フィールドとつながる絵本原画展 草の根と落ち葉」を開催中。紅葉が美しいこの季節、自然教育園に足を運んでみては?

おろちの松 2019年に台風で倒木した樹齢約300年とされる「おろちの松」。幹や根の様 子を観察できるよう、倒れた姿のまま展示しています。

ムクロジの種子 ムクロジの種子は羽根つき遊びの羽根の玉として、果皮は水に入れて揉むことで泡が立つため洗剤として使われていました。

散策路 園内を巡る散策路。公開エリアは適切に手を入れることで、希少な動植物の生態系を維持しています。(画像提供/国立科学博物館附属自然教育園)

コウヤボウキ、ムラサキシキブ、トラノオスズカケ (左2枚)11月に見ごろのコウヤボウキ、ムラサキシキブ。(画像提供/国立科学博 物館附属自然教育園) (右)トラノオスズカケは江戸時代に平賀源内が持ち込んだものと伝えられます。

土塁跡 室町時代には「白金長者」の館があったといわれています。その土塁跡を今も見ることができます。

展示コーナー 管理教育棟の展示コーナー。

下田彰子さん 案内してくれた下田彰子さん。「園内での調査研究を活かした企画展も見ごたえ たっぷりですよ!ぜひお越しください」

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国立科学博物館附属自然教育園

https://ins.kahaku.go.jp/index.php
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住所:港区白金台5-21-5
開館時間:9/1~4/30 9:00~16:30(入園は16:00まで)
5/1~8/31 9:00~17:00(入園は16:00まで)
休園日:月曜日(祝日・休日の場合開園、翌火曜日が休園) 祝日の翌日(土・日の場合は開園)年末年始
入園料:一般・大学生:320円 65才以上・高校生以下:無料(要証明書)
アクセス:JR山手線・東急目黒線「目黒」駅徒歩約9分、東京 メトロ南北線・都営三田線「白金台」駅徒歩約7分

絵本の原画と本物の自然を一度に楽しめる企画展を開催中

『フィールドとつながる絵本原画展 草の根と落ち葉』

世の中には「自然」をテーマにした絵本がたくさんあります。絵本を読んだあとに本物の自然を目にすれば、感動と興味はさらに強くなるはず!……そんな想いから生まれた企画展「フィールドとつながる絵本原画展 草の根と落ち葉」が、2022年11月3日(木)から2023年1月15日(日)まで、自然教育園で開催中です。本展では、「草の根」「落ち葉」に関連する絵本の原画とともに、本物の草の根や落ち葉を展示。展示を見たあとは園内を巡って、さまざまな根っこや落ち葉を観察してみましょう。絵本が伝える自然の魅力と、本物の自然から気付くこと、その両方を楽しめる企画展です。「こんな楽しみ方があったんだ」と思わせてくれる、秋冬にぴったりの催し物をぜひご覧ください。

『ぼくの自然観察記 草の根のたんけん』

『ぼくの自然観察記 草の根のたんけん』
■絵と文/おくやま ひさし

『落ち葉のふしぎ博物館』

『落ち葉のふしぎ博物館』
■絵と文/盛口 満