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港区探訪

港区‒自慢の宝ものを訪ねて

第16回 旧芝離宮恩賜庭園

池に浮かぶ大島(写真右下)へ渡る石造りの橋は、石が鯛の形に見えることから「鯛橋」と呼ばれています。

池に浮かぶ大島(写真右下)へ渡る石造りの橋は、石が鯛の形に見えることから「鯛橋」と呼ばれています。

東京に残る最も古い大名庭園のひとつ

300年以上前の造営当時の面影を色濃く残す庭園。かつては池に海水を引き入れ、潮の満ち 引きによる庭園の景観の変化を楽しむことができました。

オフィス街に広がる都会のオアシス

旧芝離宮恩賜庭園は、浜松町駅北口から歩いてすぐの大名庭園です。大名庭園とは、江戸時代に諸大名が築いた庭園の総称で、その多くが池泉を中心とした回遊式庭園となっています。旧芝離宮恩賜庭園では、約9,000㎡の大きな池や、そこに浮かぶ大小の島、築山、石組などが生み出す、表情豊かな景色が楽しめます。
昔、この地は海でしたが、江戸時代初期に埋め立てられ、老中・大久保忠朝の上屋敷となりました。忠朝は藩地の小田原から庭師を招いて庭を作り「楽壽園(らくじゅえん)」と名付けました。これが現在の庭園の原型となっています。中国の景勝地である西湖の堤をモチーフにした石堤や、中島の石組、州浜などはこの頃に作られたものです。
その後いくつかの大名家を経て、幕末には紀州徳川家、明治初期には有栖川宮家の邸地となり、1875(明治8)年に宮内省が買い上げ、翌年に芝離宮となりました。離宮となってからは外国の賓客をもてなす迎賓館として使われることもあり、園内に洋館が新設されました。ところが大正時代の関東大震災によって建物と樹木のほとんどが焼失してしまいます。翌1924(大正13)年、昭和天皇のご成婚記念として東京市(現・東京都)に下賜され、庭園の復旧と整備が行われ、同年「旧芝離宮恩賜庭園」として一般に公開されました。1979(昭和54)年には国の名勝に指定されています。
周辺には東京タワーや芝公園、増上寺など歴史的名所が揃い、観光や散策にぴったりのスポットです。

入り口 旧芝離宮恩賜庭園の入口。園内各所の解説板が設置されているので、歴史や見どころを頭に入れておくと散策がいっそう楽しくなります。

池 庭園の要をなす池は、もともとは海水をとり入れた潮入りの池でした。周辺の海が埋め立てられた現在は淡水となりましたが、海水取入口跡にその名残が見えます。

華や植物 四季を通じてさまざまな花や植物が楽しめます。夏はキキョウ(写真左)やサルスベリ(写真右・公益財団法人 東京都公園協会提供)が見ごろに。

石柱 茶室の柱として使ったと思われる石柱。もともとは小田原北条家の重臣・松田憲秀邸の門柱だったものをここに運んだと考えられています。

雪見灯篭 玉栗石が敷き詰められた州浜にたつ雪見灯篭は、この庭園のシンボル。雪見灯篭は離宮時代に設けられたもの。

古い写真 芝離宮として使われていた頃の様子を写した一枚。アメリカからの賓客が洋館の前で記念撮影しています。(宮内庁宮内公文書館所蔵)

石造りの堤 池の中央に浮かぶ中島へと続く石造りの堤。中国の浙江省にある西湖の風景を模したもので、詩歌や絵画の題材にもなりました。

旧芝離宮恩賜庭園

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住所:港区海岸1丁目
開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:12/29~1/1
入園料:一般150円、65歳以上70円、小学生以下無料、都内在住もしくは在学の中学生無料
アクセス: JR「浜松町」駅徒歩1分、都営浅草線・大江戸線「大門」駅徒歩3分
X(旧Twitter)https://twitter.com/Kyushibarikyu

庭園近くで和を楽しめるスポット 芝四季亭

今秋、浜松町に数寄屋造りの粋な空間がオープン!

再開発が進む浜松町駅周辺エリア。その一角にこの秋、数寄屋造りのしつらえが映える「芝四季亭」が誕生します。京野菜と瀬戸内の魚介を使った懐石料理が楽しめるお店で、1階は11席のカウンター席、2階には和室の広間があります。“粋な場所”として栄えてきた芝の地域性を重んじ、茶席や日本舞踊など和の伝統 文化はもちろん、世界の平和を発信する拠点を目指していくとのこと。新築ながら、天然木をふんだんに使った外観が、歴史ある街にしっくりとなじみます。今からオープンが楽しみですね。

芝四季亭

住所:港区浜松町2-10-6
問合せ:TEL 03(5777)2889

芝四季亭