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港区探訪

港区‒自慢の宝ものを訪ねて

第17回 明治学院歴史資料館

左から、インブリー館、記念館、礼拝堂。日本の現代建築とは異なる眺めで、まるで時間を越えて異国の世界に迷い込んだかのよう!

左から、インブリー館、記念館、礼拝堂。日本の現代建築とは異なる眺めで、まるで時間を越えて異国の世界に迷い込んだかのよう!

明治・大正の薫りを今に伝える充実の資料と風格ある佇まい

「ヘボン式ローマ字」の考案者として知られるJ.C.ヘボン博士が初代総理(学院長)を務めた明治学院。その160年にわたる歴史に関する資料を収集・展示する資料館を紹介します。

赤レンガ造のレトロな洋館内に設けられた資料館

明治学院歴史資料館は、明治学院 白金キャンパスの記念館1階にあります。その名の通り、明治学院の歴史・人物・建物に関するさまざまな資料を収蔵・公開する施設で、館内には、白金キャンパスの変遷をたどる4つのジオラマや、ガラス乾板(1950年代まで写真撮影に使われていた感光媒体)で撮影された建物写真を紹介する企画展示などがあり、見ごたえのある内容となっています。
こうした資料の歴史的価値はいうまでもありませんが、展示室がある記念館そのものも、明治学院の長い歩みを体現する名建築として知られます。記念館は明治時代半ばの1890年に建てられ、当初は神学部の教室や図書館が置かれていました。ネオゴシック様式の総レンガ造でしたが、1984年の地震で破損したため、2階のみ木造に改築されました。
同じキャンパス内には他にも、インブリー館や礼拝堂といった歴史的建造物が並びます。インブリー館は宣教師W.インブリー博士が暮らした建物で、国内で最初期の洋式住宅。礼拝堂はアメリカ生まれのW.M.ヴォーリズによる設計で、大正時代の建築です。
歴史資料館の展示室を除き、これらの歴史的建造物は普段は外観のみ見学可能ですが、11/1(水)~3(金・祝)の3日間、東京都の東京文化財ウィークに合わせて建物内部が一般公開されます。この機会に、年月を経た建造物の美しさに触れてみてはいかが?

ヘボン博士 明治学院創設の礎を築いたJ.C.ヘボン博士。

学生たちを写した一枚 ガラス乾板で撮影された写真。記念館(当時は神学部校舎兼図書館)前に並んだ学生たちを写した一枚。(明治学院歴史資料館所蔵)

パイプオルガン 礼拝堂には、17~18世紀ヨーロッパの工法で製造したオランダ製のパイプオルガンが設置されています。2045本のパイプが使われており、重さはなんと11トン!

礼拝堂の外観 礼拝堂の外観。堅固な石が土台に組み込まれました。

ジオラマ展示 歴史資料館の展示室。明治期から現在までの白金キャンパスを模したジオラマ展示を見ると、道路拡張にともない、インブリー館などの歴史的建造物がキャンパス内で移設されたことがわかります。

インブリー館 インブリー館 国の重要文化財であるインブリー館。明治学院で教鞭をとった宣教師の住まいとして使われました。採光や風通しなど、居心地よく暮らすための工夫が随所にちりばめられています。

記念館2階 現在の記念館2階の様子。かつてここにあった図書館には、小説『破戒』で知られる作家の島崎藤村も通いました。

リードオルガン 記念館2階には1912年製のリードオルガンが。実際に演奏も可能で、演奏付きの公開イベントが行われることも。

1階から2階 インブリー館の1階から2階を見上げたところ。1階の天井は洋風の板張、2階は和風の竿縁天井で、和洋の建築技術が融合した建物だとわかります。

ドアノブ インブリー館のドアノブは陶磁器製。有田焼が用いられたと推測されています。

真っ黒に焦げた柱 1963年、隣接した家屋で火災が起こり、インブリー館も類焼。天井裏には真っ黒に焦げた柱が残っています。小杉さんは「それでも建て替えず、この建物を修理して保存していこうという当時の人々の想いを感じます」と語ります。

小杉義信さん 歴史資料館の小杉義信さん。「歴史的な資料や建物を目の前にして、自由に想像をふくらま せてください。心が動いた瞬間をぜひ大切にしてほしいと思います!」

明治学院歴史資料館

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住所:港区白金台1-2-37 明治学院 白金キャンパス 記念館1階
開館時間:9:00~16:00
休館日:土曜、日曜、祝日、学院の定める休日(臨時閉室あり)
入館料:無料
アクセス: 東京メトロ南北線・都営三田線「白金台」駅または白金高輪」駅徒歩7分、
都営浅草線「高輪台」駅徒歩7分
※キャンパス入場時に守衛所にて記帳が必要です。

【イベント】「概念としての石」から読み解く:
明治学院を中心とする日本近代の教会・学校建築

明治学院 白金キャンパスには、明治時代のインブリー館・記念館、大正時代のチャペルが残されています。この講座では、幕末から昭和戦前に展開したキリスト教の建造物について、「素材・工法」の観点からひもとき、これらの建物を実見しながら、日本近代の教会・学校建築における「概念としての石」とは何かを探ります。

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