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北里大学東洋医学総合研究所 所長
小田口浩 先生
今回の誌面講演は、漢方医療を専門とする私が、多くの方が感じている漢方への疑問にお答えする形で進めさせていただきます。
食物はたくさんの成分を含み、栄養を補給して心身全体の健康を維持します。これに対して一般的な薬はたいてい一つの成分を含み、心身の悪い部分に作用して病気や不調を治します。漢方薬はこれらの中間的役割を果たします。たくさんの成分を含んで心身全体に作用するという点では食物の性質を持ちますが、心身の不調を治す作用を有するという点では薬の性質も持ちます。
前で述べた通り、漢方薬は特定の部位に作用するというよりも、たくさんの成分が心身全体に作用して病気や不調を治します。したがって、体調不良はあるけれども病院で原因がわからないといわれたとき、病院での治療だけでは体調不良が改善しないとき、何となく健康に不安があるとき等、日常の体調管理も含めて幅広く利用できます。
漢方薬を飲みたい場合、大きく分けて医師に処方を受ける方法と、自分で漢方薬を購入する方法があります。前者の場合、漢方に詳しくない医師も多いので、日本東洋医学会のホームページに掲載されている漢方専門医等を受診するとよいでしょう。後者の場合、漢方薬に詳しい薬剤師がいる漢方薬局等で自分に合った漢方薬を見立ててもらうのがおすすめです。
医師に漢方薬を処方してもらう場合、一般的に健康保険がききます。ただし、質の高い生薬を用いたオーダーメイドの治療を受ける場合は自費診療となることがあります。
漢方を専門にしている医師のほとんど全員が内科、産婦人科、耳鼻咽喉科等、西洋医学領域の専門性を有しております。ただし心身を含めた全体を診るのが漢方の特徴ですので、医師の専門性とは関係なく適切な漢方薬を処方してもらえます。
味や香りがあることも漢方薬の特徴です。一般的には、飲みやすく感じる漢方薬は現在のあなたの心身状況に合っていると考えられ、効果がある可能性が高いです。最初は苦く感じても、味に慣れてくるような場合も同様です。ただしこれは一般論であり、ものすごく不味く感じる漢方薬がよく効く場合もあります。
漢方薬にも副作用があります。一般には軽い症状ですみますが、間質性肺炎や薬剤性肝炎で重篤な状態に至る可能性もあります。服用で不調を感じたら服用をやめて医師や薬剤師に相談してください。
最後になりますが、北里大学東洋医学総合研究所漢方鍼灸治療センター(※)では高品質の生薬を用い、患者さんの体質に合わせた本格的な漢方治療を行っております(自費診療)。ご興味のある方は相談、受診をお待ちしております。