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みなと区民大学

港区内の各大学との共催で開催
北里大学薬学部教授 吉山友二先生

北里大学薬学部教授

吉山友二 先生

北里大学 vol.4-1
今回のテーマ
くすりの上手な使い方(1):いまさら聞けない!? 薬の基礎知識

 薬(クスリ)はくさかんむりに楽と書きます。大昔から、病気に植物を利用してきたことから、薬を表す漢字に「くさかんむり」が使われています。楽は病をいやすという意味が込められているようです。とても大切なクスリですが、逆から読むとリスクとなります。
 くすりを上手に使いたいものです。第1回は、いまさら聞けない!? 薬の基礎知識と題して、皆さんからよく聞かれるご質問について、Q&Aでお答えしたいと思います。

薬の飲み方の注意点は?

 飲み薬は一般的にコップ1杯程度の水、またはぬるま湯で飲むのが原則です。水なしで飲むと吸収が遅れたり、食道に引っかかって炎症を起こしたり、粉薬では気管から肺に入ってしまうケースもあります。胃を荒らす予防にもなります。錠剤は水を口に含んで上を向くと飲みやすくなりますが、カプセルは水を口に含んで下を向いて飲み込むと飲みやすくなります。薬の相互作用を起こさないためにも、水かぬるま湯で飲むようにしましょう。

錠剤にはどんな種類がある?

 現在の飲み薬の大半は錠剤、またはカプセル剤です。錠剤は色と大きさ以外はどれも同じように見えますが、実は技術の進歩によってさまざまな種類が開発されています。飲みやすさを目的とした糖衣錠やフィルムコーティング錠、胃内では溶けずに腸に達してから溶ける腸溶錠などがあります。他にも、かみ砕いて服用するチュアブル錠、唾液で溶ける口腔内崩壊錠(OD錠)、水に溶かして炭酸ガスを発生させ清涼感のある液剤として服用する発泡錠、一定時間にわたって持続的に有効成分が放出される徐放性錠など、適応症や特性に合わせていろいろな特殊処理が施されています。

薬の保管に関する注意点は?

 薬の保管の三大原則は、高温・多湿・直射日光の3点を避けること。成分が変質して効果が弱まるばかりか、有害物質に変化する可能性もあります。特に梅雨時の保管には十分な注意が必要で、温度変化の少ない冷暗所に缶や箱に乾燥剤を入れて保管しましょう。インスリン注射薬や坐薬の一部など、常に冷蔵庫保存が必要な薬もあります。
 使用期限を過ぎた薬は化学変化によって劣化している可能性があります。期限には十分に注意し、期限切れの薬は捨てる習慣を持つようにしましょう。もっとも、医療用医薬品にはほとんど使用期限が明示されていません。原則として、処方を受けた日から指示通り使用して使い切る日までが使用期限となります。

点眼薬の使い方は?

 よく洗った指で下まぶたを軽く引き、容器の先がまぶたやまつ毛に触れないように1滴点眼します。点眼量は1滴で十分です。これ以上増やしても眼の外にあふれ出るか、鼻涙管(目と鼻をつなぐ涙の通り道)を介して消化管へと流れてしまいます。
 点眼後は目頭を押さえるか眼を閉じます。そうすることで眼の中に薬物が停滞し、鼻涙管への流入を防ぎます。眼の外にあふれ出した点眼液は、ガーゼやティッシュでふき取りましょう。

次回の第2回は、「のむタイミングで効果が高まる!」ことについて、ご紹介したいと思います。

プロフィール

吉山友二(よしやまゆうじ)

吉山友二(よしやまゆうじ)
1982年、北里大学大学院臨床薬学修了、北里大学病院薬剤部に勤務。85年、薬学部講師として臨床薬学教育を担当。95年、共立薬科大学(現・慶應義塾大学薬学部)に臨床薬学講座を開講。2008年より北里大学薬学部教授として、臨床薬剤師育成を担当。研究分野は臨床薬学、時間薬理学ほか。