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みなと区民大学

港区内の各大学との共催で開催
北里大学薬学部教授 吉山友二先生

北里大学薬学部教授

吉山友二 先生

北里大学 vol.4-2(最終回)
今回のテーマ
くすりの上手な使い方(2):のむタイミングで効果が高まる!薬の効果も時間しだい

 最近、病気の発症や薬の効き目も時間の影響を受けていることがわかってきました。こうした「時間」の概念を治療にとり入れる「時間治療」に、いま注目が集まっています。
 今回の第2回では、「のむタイミングで効果が高まる!」ことについて、ご紹介したいと思います。

時間を治療に用いる「時間治療」とはどのようなものですか?

 病気が起きやすい時間や薬が体に効きやすい時間に治療を行うことです。
 食事時間以外に朝や就寝前などという服薬時間が示されている場合があります。これは、薬が作用する時間帯や、症状の出やすい時間帯が考慮されているためです。
 近年では、症状が出やすい、または悪化しやすい時間帯があることがわかってきました。たとえば、気管支ぜんそくは明け方に発作が起きやすく、心筋梗塞は午前中に発症しやすくなります。こうした時間に合わせて治療を行うことを「時間治療」といいます。
 時間治療は、時間を利用することによって薬の効果を高め、副作用の害を最小限にとどめることを目的としています。

時間や生体リズムを利用した治療には、どのようなものがありますか?

 ぜんそくやがん、脂質異常症など多岐にわたります。
 ぜんそくの発作は夜間から明け方にかけて起こりやすく、患者さんや看病するかたの負担が大きいものでした。しかし、発作の起きやすい時間帯に効果を発揮する薬が開発され、治療が容易になりました。
 ぜんそくの薬は、一見普通の錠剤ですが、網目構造をしています。これが体内で少しずつ分散するようになっており、明け方4時ごろに気道に届いて効果が発揮されるように設計されています。この薬を夕方にのむことで、明け方の症状をおさえることができます。
 抗がん剤治療にも効果  がん治療にも時間治療が利用されています。抗がん剤を用いたがんの化学療法の進歩は、目覚ましいものがありますが、正常細胞も同時に攻撃してしまうため、強い副作用が起こることが問題とされています。ある種のがんについては、抗がん剤の投与時間を適切に設定することで、副作用の害を軽減できることがわかってきました。がん細胞と正常細胞には、増殖する時間帯にずれがあったり、抗がん剤への感受性が高まる時間帯にずれがあったりします。この時間帯のずれをうまく利用することで、がん細胞だけを攻撃する治療が可能になったのです。

生体リズムとのかかわりから、服薬について注意すべきことはありますか?

 医師の指示に従って正しく服用し、薬を過信しないことがたいせつです。
 時間治療は、ここ20年もの間で広まってきたものであり、すべての治療に適用されるには至っていません。薬の治療は、現在の主治医による処方が最善であることを理解しておいてほしいと思います。たとえば、服用時間の指示が変更された場合は、主治医が患者さんの特性と病気の状況を診断した結果であると理解してほしいのです。
 時間治療は、生体リズムの上に成り立つものなので、まずは生体リズムに合った生活スタイルを守るようにこころがけることがたいせつです。医療は進化し、今後は、遺伝子診断による治療や人工臓器を用いる再生医療など、より根治に近づく方向に向かっていくと思います。しかし、「時間」の概念は残るでしょう。
 人間の生まれ持った機能を生かした治療や、健康増進の方法が発展していくことを願っています。

プロフィール

吉山友二(よしやまゆうじ)

吉山友二(よしやまゆうじ)
1982年、北里大学大学院臨床薬学修了、北里大学病院薬剤部に勤務。85年、薬学部講師として臨床薬学教育を担当。95年、共立薬科大学(現・慶應義塾大学薬学部)に臨床薬学講座を開講。2008年より北里大学薬学部教授として、臨床薬剤師育成を担当。研究分野は臨床薬学、時間薬理学ほか。