ここから本文です。

連載コラム

ようこそ!シアターの世界へ

第4回 能・狂言

600年以上の歴史を持つ伝統文化

能・狂言は、平安・鎌倉期の演芸「猿楽」をルーツに、室町時代に観阿弥(かんあみ)・世阿弥(ぜあみ)親子によって大成されたと言われています。能は、能面をつけた舞台上の人物が笛や鼓の伴奏に合わせて舞いながら物語を展開する、いわば歌舞劇です。一方狂言は、庶民の日常を面白おかしく描いた台詞劇。2つを合わせて「能楽」と言い、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。

檜造りの能舞台

檜造りの能舞台

多彩な物語とキャラクター

能の物語は、大きく2つの系統に分けられます。「夢幻能」は、この世のものではない者を主役に据えた劇。亡霊や草木の精等が登場します。一方「現在能」は、登場人物の身に起こった事件を時系列に沿って描きます。狂言のストーリー展開で多く見られるのは、登場人物の失敗を題材にしたもの。人間だけでなく、動物やキノコ、蚊といった、変わったキャラクターが登場するのも面白いところです。

イラスト

能・狂言を鑑賞するには?

能・狂言の独特の間や雰囲気を楽しむなら、能楽堂へ行くのが一番です。能舞台はごくシンプルで、奥に老松が描かれた三間(約6m)四方の舞台と、そこから左奥に向かって伸びる「橋掛(はしがか)り」という長い廊下とで成り立ちます。和服を着ていく必要はありませんが、会場の温度は分厚い装束を身に着けて動き回る演者に合わせているので、1枚羽織るものがあるとよいでしょう。

知ってる?鑑賞マナー

能・狂言で「拍手」はNG?

能楽堂では観客席と舞台を仕切る幕がないため、終演と同時に一斉に拍手を送るということはありません。能も狂言も余韻を楽しむ芸術とされているので、拍手はしてもしなくてもよく、タイミングは観客に委ねられています。拍手をする場合、舞台上の全役者の退場、または脇に控える囃子方・地謡方の退場に合わせる場合が多いですが、「後見」(橋掛りのたもとに控える、舞台進行のサポート役)の退場時に拍手をするのはNGとされています。また、悲劇的な演目の場合は拍手はしないのが一般的です。

参考:「面白いほどよくわかる 能・狂言」(日本文芸社)「能・狂言を楽しむ本」(主婦と生活社)